マイケル、イギリスでは指折りのカードマスター。イギリス全土代表戦で、その
見事な戦いぶりに彼のファンは多い。だがそのカード好きが行き過ぎているの
も事実。カードに使うお金は日本円にして年間600万円以上といわれている。
かなり凄い数値だ。だが、年600万円も使うと、さすがにカード大会で稼いだ
お金とはいえ、それで生活できない。そこで、お金が稼げるということを聞いて、
彼は日本にやってきた。そこでの仕事は、「カード評論家」。すっかりカードに夢
中の子供達の憧れの的となり、日本の大人のカードオタクまでもすっかり彼のフ
ァンが増えてしまった。そんな彼が、友達に誘われて走り屋になったのはつい最
近のこと、実際車に興味があった彼、イギリスではとても高くて手の届かないGT-
Rもここでは向こうよりかは安く買える、そう思った彼は即座にR32を購入、そして
現在に至っている。そして、もう一人の男、ファン。韓国出身で、徴兵が終わり本職
のヒュンダイの「テストドライバー」に戻ろうとしたが、上司から「是非韓国の車の素
晴らしさを日本にも伝えて欲しい。そのためには若者、つまり走り屋、スポコン野朗
がターゲットだ。このヒュンダイクーペのアピールと現地の状況を確認してくれ。敢え
てヒュンダイの車だと宣伝目的とバレてしまうので、NSXに乗って現地の調査をして
きてくれたまえ、走り屋になってだ」
と言われた彼、そのまま日本に。そしてヒュンダイ系のパーツとホンダのチューンを
受け持つ「ハーフショップ」にデモカーであるNSXを借り、走り屋となってここに現れた
というわけ。そんな二人は今日、カート出身のY.Aさんと対決する。
一台のMR2、これがY.Aさんの車だ。NAの320馬力、セリカSS-U用のエンジンだ。
レーシングスーツにヘルメット姿、まさにレーサーを彷彿とさせる雰囲気だ。マイケル
は仲間に無線をとった。
「こちらマイケル、一台白のMR-Sを発見」
「即座に対決しろ」
「了解」
マイケルのバトルの準備は整った。一方こちらはたまたま通りかかったファン。こちら
もバトルの準備はできているようだ。そして、カウントがスタート。
「3,2,1,GO!」
バトルスタート!最初に出たのはマイケル。そしてその後ろにファン、最後にY.Aさん
がついた。これはまずパワーの差が大きいからである。そして最初のコーナー突入!
マイケルは派手な4WDドリフトをかましだす。ファンも同様アピール半分にドリフト。Y.
Aさんは堅実なグリップ走行でクリアしていった。ここでマイケルが一気にまた直線で
二台を離した。
「ああいうの嫌なんだよな、性能にたよりきったってやつ」
ファンはマイケルの走りが気にくわなかった。だが、マイケルはあっという間に堕落す
る。コーナーでは4駆ドリフトで速いマイケル、しかしタイヤのことを全く考えていなかっ
たため、さらにタイヤに負担をかけることとなったことを、全く気づいていない。結局マイ
ケルはそのまま後から二台に抜かされるハメとなった。次のコーナー、マイケルのドリ
フトがぎこちない瞬間、二台がマイケルの外を抜き去った。カードに関しては戦略といい
完璧なマイケルだが、車に乗った瞬間、その頭脳も全く働かず宝の持ち腐れとなってし
まう。これが彼の大きな欠点である。そうして、また直線で追いつこうとしても、タイヤに
負担をかけすぎたため、ホイールスピンするだけで前に進んでくれない。こんな悪循環
が続き、とうとう一人SPがなくなり負けてしまった。残りは二台となった。
Y.Aさんの得意技は左足ブレーキだ。この左足ブレーキ、カートでは当たり前の技術で、
ましてカートはMR、Y.AさんにMR−Sは鬼に金棒なのだ。一方のファンのNSXもMR。
同じMR乗りとしては仲間同士。だが走りのスタイルは異なる。ファンはドリフト遣いだから
だ。韓国にいたときも彼のドリフトは有名中の有名だった。
Y.Aさんはいつ仕掛けるかタイミングを待っていた。横に並ばれると引くタイプだが、ブロッ
クは得意なので、先に前に出てしまおうと考えたのであろう。そして、
「何?抜かされた!まあいい、まだ抜くチャンスはある」
ファンが抜かされた。ここで立場は逆転した。攻め重視のファン、そして守り重視のY.Aさ
ん。ますます争いは熱くなってきた。
「私のプッシュに耐え切ったものはいない。絶対屈服させてみせる!」
ファンはどんどん攻め込んだ。とにかく、信じられないような走りをY.Aさんに見せ付けた。
が、あることをファンはすっかり忘れていた。これでは、マイケルと同じ…。
「そうか、ブロックを破ろうとしてタイヤを余計に使ってしまった…」
そう、大切な事を忘れていたファン。あとから取っておくつもりが、走りに影響されて…。こ
れでは攻め込めない…。大失態だった。さらにY.Aさんはブロックを強化する。これにより、
絶対的な防御ができ、攻め込めないファンは手足が出せない状態となった。どんどん減っ
ていくSP、悪循環はどんどん続き、結局なくなってしまった…。自分の調子の乗りすぎによ
る敗北…。これほど悔しいことはあるだろうか…。普段目立とうとしない彼、ここで全てぶつ
けた結果、当たって砕けてしまった…。これではマイケルと同じ…。
Y.Aさんの車は環状線にまた戻っていったが、ファンはNSXを池袋線にのせた。そして、そ
のままどこかへ向かっていった。自分に対する説教をしにいくのだろうか?その後の彼の行
き先は誰にも分からない…。
ファンの悪循環により圧勝したY.Aさん。ブロックと左足ブレーキの達人はやっぱり凄い!
今回一番ダサかったのがマイケル。これではカードマスターの名が泣くぞ…。