スティーブはハチロク野朗と一度でもいいから戦ってみたいと思っていた。
ハチロク、スティーブが最初に買おうとしていた車でもある。あの独特なエ
ンジン、そしてスタイリング、走り、彼は全てに惚れてしまい、ハチロクに決
めかけたが、良好なやつが少ないし、この頃はハチロクといったら希少価値が高
く、最低でも150万円、そして最高でなんと1000万円なんて値段がつけられ
ていたこともある。それ位希少価値が高い車なのだ。そんな値段を見たスティ
ーブは「高すぎだ」と諦め、もっと安い車を捜していた時、出会ったのがCR−X
だった。買ったときはエンジンはボロボロだったため、ドイツから持ってきた廃車の
アコードタイプRのエンジンをスワップ(ちなみに、ドイツ在住の時とは違うアコードで
す)、これは苦労したみたいだ。これにさらに手を加え、以前アコードRにつけていた、ブリ
ッツのセルシオ用のスーチャーを付け、それに今スポコン系の走り屋に大人気な
NOSを付け、今のエンジンになったという訳だ。ボディは無限のエアロに、どっかか
ら仕入れたというビッグGTウィング。このウイングが彼の車の象徴となったのは有
名な話。
そして、今日も速いハチロク乗りとの対戦を求めて、スティーブは首都高を走っている。
そこに、偶然何か違うオーラで包まれている、不思議なハチロクレビンが走っていた。
とても普通には見えない。
(普通じゃないな、かなりチューンしてある。この辺の人間じゃない?だったら、ハマの
やつか?面白い、バトルしてみるか…)
スティーブはそのハチロクにパッシングをした。とても普通の車には見えない。だが、た
だ普通で怪しいだけではない、とてつもなく凄いオーラがその車には漂っていた。
「バトルの申し込み…、どういうわけだよ…、CR−X…、テンロクのバトルか…、面白い
じゃないか…」
ハチロクの男も同意したみたいだ。そして、いつものようにカウントが開始、
「3,2,1、GO!」
バトルスタート!最初に飛び出したのはスティーブ。このときようやくスティーブは正体に
気づいた…。
「吉こ〜?この辺のやつじゃない!やっぱりヨコハマのやつだったのか、まさかこいつが
あの「ハマのハチロクマスター」じゃないのか?こいつはとんでもない事になっちまった…」
正体は吉こ〜さんだった。そう、ヨコハマで名を馳せているあの吉こ〜さんだ。首都高にい
るなんて滅多にないこと、スティーブはますます気分が高潮した。
「まずは赤坂ストレートだ、外回りの赤坂ストレートは甘くないぜ」
そう、赤坂ストレートの後は下り坂になっており、ブレーキング勝負となる。スティーブはブ
レーキングには定評があった。決して無理をしない彼の走り、それは吉こ〜さんt全く異なっ
ていたのだ。スティーブは下り坂のコーナーをグリップ走行で慎重にクリアしていった。だが、
吉こ〜さんはそれを慣性ドリフトでクリアしていったのだ!ここでは慣性ドリフトは自殺行為、
そうまでいわれていたが、それを難なく…。これはただ者ではない!スティーブは完全にそう
思い込んだ。
そして、その後いくつかのコーナーもスティーブはグリップで、吉こ〜さんはドリフトでクリアし
ていった。まるで典型的に違う二人の走り、それは「86VSシビック」の対決というより「ドリフト
VSグリップ」の対決といった方がふさわしいバトルとなってしまった。そして、ここからが最強のR
キラーの本領発揮の時だった。ハチロクの後ろについたCR−X、そしてスリップに入り、一気に
抜き去っていき、そして最終的にはコーナーに入り、その差を広める、これがいつもの彼のやり方
だった。どんな相手でもこのやり方でやってきた。ただ一人、ジョーを抜いては…。
「意外だ…、テンロクかと思ったら…、あれは2リッター以上だったとは…、何にも心配する事はな
い…、勝てばいい…、そのためにここにきたのだから…」
吉こ〜さんは分析力が高いのか、なんとテンロクではないことに気づいたのだ…。そして、スティー
ブのいつものやり方が始まった。
「これが終われば、俺の勝ちだ。でも凄いテクだ…。これはハマだけじゃあ勿体ない、もっと外に出る
べきだ…」
いつものやり方で差を離したスティーブ、安心できたかに思えた、が、
「なんてこった!ハチロクが消えた?頭文字Dじゃあるまいし、どういうことだ?」
突然ハチロクが消えたというのだ、だが、消えたのではなく…、
「…やられた…、死角にいたとは知らなかった…。インを取られてはもうおしまいだな…」
あんまり見事だったので、ショックが大きく立ち直りすることができないスティーブ、その後、スティーブ
のSPはなくなり、吉こ〜さんのハチロクはどこかへ消えてしまった…。
「首都高…、奥が深いぜ…、さっきのCR−Xもそうだが…、俺は買った気がしない…、どうしてだ…」
吉こ〜さんは確かに勝った、相手のSPを0にした。だが、当の本人は買った気がしないと…、これを聞
いたらスティーブはびっくりするだろう、あんなに見事に勝ったのに…。
「またあのCR−Xとやりたい…、今度はじっくり…、時間をかけてだ…」
スティーブは仲間にこんな事を言っていた。
「ハチロク乗りでもあんなハチロク乗りは初めてだった。とにかくオーラが漂っていて、普通じゃないな、
俺は負けたけど最高に満足してる。あんなに見事にやられちゃ、かえってすがすがしいしな、いいバトル
だった。またやりたいぜ」
吉こ〜さんとスティーブは考えている事が違っていた。スティーブはすがすがしい、しかし吉こ〜さんはす
っきりしていない様子という風に対照的になっている。だが、両者またバトルしたい、という気持ちは共通
していたのだ…。
その後、吉こ〜さんはまたヨコハマで新たな記録を打ちたて、どこか旅に出ると言い残し、どこかへ消えて
しまった…。
今回の番外編どうでしたか?今回は渋め?でいってみました。でも全然渋くないですよね…。
そして、いよいよその4日後、ハチロク最強決定戦に参戦する事が決まった吉こ〜さん。結果は一体?