一体ここは?峠のようだった。何故か自分はギャラリーをしているようだった。

S13、180SX等がドリフトしながら駆け抜けていった。それを見ているブライ

アン。そこに、一台の一般車が通ってきた。車種はベンツだった。典型的なラグ

仕様で、いかにも金持ちっぽい匂いがするような雰囲気がした。だが、そこに

一台の車が突っ込んだ。しかも、正面衝突だからかなりのダメージのようだっ

た。そのベンツからは炎が立ちこめ、そして中から一人の10歳位の少女がそ

の中から脱出した。一方のぶつかった方の走り屋は逃げていった。周りにブラ

イアンしかいなかったからだろう。そのブライアンも見えなかったため逃げてしま

ったのだろう。ブライアンは助けようとした。だが、エンジンが爆発した。とりあえ

ず少女を安全なところに誘導しようとした。だが、少女はその車から離れようと

しない。賢明にその少女を安全な場所に移動させようとした。そして、何とか離

れさせられた。安全なところに逃げ込み、そこでじっとしていたその時、ベンツが

大爆発!少女は叫び声を上げた。ブライアンは完全にショックを受けていた。い

きなり車が爆発するのを見たのは初めての経験だからだ、いや、少女の叫び

声にショックを受けたのだ、ブライアンはそう思った。そこで目が覚めた。ブライア

ンの体は汗だぐだった。だが一体どうしてこういう夢ばかり見るようになったの

か?一体どうして?ブライアンにも分からなかった。その後、ブライアンはまた就

寝した。その後、そのような夢を見ることはなかった…。

朝5:00、ブライアンが起きた。今日は休み。

いよいよジャックたちとの対戦が1日に迫った。ハチロク最強決定戦も近い。今日

はジョニーとシンジとコウジで練習走行に行く日だ。もちろん、サーキットで。

早速着替えているブライアンに、電話が入った。

「もしもし、ブライアンですけど」

「ブライアンか、つまらんことで電話を掛けてすまない」

「なんだよ?シンジか。今日の練習、ちゃんと来いよ!」

「ああ、楽しみしている。だがその事じゃないんだ。昨日変な夢を見たんだ。少女

が燃えるベンツから降りて、それを俺が助けるって言う変な夢をだ。これをどう思

う?」

「なんだって…!?俺も同じ夢を見たぞ!」

「嘘だろ?全く同じか?」

「ああ、場所はどこだ?」

「峠だ。どこかは分からないが、S13や180SXが走っていた」

「お前は何していた?夢の中で」

「ギャラリーしていた。周りには人気らしき人気もないんだ」

「同じだ…。信じられない…」

「どういうことなんだ?」

「さあな、俺が知る訳無いだろう」

「それもそうだが、おかしすぎないか?」

「ああ、確かにおかしいな」

「まあサーキットで詳しく話そう」

「そうだな、じゃあな、朝からすまない」

「いいや、じゃあな」

といって、二人とも電話を切った。と、またすぐブライアンは準備を急いでしていた。

そして5:20分、家を後にした。

まだ多少暗い明け方5時、ブライアンの今日の行き先はツインリング茂木だ。そこで

ジョニーとロードコースで練習走行、そして夜はコース内のホテルで一泊、そして午前

中に練習、午後にサーキットを出て首都高に向かう…、これが2日間のスケジュール

だ。そこにシンジとコウジも参加するというわけだ。ミカは来れたらということになって

いて、リサは欠席だ。道が混んでいた為か、多少遅れて8:30、無事もてぎについた。

中に入り、玄関付近にジョニーがいるのを見つけた。車をジョニーのハチロクの隣に停

め、ジョニーに会いにいった。

「随分速いな、ジョニー」

「ああ、ちょっと早く来すぎたみたいだな」

「ご立派な事」

「それより、昨日変な夢を見たんだ」

「え?」

「爆発したベンツの中から少女が出てきて、それを私が助けるっていう夢なんだ」

「おいおい…、もうこれで二人目だぞ…」

「どうした?何が二人目なんだ?」

「その夢を見たのがさ」

「なんだって?私と同じ夢を見たという人がいるのか?」

「ああ、俺とシンジだ」

「シンジ、彼もなのか?」

「そうだ、奴の場合はまるっきり同じだ」

「まるっきりだと?」

「ああ、あんたもどういう夢だか言ってくれないかなあ」

「そうだな、私は峠にいたんだ。それでギャラリーをしているようだったのだ。一人で。

なにせそこにいたのは私一人だけだったからな。ほかに人の気配など全くなかったし

な。S13や180SXが走っていたよ。そこに一台のラグベンツが通ってきたんだ。だが

そのベンツに一台の走り屋の車がぶつかったんだ。それでそのベンツが炎上してな、

中から一人の少女が出てきたんだ。それを私が救出しようと…」

「で、最後は悲鳴を上げてたか?」

「ああ、その時何かショックを受けた」

「全く同じだ…」

「しかし、まるっきり同じだと・・・」

「何かの警告か?」

「よく夢が未来を予知するってのは聞いたことがあるがな、だが3人同じ夢をみるなん

て…」

「それもそうだな、何かの警告意外考えられないな」

「お、二台やってきたぞ」

「ミカちゃんとコウジだ」

「ということは、あと一人」

「いや、その後ろからやってきてるぞ」

「ってことは3台か」

「ああ」

ようやく全員揃ったみたいだ。3台ともブライアンの車の隣に停めようとした。そして、3

人とも車を降りた。

「遅刻は免れたな、イエローフレイムズ諸君」

「何いってやがる、実は昨日の夢の話なんだが…」

「どうした?シンジ」

「ミカ、事情を説明してくれ」

「ええ、いいわ」

というと、ミカは突然何かを語りだした。それは…、

「昨日の夢、あたしも見たのよ。で、実はその夢があることに凄く似ていたのよ」

「あること?」

「そうなのよ、昔リサの両親がベンツで峠を走っていたときの話と凄く似ていたのよ」

「ベンツで峠?」

「ええ、たまたま夜みたいで、安全運転よ、もちろん」

「そりゃそうだな。ベンツ乗ってるドリ族なんて聞いたこと無いからな」

「それで、一台の車種不明の走り屋車がそのベンツと正面衝突してね」

「ああ、それで」

「その走り屋車はフロントがボロボロだったんだけど、中の運転手は大丈夫だったみた

いなの、でもリサがのっていたベンツからは炎が上がってきて、それでリサが偶然に

も脱出して、中に取り残された両親は燃えている車の中、そこに一人でギャラリーを

していた「ブライアン」っていう人がいて、その人がリサを車から危ないからって離した

らしいの、で、車のほうはその後ガソリンに火が燃え移って大爆発」

「だからリサちゃんの親は…」

「そうなの、そのブライアンって人が逃げた走り屋の顔を憶えていて、すぐ警察に通報

したらしいんだけど、見つからなくて結局捜査も3年掛かって、打ち切られたみたいよ」

「酷い話だ、そいつぶっ殺してえな」

「だから、リサはその走り屋を探し出そうと車の知識を一杯勉強して、それで走り屋に

なってその犯人を捜そうとしている…。ってわけなの」

「でも顔がわからないと」

「いえ、リサは偶然そこにあったその人の写真を持ってるの」

「そこって?」

「たまたま落としたらしいのよ、その走り屋が」

「どんな?」

「車と写っている、犯人にとっては絶対見られたくない写真を犯人自身が落としたのよ」

「なるほど、だがどうして今まで…」

「言いたくなかったのよ、きっと」

「なるほどな」

「今まであたしも内緒にしてたんだけど、いつかは言わなきゃいけないことだと思って」

「そうか、その事についてはまああとにしようぜ」

「そうね、今日はパアーっと走りましょうよ!」

皆はその夢についてを知った…。だが、今はその事を忘れて、とりあえず走ることにし

た。

ツインリングもてぎ、異なるサーキットが二つあることで有名なここで、ブライアンたちは

ロードコースでのタイムアタックをする。早速コースインして、思い切り走りを楽しんでい

た彼らだが、その頃欠席したリサはというと…、

その頃リサはショップにいた。そこはリサの行きつけの店「ロケッツ」だった。ここでよく

パーツを買うリサ。そこには、伝説の走り屋の弟ジョーの姿があった。

「いらっしゃい、ああ、リサじゃないか」

「この前頼んだホイール入りましたか?」

「ああ、これだろ、レーシングハート」

「それと、例のFC見せていただきませんか?」

「あれか、奥にあるからあとでじっくり見ていってくれ」

「あれ、あのシビックは?」

「まだ変な会社が持ってる」

「あの会社ですか?」

「ああ、兄貴がべったりの会社だったんだ。そこの所長が熱心でさ、兄貴の希望を叶え

ようと必死になってるんだ」

「ウチもブライアンさんに何にも恩返しできなかったから、何かしてあげたいけど」

「そうだ、その話のやつなんだが、犯人がわかった」

「本当にですか!?」

「ああ、そいつはしかも元走り屋だ」

「元走り屋?」

「そうだ、やつは最低の走り屋集団のボスだったんだ。それに、あれは事故じゃない、殺

人だ、いわゆるテロだ」

「そんな…」

「ああ、一向に犯人が見つからないのもそのためだったんだ。走り屋ならすぐ見つかっち

まうからな。ナンバーとかでな。それに、あの爆発も火をつけたのもそのテロリストだ」

「でもどうしてなの…」

「実はな…、リサのお父さんはあれだろ?NなんとかOってやつのやってたんだろ」

「ええ、NGOです」

「それで、昔史上最低の走り屋集団ってのがいてな、それの撲滅のためにお父さんは

色々とやっていたんだろ?」

「はい」

「その奴らのボス、「鬼丸」に殺されたんだ」

「鬼丸?」

「ああ、史上最低の走り屋鬼丸だ。色々な車を持っててな、実際ベンツにぶつかった車

はS13だ」

「でもどうして…」

「その走り屋撲滅のためにあらゆることをしたのが君のお父さんだ。実際兄貴もそのメン

バーの一人だった」

「ブライアンさんが?」

「ああ、俺はその頃まだ無免だったから参加していなかったがな」

「でも…」

「まだ飲み込めないだろう、だが奴らはまだ今もどこかに潜んでいるぞ、一応指名手配

だからな」

「指名手配?」

「そうだ、捕まれば死刑は確実って言われてるからな」

「死刑ですか?」

「そう、それほど悪なことをやってきたってことだ」

「最低な人…」

「そうだ、今のところ奴の仲間は全員殺されたからな」

「殺された?」

「3人いたんだが、全員生き埋めにされて、その後そいつらを埋めてあるところはコンクリ

で舗装しちまったんだ」

「なら絶対生きているとは思えませんね」

「それに、奴らには毒を飲ませたんだ、だから生存率は0%」

「でも凄い事するんですね…」

「それを実行した奴なんだが…、名前忘れちまったな」

「とにかく、その鬼丸って人が犯人なんですね」

「そう、だがすぐには捕まらないと思った方がいいぞ」

「どうしてですか?」

「さっき言っただろう、奴は今も捕まってないって」

「そうですよね…、でももし見つけたら…」

「まあ、とにかくそういうことだ」

「そうだ、あのFC見せてくださいね」

「奥にあるから見ててくれよ、その間にこのRHエボつけるからさ」

「よろしくね」

リサは奥にある倉庫のようなガレージに向かった。そこには、2台ばかり車があった。一

台はリサの言っていたFC、もう一台はS30だ。

(これがお父さんの作ったFCなんだ…)

思わず動揺してしまうリサ、この車が自分のお父さんが作ってきた車…。そう思うとリサは

なんともいえない、微妙な気持ちになってきた。そして、ボンネットを開けてみた。そこには

13Bロータリーが鎮圧していた。かなり手が施してあるようで、中身も綺麗にされていた。

(凄い…、ウチのFDなんかじゃあ追いつけないよ…)

リサはそのエンジンの凄さに動揺していた。実際、リサの所有物なので、乗るのも乗らない

のも自由なのだが、実は彼女はこの車に対し強い恐怖心を持っていたのだ…、それでここ

のショップに預けているのだ。だが、いつまでもここに預けていく訳には行かない…。今日

リサはもって帰ることにした。と、ついでと言うばかりに隣においてあったS30もちょっと拝見

させてもらう事にした。早速ボンネットを開けてみると、

(L型じゃない、これって…?)

そこには正体不明のエンジンが鎮圧していた。どう見てもL型に見えないそのエンジン、ニッ

サンのエンジンだということは確かだが…。

リサは店長にあのS30のエンジンについて聞くことにした。

「店長さん、あのエンジンなんですか?」

「あのエンジン?」

「ええ、S30のあのエンジン」

「あれか、あのエンジンは特別なエンジンなんだ、ちょっと教えられねえ」

「企業秘密?そんなに凄いエンジンなんですか?」

「もちろんだ、だから企業秘密なんだよ」

「そうですか…、それと、今日あのFCもって帰りますね」

「そりゃ良かった」

「良かった?」

「持ち主が現れたんだろ?良かったじゃないかよ」

「そうですね」

「あと、RHつけておいたぞ」

「すいません」

「カードで先払いだったから、もう帰っていいよ」

「どうも、そうだ、レッカー貸していただけませんか?」

「いいけど」

「じゃあ借りていきますね」

というと、リサは鍵を渡され、FCをレッカーに移動させた。そして、そのまま一旦自宅に向か

った。FCをおろすと、またショップに戻り、レッカーを置いていき店長に礼を言ってFDで家に

向かっていった。

その頃、ブライアン達はというと、3時間ぶっとうしでツインリングのロードを攻め続けた。タイ

ムはブライアンが一番で、その次にシンジ、ジョニー、ミカ、コウジとなった。と、そんな中に

あの韓国人のファンの姿があった。彼もどうやらテストをしているようだった。だが、そのタイ

ムがとてつもないものだった…。ブライアンのタイムに12秒も差をつけてしまうほどだ。車の

差もデカイが、本人のテクが凄いのがほとんどの要因だ。そして、今日の練習走行は終了

した。

その頃、リサはFCで首都高に出る準備をしていた…。