バトルが開始した!まず最初に飛び出したのはリサのFD。やはりここはパワーの

差が出ているといえるだろう。一方のマユミのハチロク2ドアはやや遅れ目に出た。

最初のコーナー、圧倒的なブレーキングの差を見せつけ、抜群の速さのテクを魅せ

つけたリサ。思い切りの良さで有名なリサは、チーム1の度胸の持ち主といわれて

いる。無論、ブライアンの車に乗ったときの走りでそれは証明済みなのだ。対する相

手のマユミの方も同じく突っ込みで有名だ。速さといい、まさに神業的。

「後ろから見てみると、結構精神的に強いのが分かるわね」

マユミは冷静な性格で、リサとは面識はないがミカとは仲がいいのだ。でも冷静さで

はミカの3倍はあると言われており、走りでもその性格がよく現れていると言われて

いる。実は16の時アメリカに車の勉強で留学に行った経験があり、そこで免許を取り

デトロイトでレースの経験、いずれも優勝まではいかなかったが2位、3位を取り続け

見事女性初の総合優勝者となったのも事実だ。それから18で日本に戻り、ミカやリサ

の通う高校(専門学校)に来たというわけなのだ。速さでは恐らくかなりのレベルだろ

うと言われている。でも何故ミカと仲が良いのに違うチームに入ってしまったのか?こ

れはマユミが昔からハチロク好きだということからもあるが、留学時代に出ていたレー

スというのが「オールドカーカップ」というので、このときマユミが使っていた車が実はハ

チロクで、そのレースに出た車で今首都高を走っている、こういう理由からだ。

バトルの方は依然接戦の状態だ。コーナーで追い詰めていくマユミの走り、普通は誰も

がその走りに動揺してミスなどをしてしまうが、リサはそういうプレッシャーのかけ方に動

じないタイプなので、全くミスなく走っている。そして、長い直線区間がやってきた。いつも

ならここでNOSを噴射して一気に差をつけるリサだが、今日は違っていた。この前のステ

ィーブとのバトルでNOSの恐ろしさを思い知らされたからなのか、敢えてNOSを噴射しな

い作戦に出た。だが、相手がNOSを噴射する可能性はある。大抵のハチロク乗りはNOS

を付けないのが常識だ。エンジンがダメになるのが理由。つまりハチロク独特のフィールが

損なわれるということでなのだ。ジョニ−みたいにスワップしたタイプはNOSを嫌というほど

つけているが、マユミの場合はどうなのだろう?

「相手はNOS付けてるのかなあ」

リサは気になってしょうがなかった。相手がNOSを付けていれば、絶対ここで噴射する。そ

うなると作戦を変更しなければいけないからだ。今現在NOSのネジは締めたままのリサ、だ

がいざと言う時にということで、結局開けてしまった。これでいつでもボタン一つで噴射できる。

そんなリサのこの行動は正解だった。

いきなり加速していったマユミのハチロク。となると…。NOSを噴射したとしか考えられない。

リサはとっさにNOSを噴射!マユミのハチロクと並んだ。だが問題は次のコーナー、ここでブレ

−キングミスは許されない。そしてコーナー150m前、いよいよ両者フルブレ−キング!イン側

マユミ、アウト側リサ、明らかにこれはマユミの有利だ、と思われたがマユミはそのままブレーキ

を踏み続けてしまった。一体何故?そのままアウトから被せるように抜き去ったリサ。結局その

ままリサが逃げ切り、リサの勝利となった。二台はそのままPAに戻ってきた。

「あなた凄いわね」

「そう?結構怖かったんだよ」

「あそこでブレーキ踏んじゃったのはちょっと訳があってね」

「どういうわけなの?」

「実はレースをしている時、丁度トップ争いだったんだけどね、その時に今バトルしたような感じ

になって、それで相手の方が強引に入ってきて、危なくクラッシュする時があったのよ。それで

ああいう体制になるとどうしてもダメになっちゃって…。きっとトラウマなんだわ」

「そうなの」

「そうだ、この後チームの交流戦があるんだった」

「うそ〜。これからあるんだ」

「そう、名前は「SUIKEN」ってチームっていうんだよね。よく分からないわ」

「そうだよね。わけわかめだよね」

「じゃあ、もういかなきゃ」

「頑張ってね」

そういい残すと、マユミはハチロクに乗り込み、どこかに行ってしまった…。

その頃ブライアン達はというと、

「おいシンジ、やっぱりワイルドスピードは見ていて面白いよな。俺なんかもう10回は見たぞ」

「お前も飽きないよな。おい、リサさんが帰ってきたぞ」

「おお、じゃあ俺はこれ見てるからって言っておいてくれよ」

「おいおい、冗談だろ?」

「今いいところなんだよ。ほら、今ブライアンが何かやってる!俺と同じ名前ってのがいいよな!」

「いいから来いよ」

と言うと、シンジはブライアンを連れ出した。と、リサがブライアンに、

「ねえ、今日食事に行かない?」

「食事?俺さっき食べてきたばっかなんだ、と言って、もちろんOKだ!」

「ホント?でも今はダメだから」

「どうして?」

「だってシンジ君の了解得てないから」

「あいつの事は俺に任せろ、ああ見えても単純な男だから」

というと、シンジに話し掛けた。

「なあ、シンジ、今日ちょっとさ〜」

「ああ、食事だろ?」

「どうして知ってるんだよ?お前、盗み聞きしたな?」

「あんなでかい声でしゃべってれば誰だってわからないわけないだろう」

「そうだな、じゃあ出かけてくるからな」

「ああ、じゃあな」

というと、ブライアンは、

「OKだ!楽勝だ!」

「でも気づかれてたみたいだよ」

「あいつはああ見えても地獄耳なんだよ」

「そうなんだ、じゃあウチの車についてきて」

「よし、じゃあ行くか!」

と言うと、二人はそれぞれ車に乗り込み、どこかへ向かっていった。

リサが向かった場所は、どうやらインドの雰囲気のレストランのようだった。車で約20分、ブライアン

は建物を見てびっくりした!

「おいおい、なんで象が飾ってあるんだ?」

二人はそれぞれ車を降りた。そして、ブライアンはリサにこう言った。

「あの象は何なんだ?」

「あれ、知らないの?ヒンドゥー教」

「そうか、ここはインド人が経営してるのか」

「とりあえず中に入りましょう」

二人は店の中に入っていった。二階に上がり、眺めのいいところに座った。

「ねえ、何か食べる?」

「俺か、もう腹いっぱいだから、ドリンク位でいいな」

「じゃあコーラでも頼む?」

「そうしよう。そっちは?まさかいっぱい頼むとか?」

「なわけないじゃん(笑)」

「そうだよな、じゃあ店員呼ぶか」

というと、店員を呼び出した。

「すいません」

「はいはい」

「コーラとこの「インド風ヨーグルト」を一つ」

「かしこまりました、しばらくお待ちください」

と、リサが話し掛けてきた。

「ねえ、ブライアン君ってイギリス人でしょ?」

「そうだな、一応イギリス国籍だな」

「どこの宗派なの?」

「俺か、ああ忘れたな〜。多分親と一緒でカトリックだな」

「へえ、向こうって教会とか多いんでしょ?」

「クサるほどあるな。でもよく集まりみたいなのサボった記憶あるんだよな(笑)」

「うっそ〜。ヤバくない?」

「それか、牧師が一人喋っている時にこっそり雑誌とかを読んでいたりしてたな〜」

「へえ、っていうかブライアン君の親ってどういう人なの?」

「ああ、どっちも車バカだ(笑)」

「どっちも?

「そう、おふくろはバリバリの改造屋に勤めてたんだ、ロードスターとかを改造してたな」

「そうなんだ、オヤジさんはどういう人なの?」

「ああ、オヤジはオールドカーバカだ」

「どういう車持ってたの?」

「昔のジャガーのコンバチとか、アメ車も集めてたな」

「イギリスにあるの?」

「ああ、オヤジはバカだから自分でわざわざ取り寄せたんだ」

「車種は?」

「フォードマスタング69年型だ」

「へえ〜」

「だから俺もこんな車バカになっちまったってわけ(笑)」

「そうなんだ、親が要るってでもいいことだよね…」

「ん?」

「ウチの親はどっちも事故で亡くなったの…」

「ホント?」

「ええ、ごめん、ちょっと思い出したくないんだ」

「ああ、こっちこそごめんな。悪い気分にさせちまって」

「気にしないでいいよ。そうだ、今度オーディオもっと凄くしたいと思ってる訳なの、どうすればいい?」

「俺のオススメはKICKERだな、PS2も入れた方がいいぜ」

「そう?ウチあんまりゲームしないから要らないかなって思ってて」

「いや、PS2はこれがまた要るんだよな。DVD見るのには最高だ。画質は綺麗だし、デザインも車の

インテリアにピッタリだしさ」

「ふうん、今度買ってみようかな〜」

「オススメだぜ!」

「ところで、この車見たことある?」

「ん?どれどれ…、これか、これはシェルビーコブラだな」

「あ、知ってる!アメ車でしょ?」

「そう、これがまたいいんだよな〜」

「ね、いいでしょ」

「でも、こんな写真どこで拾ったんだ?」

「どこだっけ…、ううん…」

と、リサが考えていると、ブライアンのケータイの着メロが鳴った。

「もしもし?」

「ジョニ−だ」

「あんたか。今ちょっと食事中でさ」

「ああ、それが済んだらちょっと八重洲駐車場に来てくれないかな」

「どういうこと?」

「事情は後で説明する」

「分かった。時間かかるから、待ってろよ」

「結構だ。いきなりすまない」

「気にするな」

ブライアンは電話を切った。

「どうしたの?」

「ああ、ちょっとこの後用事が出来ちゃってな」

「今から?」

「いや、まだいかないけどな」

「いつ?」

「食事が終わってから、って言っておいた」

「大丈夫なの?」

「時間かかるから待ってろ!って言ったから大丈夫だろう」

「良かった」

「何が?俺と食事できて?」

「ううん、それもあるけど」

「ところでシンジとかとはどういう関係?」

「シンジ君はミカと仲が良かったからたまたま知り合って、それで仲良くなったって感じ。でもミカとシン

ジって付き合ってるって言うけど、実際に喋ってるところみたことないんだよね」

「へえ、俺もだ」

「あと、ミカとは高校から友達なんだ。でもミカは凄く車のことに関して知ってるんだよね。コウジはたま

たま幼馴染ってことだけなんだ。近くで、よく遊んでたし。ブライアン君はどうやってシンジ君とかと知り

合いになったの?」

「俺か、たまたままだ俺が一匹狼だった時、インテで速いやつと対戦しないか?って仲間が言ってきた

んだ、そのインテのやつがシンジだったんだ。その時はまだ4輪に転向して日が浅かったから、負けた

けどな」

「へえ、それで?」

「その後、不思議と知り合い以上の関係になって、今に至ったんだよな」

「そうなんだ」

「あ、もう行かないとな」

「じゃあね」

「ああ、それじゃあ」

と、ブライアンは外に出て行き、八重洲駐車場に向けて車を走らせていった。

八重洲駐車場に着いたブライアン、だが周りには人の気配がない。ジョニーのハチロクもない。と、一

台こちらに向かってきた。どうやらハチロクのようだ。そして、ブライアンの車の隣に駐車して、ドライバ

ーが車を降りた。ジョニーだ。

「突然で悪いな」

「気にするなよ。それより何なんだ?」

「ああ、今度横羽、湾岸辺りに影響を及ぼしている「BOXING」がここらに攻め込むらしいんだ」

「ボクシング?インプのワンメイクか?」

「インプのワンメイクというよりかは、ボクサーエンジンのワンメイクといったところだ」

「車種は?」

「レガシィにインプレッサ、ポルシェ911なんかだってさ」

「ポルシェ?」

「ああ、リーダーが乗っているらしいけど、かなり速いらしい。最大馬力はNOS噴射時で1000馬力と

からしい」

「冗談じゃねえ、1000馬力だなんてゼロヨン車じゃねえかよ」

「湾岸のほうじゃあもう当たり前だ。中には1400馬力のGT−Rもある位だからな」

「ほう、それでそのチームが攻め込むから気をつけろってことか?」

「いや、ここらのチームで合同チームを作りたいんだ」

「なるほど、それで立ち向かうということだな」

「その通り、協力してくれるか?」

「ああ、別にいいけど、っていうかシンジには聞いたのか?」

「もちろんだ。すぐOKしてくれたが、ブライアンにも聞いておいてくれって言われたから今日君を呼んだ

んだ」

「ほう、だったら電話でもよかったのにさ」

「すまないな。だが電話だと伝えられない事があってな」

「ん?」

「もうそろそろ来るんだが、あ、来たぞ」

「Rのチームじゃねえか、マイケルが所属しているあのチームの連中じゃんかよ」

「ああ、今日どういう結果になったのか、確認したかったんだ」

「まさか、あのボクシングってところと対戦したのか?」

「うん、だが多分負けだろう」

そして、R軍団の後ろから一台のレガシイとポルシェ911がやってきた。



ついに脅威のチームが環状線に攻め込む!果たして、どうなるのか?