カローラセダン、どことなく普通な感じがするが、この車がチューンされるとどうなるか?
一番良く知っている男がいた。コンパクトカー集団、PHDのナンバー2、ヨウジだ。事実
チームリーダーを務めている実力派である。堅実な走りなヒロトとは違い、独特の走行
で相手を惑わすやり方がヨウジだ。リスクが大きい走りだが、勝率はとても高い。いつス
ピンするか分からない位車が暴力的なので、そのような走りをせざる負えないのだ。最
大馬力780PS、車重1100kgという途方も無いモンスターなカローラ、スーチャーで馬
力アップ、しかもツインだからなおさら馬力がアップする訳で、これにお遊びなのかNOS
をプラス、直線では湾岸軍団のマシン以上の戦闘力を持つ。もちろん、モンスターを操る
上で大切なのがコンピューター設備、ハイテク揃いで燃料はなんとガイアックスを使用、
燃料の濃さを調節できるアルコール系はとてもこのカローラで有利なのだ。さらに自動硬
さ調節ピストン式エアサスペンションで、どんな状況でもすぐサスのセッティングができる
車になった。これにオーディオまで付けたのがまたお遊びっぽいのだ。PS2でDVD再生、
BOSEのスピーカーにオーディオ一式、普段はハイスピードなユーロビートを聞く彼にとっ
て、オーディオはこだわりの部分なのだ。
そして、過去トヨタの栄光の星として君臨してきた、あの車と今日バトルすることになる。
今日もユーロビートを聞きながら、首都高で相手を探していた彼。そこに、一台の古い、し
かもトヨタの車が走っていた。銀色の渋い、とてもハイテクと相対するようなエンジン音、そ
う、独特のあの懐かしく、そして感動するあの音…。トヨタ2000GTだ。ドライバーは2000
tの86乗りさんのようだ。ナンバープレートが「20ー00」となっているのが特徴なので、す
ぐ分かったのだ。そして、ヨウジはついついパッシング、バトルが開始された。
「3,2,1,GO!」
バトル開始!ハイテクVSレジェンドの対決だ!
最初に出たのはもちろんヨウジ、圧倒的な性能でロケットのように直線を走り去る。圧倒的
な動力性能差だけはどうにもならない。だが、問題は心臓ではなく、それについていく脚力
だ。それにバランス。馬力でねじ伏せる走りが勝つか、バランスの整った車に乗り、そしてコ
ーナーで勝つか、これが今回の焦点だ。
「僕のカローラは普通じゃない。絶対に負けるわけが無い。ハイテクとローテクの差を見せて
やる!」
ヨウジは機械に頼っているせいか、ここのところ腕が上がっていないのも事実だった。確かに
速いことは速いのだが、成長していない。機械が全てしてくれる、そう考えるようになってしま
ったためだ。自動でセッティングできるハイテク満載のカローラ、ハイテクならではの落とし穴
があるとは、ヨウジは知る由も無い…。
最初のコーナー、ヨウジはいつものようにリスクの大きい独特の走りでクリアしていった。対す
る2000ccの86乗りさんはこれまたドリフトでクリア。だが、実際ここが違う。全くリスクを抱え
ない走りをする2000ccの86乗りさん、対する大きなリスクを抱えながらも、一発逆転チャンス
を持つ走りをするヨウジの走り、つまり、一種の賭けだ。勝つか、負けるか。いや、ヘタすると、
生きるか、死ぬか…。
ハイテクに頼り切るヨウジ、いつものユーロビートを車内に爆音で鳴らして、テンションを最高潮
に上げていく。こうすることにより、あのリスクの高い走りができるのだ。ハイテクと共に…。
もう3つ目のコーナーを抜けた。まだヨウジが前だ。次のコーナーでもヨウジは速さを示した。気
分は最高潮どころか、それ以上にオーバーヒートしそうな位騰がり続けた。だが、あがり続ける
だけではない。それが下がるときだってある…。
2000ccの86乗りさんがここで大胆にもハイスピードでドリフト!ここでヨウジの前に出る。すぐ
自分の前を2000GTが走っている。とてもヨウジには信じられないことだった。普段前にいるは
ずが、後ろにいる。これがヨウジを焦りさせた。
後ろからの攻めを知らないヨウジ、負けるときも自爆がほとんどだったので、こんな体験は初めて
で、頭は混乱した。テンションどころか混乱が高まり、冷静ではいられなくなった。
「どうすればいいんだ?」
頭は混乱するばかり、だが、ここである考えが浮かんだ。
(そうだ、また直線で抜けばいい!)
この考えが自爆へのカウントダウンだった…。
そして、再び長い直線区間がやってきた途端、ヨウジはとっさにNOSを噴射!馬力は850PSま
でアップ!一気に抜き去った!かに見えたが、突然エンジンが爆破したのだ。
「うわあああああ、どういうことだ〜〜〜〜〜!!??」
ヨウジのカローラのボンネットが吹き飛んだ。
「機械は完璧じゃないのか〜〜?」
機械に頼りすぎた結果、生んだ結果だった。エンジンのトラブルを抱え、それに気づかずバトル、
機械が気づくと思ったヨウジはそのままいつもの限界走りで攻めまくり、そして後ろにいたとき混
乱、挙句の果てにはエンジンを爆破させるスイッチとなったNOSを噴射してしまい、エンジンが爆
発、そしてそのまま止まった…、というわけだ…。
「どうしてだ、機械は完璧なはずなのにだ」
そして、2000ccの86乗りさんが一言、
「あんた、機械に頼りすぎだ。車のことを機械に任せっぱなしだからだ。それじゃあ一向に車のこと
なんか分かりやしない」
「そうかもな、でもどうして2000GTがそんなパフォーマンスしているんだ?」
「あんたの車は素晴らしいだろうな。速いし、機械だって設備は最高だろう。だが、君は出来が悪い
。何がって?コミュニュケーションがなってないんだよな」
「分かった。今度は機械なんかつけない。もっと車を感じるようにする」
「そうだ、その通りだ」
その後、レッカーがやってきて、ヨウジの車が運ばれていった。2000ccの86乗りさんは、そのまま
ある場所に向かっていった。そう、もう一台の愛車、2000ccのハチロクと共に「ハチロク最強決定
戦」に出るため…。
まさにハイテク対レジェンド!でもエンジン爆発しそうなのにNOS噴射するなんて、ヨウジもアホで
すね…。やっぱりパワーでねじ伏せる走りはよくないのかな?
2000tの86乗りさんはその足でいよいよハチロク最強決定戦に出場!首都高全土で行われる
この大会、勝者は誰だ!?