どうしてジョニーがここに?そういえば、あの紙に…、トヨタのワークスドライバー

って書いてあった…、ってことは昔レースをやっていたってことか?ブライアンは

段々混乱してきていた。だが、ブライアンは一度彼を見たことがある…、しかも、

イギリスで・・・。なら、どこで見たのだろう?ブライアンは必死で思い出そうとし

たが、ますます混乱してきたのでとりあえずやめた。そんな中、突然電話が掛か

ってきた。また緊急の用事か?ブライアンはそう思いながら受話器をとった。

「もしもし」

「先輩、大変です!」

「なんだ、コウジか、どうした?」

「環状線最速の「Jacks」があの「BOXING」に負けたらしいです!」

「おい、それ本当か?」

「はい」

「俺もそっちにいく」

「実は俺も今現場じゃないんですよ」

「じゃあどこだ?」

「自宅です」

「ようし、お前も来れるか?」

「はい、今暇ですから」

「分かった、至急そちらに向かうぞ」

ブライアンはすぐ車の鍵を取り、シビックを首都高に向けて走らせていった。

30分後、いつもの辰巳PAにやってきた。そこに、4台ばかりのインプレッサと一

台レガシイセダンとワゴンが、さらにそこの塊には真ん中にはポルシェが止まって

いた。その前に「Jacks」の面々がいた。どうやら会話しているようだ。

「環状線のレベルも低いもんだ」

「てめえ、ちょっとそのレガシィが速いからって調子乗ってるんじゃねえぞ!」

「ほう、ならそっちのスカGのパフォーマンスの高さは指折りって聞いたけどな」

「まだここらには速いやつらがいるって事を忘れるな!」

「ほう、環状線最速だろ、あんたら。だったらそれ以上はいない。つまり、俺らが

今ここの最速の称号を手に入れた訳だから…、自分自身と戦うしかないな」

「この野朗」

「ほう、敗北したドッグが何言っても意味が無いよな、負け犬の遠吠えってやつだ

ろ、どうせ」

「好き放題言いやがって、ちょっと買っただけで調子こくな」

「笑えるじゃねえかよ、スカGがレガシイに噛み付いて負けたんだからな。大体今

の時代Rはもう遅いんだよ、分かるか?最近はハチロクだって滅多に見かけなく

なった。その分シビック、インテグラ、そしてボクサー車が進出したんだ。あんたらは

過去の野朗、俺らは新時代の先駆者。わかるか?お前らの考え方は遅いんだよ!

一昔の走り屋はもう遅い、分かるか?これが俺の信念、いやポリシーだ。今までシ

ビックやインテグラはRの勢力に押され気味だった。だがそれも今は逆転している。

湾岸で最高速度を競うんじゃないんだぞ!いまやシビックは100万円でも注ぎ込め

ばR以上の戦闘力を手に入れる事が出来る。つまり、下克上が起こってるってこと

だ」

と、ロッドが一人喋っている時にジャックが、

「おい、いいかげんしろ」

「すまねえ、こいつらがRなんかに乗ってカッコつけてるのかと思ったから」

「大体、まだ新時代は来ていないぞ。間違えるな」

「悪かった。だがやつらはもう過去の人物だ」

「それ以上喋るな」

「分かった」

ロッドを黙らせたジャックは、相手チームに向かって、

「あんたコウイチっていう名前だよな。悪いが、今回は正真正銘俺らの勝利だ」

「ああ、それは認める」

「だが、環状線を制覇したとはいえない、まだ奴らとのバトルが終わってないからだ」

「奴ら?誰だ?」

「シビックに乗った奴だ」

「ほう、あのイエローフレイムズのやつか」

「そうだ、奴に勝たなければ今までのはパーになる」

「そうか、奴らは強いぞ」

「あんたらとどっちが強い?」

「さあな」

「ふん、勿体ぶりやがって」

「もう退散してくれないか?」

「ああ」

と、ジャックがチームの皆に、

「おい、今日はパーティーを開くぞ!さっさと大黒に急げ!」

というと、全員車に乗り、PAを出て行った。

一体何が会ったのかさっぱり分からないブライアンは、リサにその全貌を聞くことにし

た。

「なあ、何があった?」

「あら、ブライアン君、今日は集まりないのに」

「ああ、コウジから連絡があってな、どうやらあのボクサー車の連中が環状線最強の

ジャックスに買ったみたいじゃないか」

「ええ、凄かったらしいよ」

「あのロッドってやつは酷い走りしそうだが、ジャックは明らかに速いだろう」

「そうなんだよね、あのジャックって人、相当速いらしいよ」

「あのポルシェはただのポルシェじゃない、ルーフのCTRだ」

「ルーフ?」

「ああ、ポルシェのチューンメーカーなんだが、またルーフが製作した車が速くてな、

かの湾岸ミッドナイトのブラックバードだってありゃ多分ルーフのイエローバードをベ

ースにしているだろうからな」

「そんなに凄いんだ」

「4WDにツインターボ、しかも高いパーツ使ってるから、パフォーマンスは高いだろう

な」

「あのロッドって人のは?」

「奴のはたぶんトミーカイラのだろうな」

「知ってるよ、そのトミーカイラってところ」

「あのエアロからしてまさしくそうだ。それに、さっき微妙にパン!って音がしたから、

ありゃミスファイアリングシステムをつけてるな」

「ターボラグを無くすためでしょ?」

「ああ、多分ランエボ用のを手を入れてレガシイ用にしたんだろう」

「ウチらとはいつ対戦するの?」

「まだ未定だが、恐らくハチロク最強決定戦の前だろう」

「ハチロク最速決定戦?何それ?」

「俺らには関係ないが、まあ一種のハチロクカップみたいなもんだ」

「ハチロクのレース?」

「ああ、ここ首都高で行われるハチロクの最大のイベントだ。毎年多くのハチロク乗り

がやってくるんだ。もちろんレベルの高いやつらが多い」

「へえ、ってことはジョニーって人もそのレースに参加するの?」

「そりゃそうだろう。やつが参加しないわけが無い」

「そうだよね、っていうかウチはもう今日帰らないと」

「用事?」

「そうなの」

「俺も帰ろうかな?」

「そうしたら?もう暇だと思うよ」

「それもそうだな。っていうかコウジのやつ遅いと思わないか?」

「そういえばどうしたのかしら?コウジ君」

「やつのことだし、でもちょっと遅いよな」

「あら、あのジェッタそうじゃないの?」

「そうだ、あの赤色の目立つジェッタ、まさにあいつのじゃねえか」

「あ、もう行かないと!」

「それじゃあ、また今度」

「うん、バイバイ」

リサと入れ替わりのように今度はコウジがこっちにやってきた。だが、コウジの表情は

何故か深刻だった。

「遅かったじゃねえかよ」

「すみません、ちょっと渋滞に」

「ああ、今日は混んでるからな。なんだっけ?ディスニーランドかなんかでイベントやる

んだっけ?」

「いや、俺も最初はそれかなあと思ったんですよ、でも事故渋滞らしくて…」

「事故渋滞?どこでだ?」

「そこのところで丁度なんか白いシビックが事故ったらしくて・・・」

「シビック?白いだと?」

「はい、相当なスピードで事故ったらしくて、中の運転手の方も危ないとか…」

「それ、本当か?」

「もちろんですよ、ウソじゃなくて。丁度ラジオ聴きながら走っていたら、突然交通情報

が流れて、それで一台の改造シビックが事故ってはっきりと聞こえました」

「改造シビック?」

「はい、車の様子からすると改造してあるとか言ってましたよ」

「どういうチューンだ?」

「そこまでは分かりませんよ」

「そりゃそうだな」

「あれ?それよりリサのやつはどうしたんですか?」

「ああ、彼女か、帰った」

「そうですか」

と二人が話しているとき、ブライアンのケータイの着信が鳴った。

「はい、もしもし」

「伝言だ、すぐ伝えてくれ。ハチロク最強決定戦は5日早めて開催する。すぐ伝えてくれ」

「あのー、もしもし、もしもし!?」

突然電話が切れた。

「先輩?どうしたのですか?」

「ああ、なんだか分からないがハチロク最強決定戦を5日早めてやるらしい、それを伝え

ろと」

「それだけですか?」

「そうだ、全くジョニーに伝えろって言うんだ!」

「そうですよね」

「多分番号違いだろうな。向こうが焦っていて間違えだという事に気づかず俺にそのまま

用件を伝えてしまったってわけだろう、とんだあわてんぼうだろうな、電話の相手は」

「ところで、ハチロク最強決定戦って誰が参加するのですか?」

「ああ、ジョニー一味と…、レーシングラグーンのどうのこうのとかも来るとか言ってたな」

「レーシングラグーン?」

「ああ、昔あっただろう、スクウェアが出したあのゲームだよ」

「ああ、あれですか」

「あれがどうのこうのって聞いたけどな、よく知らねえな」

「あとは?」

「あとは…、知らないな」

「5日早めたってことだから…、あと2週間後ってことですよね」

「その間に俺はボクサー野朗達を倒すんだったよな」

「そうでしたよな」

「あのロッドってやつ、かなりムカつくんだよな。あの野朗、ただじゃおかない」

「ジャックって人もですよね」

「やつはそうでもない。冷静な感じだからな。だがロッドってやつはどうしても許せないな」

「そうですか」

「もう俺も帰るとするか、お前は?」

「俺も帰ります」

「じゃあな」

「さようなら」

二人はそれぞれ車に乗り、家路についた。

ブライアンはいつものように走らせていたその時だった。後ろから低いアメ車の…、いや

あれはシェルビーの427・・・。しかもものすごい速度で近づいてくる…。

「シェルビー427だって?」

ブライアンは驚きがいっぱいだった。そのコブラは段々とこちらに近づき、コーナーで思わ

ぬ速度でブライアンのシビックを抜いていった…。追いかけようとしたが、もうすぐJCだった

のでやめておいた。行き先が違っていたからだ。

凄い速さだった。一瞬の出来事…。まさにそうだった…。

午後11:20分、ブライアンが自宅に戻った。あのコブラは一体…?その事が頭から離れ

なかった。この後何もやることがなかったのでもう寝る事にしたブライアン。11:30、彼は

就寝した。そして、また夢を見ることになった…。