女FD乗り、リサ。ショートカットのイマドキ風の服装、モテる系の彼女が

到底走り屋になるとは思えない。セブン乗りとしては圧倒的なテクの持

ち主。彼女が所属するチームではナンバー4、メンバーは5人なので、

4位の速さというとこになる。だが、独特の度胸の持ち主なので、突っ

込みはチームナンバー1といわれている。ギリギリまでブレーキを遅ら

せ、そのあとは車をねじ伏せるかのように曲げる、これが彼女のスタイ

ル。車もそれに合わせ、ブレーキはかなり強化されている。軽量化もし

っかりしており、オーディオもなるべく切り詰め載せている。だが、一応

こだわっているのも事実。パイオニアのオーディオ一式にPS2、もちろ

んPS2はDVD再生用だ。スピーカーはなるべくつける数を少なく、かつ

低音がしっかりと響くものを選んで、車内音響も重視した。これによって、

従来のインストールより軽くできたわけだ。普段はユーロビートを聞く彼

女、ユーロビートによりヒートアップし、気分は最高潮、これが彼女の度胸

の源となっているのもまた事実。

今日は練習走行中の彼女、そこに一台のハチロクが近づいてくる。この

時期、プレミア物のハチロクは走り屋の憧れの存在だった。ヘタするとR

以上に価値のあるものだと言う人も多かったのだ。150万円でタマが悪い

やつ、いいやつとなると10倍の1500万円ととんでもない価格になる。NS

Xが約1,5台、ポルシェ以上に高く、これに300万円でも加えればフェラーリ

だって買える値段。まさに憧れの存在なのだ。だが、どうしてこれほど価格

が一気に上がったのか?これには大きな訳がある。希少車というのも原因

だが、コレクターのハチロクまとめ買いにも原因があったのだ。世界中のコレ

クター、金持ちが一斉にハチロクを買って、台数が極端に減少、これにより希

少価値がアップ、このような価格になってしまったわけだ。だからこのときの

ハチロク乗りといえば、まさに走り屋で成功を収めた人なのだ。

そんなハチロク乗りで、孤高のワンダラーとして今も活躍している「15歳の86

乗り」さんがリサの相手、「86 Wanderer」のステッカーが目印なのだ。ここ

らでも有名で、数少ないハチロクレーサーでも一位二位を争う人なのだ。彼の

車は「カローラレビン」。これにターボを付けた環状仕様だ。

リサは相手がパッシングしているのに気がついた。バトルの準備を開始、そし

ていつものカウントがスタート、

「3,2,1,GO!」

バトルスタート!最初に出たのはリサだった。プレッシャーに負けないのが特徴

のリサ、後ろからプレッシャーをかけられても、ほとんど動じないのだ。だが、唯一

リサには最大の弱点があった。それは…。

「中々やるじゃん!ウチだって負けてられないよ!」

ここでリサがNOSを噴射!凄い加速力で一気にハチロクを引き離す。だが、これ

が後に墓穴をとる行動だということを、リサは知る由もない…。

「やっぱりウチの加速には付いてこれないよね。ちょっとアピールになったかも!」

アピール、確かにアピールにはなったかもしれないが、決していいアピール法とは

言えない。直線で引き離すことは初心者でも出来る事、つまり初心者がやることな

のだ、普通はこういう見解をする。湾岸以外の場所ならコーナーで差をつけて初め

てアピールになる。リサはこれが大きな間違いとは思わなかった。まだバトルに関

しては初心者同然だからだ。その点15歳の86乗りさんは数々のバトルを経験し

てきたベテラン。86奮戦記でもあったとおり、かなりの苦労を重ねてきている人だ。

何が違うのか?それはもちろん、テク、そして戦略だ。

最初のコーナー、リサは得意気にドリフトを見せる。だが、それ以上に凄いドリフトを

見せる86乗りさん。速く、それでいて華麗に決めるその姿、まさに86ワンダラーを

象徴するような感じだ。

「ええ、ウチより凄いよ、どういうこと?」

リサは後ろのハチロクのドリフトを見て、何かトリハダが立ったような感じだった。何

故?

「凄い、絶対違う、車も違うし、運転手が違うよ」

リサは明らかに違う、何かが違うと感じ取っていた。二つ目のコーナー、今度は後ろ

のハチロクがグリップ走行、まるでもてあそんでいるようだ。

「何で?どうして?いきなりスタイルを変えるの?」

このスタイルの変更、コレには訳がある。路面状況の確認だ。首都高はサーキット

と違って埃も凄い、それを確認するため敢えてあそこで派手なドリフト、そして堅実な

グリップと、どちらが速く走れるかを確認していたのだ。一見凄いことだが、これは86

乗りさんにとっては軽いウォーミングアップにもならない。

ここから一気に展開が86乗りさん側になってくる。最初にしたNOSでのアピールが、

大きく影響したのか、さらに86乗りさんは派手になった。そして、インを突き、そのまま

抜き去っていった。だが、まだリサにもチャンスはある。再びチャンスを狙う彼女、だが

あることに気づいた。直線区間がない分、さらにテクの戦いとなる。86乗りさんのドリフ

トがさらに速くなる。一方のリサは段々ぎこちなくなってきている。結局そのままSPが

無くなったリサは、負けとなった。NOSでのアピールがどう響いたのか?実はNOSを

使うことにより、相手側の心理も変わるのだ。つまり、自慢されたら仕返す、こういう訳

で、86乗りさんもアピールであのドリフトをやって見せたのも事実。また、直線区間が

短い環状突入時、リサは対策を考えられなかったことにも今回の結果を生むことにな

ったのだろう。一つの自慢が、二重の負担…。リサの完敗だった…。

「ウチの負けだよ、どうして?なんかすっきりだよ。自分で馬鹿だって事に気づいたよ。

もっと勉強しないと、けどもう時間が少ない…」

時間が少ない?どういうことなのか?その答えは、本編が進むうちに明らかになること

だろう。



さすがは15歳の86乗りさん!でも最後のリサの言葉、一体どういうことなのか?