今日は仕事が休み。となれば朝は遅いはずだ。だが、ブライアンは
違う。普段から朝起きが身についているので、朝は早い。だが、夜
は遅いため、最近は睡眠不足で辛い日々が続いている。
朝7:30、眠くてたまらなかった彼は、そのままベッドに横たわり、
寝てしまった。
その頃、昨日のテスト走行の反省が行われていた。
「今「CIVIC」は完全なる復活を遂げている最中だ」
「しかし、これ以上死傷者は出せません」
「だが、ここで諦めては私の長年の苦労が水の泡だ」
「しかし、昨日みたでしょう。命には別状は無いと言ってましたが、決
して安全ともいえないのですよ。あんなことが何回も続いて見てく
ださい、レーサーの治療費で研究所は破産しますよ」
「かまうもんか!あのCIVICを復活させるまで、私は諦めんぞ!それ
に、レーサーの治療費だって死ぬまで出すぞ!そこをつくまでな!」
「もう私はどうなっても知りませんよ!」
昨日の失敗で、所長と担当経理が言い争っている所だった。伝
説のシビック、それは過去最強のマシンとして有名だった。10年前、
伝説の走り屋の死の後、その弟にあたるジョーが作ったこの車は、以
前兄が乗っていた車のエンジンを積み込み、誰にも負けない車にした。
その車につけられた名前は「ケルベロス」。最大馬力は777PS、
最高速度は430kmという途方も無い、その性能は誰もが注目する車
となった。で、その伝説の走り屋の車というのは…、シェルビーコブラ。
そう、アメリカが生んだ「毒蛇」だったのだ。当時、ほとんどの走り屋が、
GT−Rに乗っていた頃、戦慄を斬るように、その速さを見せ付けていた
コブラに乗った一人の若者。後に伝説を作ってしまった彼は、その後も
走り続け、何かを求めるかのように途方も無い速さでライバルを蹴散ら
していった。だが、そんな彼に不幸が襲ったのはこのとき、いつも言う事
を聞いてくれるコブラが、突然スピン!そしてクラッシュ!だが、車の損傷
はそれほどでもないので、皆軽い怪我で済むと思ったが、実は不幸にも
ある病気が悪化、完全に病状が悪い状況だった。実はデビュー当時から
難病を抱えていた彼、車が好きで、いつもコブラと共に走っていた。そして
、もう短い人生だと考えた彼は、自分の存在をアピールするため、首都高
にやってきたのだ、コブラと共に…。そして、事故が起きた2時間後、彼は
息を引き取った…。そして、弟がある決心をした。このエンジンを使い、新
たな車を作り上げる。兄貴が昔乗っていたシビック…。そして、まず長さが
特徴のコブラのエンジンをどう載せるか?これは後ろのシートの部分を外し
そこに上手く載せることにした。つまり、MR化したのだ。その後、足回りを
強化、ボディ強化だって普通では考えられないほど頑丈にしてある。だが
なぜコブラ自体を修理しないのか?周りはそうおもっていた。彼はこう答え
た。
「兄貴のコブラをこれ以上傷つけるわけにはいかないんだ」
敢えてコブラにこれ以上メスをいれず、昔乗っていたシビックに心臓を移植
する事に決めたのは、そのままの状態を保つためであったのだ。そのまま
の状態、つまり壊れた状態を保つ事、一体何故?これは弟のジョーの提案
で、「兄の魂がこの車につまっている、そう簡単に修理等いじることはできな
い」ということだからだ。だがまだ謎は残る、なんでシビックにわざわざコブラ
のエンジンを移植しようとしたのか?これもまた謎だが、これについてはジョ
ーはノーコメントだった。そして、伝説の走り屋の名前が偶然にもあいつと一
緒だったのだ。それで、あの時ショップで出会ったときの走り屋が「聞いたこと
のある名前だ」と言ったのだ。そう、あいつと偶然にも…。
ブライアンがその後起きた時、もう時計が10:00を指していた。朝と昼は暇
なので、結局そのままねてしまうことにした。その後、彼が起きたのはなんと
午後6:00、夕方頃だ。久々に疲れが取れた感じがしたブライアン、早めに首
都高に行くことにした。いつもの辰巳PAに行くと、そこに以前ショップで出会っ
た奴らがいた。そう、あの「MUSIC EXPRESS」のやつが…。
「久々だな。調子はどうだ?ブライアン」
「ぼちぼちだ、マサオ。そっちは?」
「そっちと同じ様な感じだ」
「どうする、今暇でさ、バトルするか?」
「ふん、いいだろう。俺のアコードワゴンにどこまでついてこれるかな」
「さあなあ、どこまでだろうな」
二人はそれぞれ車に乗り込み、PAを出て行った。
そして、いつものカウントが始まった。
「3,2,1,GO!」
バトルスタート!場所は新環状だ!
最初に前に出たのはマサオのCD型アコードワゴン。そして、その後ろについ
た感じのブライアンのシビックR、直線重視のマサオのアコードワゴン、L.A流
のチューンをかなり組んでいるだけに、その速さは指折り。NOSにビッグター
ビン×2により、190馬力から一気に530馬力までアップ!これほどまで上が
ると足が負けるのは必須だが、これを大人気の自動セッティング型ピストンエ
アーサスペンションで補っていて、極限まで車高を下げ、サスストロークを押さ
え、負けない足にするなど、ボディ強化だって並大抵のものじゃない。その上
オーディオチューンがまた凄い。あらゆるムダなシートを取り、さらにATをMT
に変え、凄まじい軽量化、だがこれにオーディオを載せて、定番のPS2に、ア
ルパインのオーディオ一式、スピーカーもアルパインとアルパインで全て構成
した。これにより車重は1300kgとなった。つまり軽量した時の車重が1100
kg、その前が1400kgなので、約300kgの軽量化となる。ここまですると、さ
すがに拍手を送りたくなる。
マサオは直線が速い、コーナーは得意のドリフト走行でまがらない車を上手く
曲げる。ブライアンと同じような走りだった。
「なんてやつだ、あんだけ馬力出てるのに足が負けない車を作るとはなあ」
ブライアンは関心していた。だが、今は関心している暇はない。今は勝つことの
みに集中しなければいけないのだ。ブライアンはさらに攻め込んだ。タイヤのこ
とを意識しながらだ。派手なドリフトを見せる二台、偶然見かけた走り屋たちは
思わず見入ってしまう。二人の走りはますます派手になっていった。
「ブライアンはまるであいつにそっくりだ。性格はずいぶん違うが、走りは共通す
る物がある。偶然なのか?」
あいつ?一体誰なのか?
バトルは依然大混戦だった。直線でマサオが引き離すと、コーナーでブライアン
が一気に近づく。この繰り返しだ。迫力のレースでも見ているかのような感じで
ほとんどF1のトップ争いと変わらない迫力、といってもいいほどだ。この争いが
何時まで続くのか?サバイバル戦となって、いつまでも続くのか?それは二人
の精神状況が決めることである。
(汗だぐだぐだ。ブライアンはどうなんだ?)
マサオは汗を大量にかいているようで、かなり疲れている様子だ。
(しぶといやつだ、疲れてしょうがないぜ)
ブライアンもかなり疲れているようだ。両者同じような精神状況のようだ。一体
どちらが先に終わってしまうのか?まさにサバイバル戦。
だが、ここで大きくその差が開くこととなる。あるミスからが原因で…。マサオが
コーナーを攻め込んだ時、ブライアンは一歩手間に引いた。
「突っ込みすぎだろ」
ブライアンが危険を察知し、早めのブレーキングをした。トラックが前を通っている
からだ。だが、それに気づかずマサオはいつもの激しいブレーキングで攻め込ん
だ。その結果、マサオはアウト側に走っているトラックにぶつかりそうになった。
「ぶつかる〜!」
なんとかよけたが、これで一気に勢いはダウン。精神的に疲れているときに、さ
らに追い討ちをかけるかのような今の出来事。もうくたくたのようだ。この隙をブ
ライアンがぶち抜き、結局そのまま勝ってしまった。長い精神のバトル、まさに「S
Pバトル」。精神の減りを勝負すると言う意味では今回のバトルはかなり白熱した
バトルとなっただろう。二台はPAに戻り、話をしていた。
「凄いな、どうして分かったんだ?」
「見えたんだよ。でけえやつだったから目立つし、もしかして気づかなかったのか
?」
「まあな、恥ずかしいけど…」
「しょうがねえよ、そういう時はあるからな」
「そうだな、おい、っていうか86軍団が来た見たいだぞ」
「嘘だろ?ジョニーのやつか?」
「そうだろうな、この辺でやってるといえば奴らが一番有名だからな」
「おいおい、何の用だ?」
「多分バトルの申し込み、だろうな」
「勘弁して欲しいぜ、今日はクタクタだ」
「まあ頑張れよ」
「………待てよ?」
「どうした?」
「いっけね〜!、挑戦状渡すの忘れてた〜〜!」
「どういうことだ?」
「リサちゃんに渡すの忘れてた〜〜〜〜!今日だったんだ!」
「おいおい、まだ来てないぞ、やばいじゃないか」
「っていうか今日来てって言ってないから、ヤバ〜〜」
「ああ、どう言い訳いうかだな」
「どうしよう、おい〜〜」
「なあ、あのFDって誰のだ?かっこいいな〜、オートエグぜのエアロ、黒ボン、言う
ことなしだぜ」
「あれは、来た!良かった!」
「あれがそうなのか?」
「ああ、オートエグぜのエアロにあのグラフィックス!」
「でも今ごろいえるか、挑戦状があるなんて」
「それもそうだな…」
「まあダメ元で渡してみたらどうだ?」
「そうだな、じゃあそうするか」
ブライアンはリサが車から降りたとき、例の挑戦状を渡そうとして、話し掛けた。
「いや〜」
「あら、ブライアン君じゃん、どうしたの?」
「もし今バトルの挑戦状とか渡されたら、どうする?今すぐバトルしてくれって」
「まさかあるの?」
「そうだ。で、これがそれなんだ」
リサはその封筒を開けた。中身を確認して、ブライアンに話した。
「この人、昔高校同じだった人だよ」
「で、バトルうけるのかい?」
「いいけど、うち自信ないな〜」
「良かった…」
「何が?」
「ああ、こっちのことだ」
「そう」
「まあそうなんだ、その人と接点はあったのかい?」
「あんまりないよ、っていうかあんまり知らないって感じだし」
「ふうん、そうなんだ」
「とりあえず挨拶してかないと」
と言うと、リサは自分の対戦相手に挨拶しにいった。
「よろしくね、うちはリサっていうの。同じ高校だったから、覚えてると思うけど」
「あたしはマユミ、こちらこそよろしく」
「じゃあ早速始めましょう」
「そうね」
バトルはもうすぐ開始される。ブライアンは以前あったこともあるので、顔は覚えて
いるが、何かが違うと思っていた。何故か分からないが…。
二台はPAを出て行った。マユミの車はAE86型スプリンタートレノGTV、NOSとメ
カチューンで直線もコーナーも速い車となった。最大馬力290PS,低いほうだが、
車重が730s以下なので、この辺は問題なさそうだ。NOS噴射でさらに360PS
までUP。ハチロクだといって、リサのセブンと互角のパワーウエイトレシオなので、
かなり強敵といえる。
そして、いつものカウントが開始、
「3,2,1,GO!」
バトルスタート!
いよいよバトル開始!結果はどうなる?第15部に続く!

