2008年1月6日読了

帯による内容説明は

失踪した作家が残した原稿。
そこには、25年前の少女誘拐・監禁事件の、自分が被害者であったという驚くべき事実が記してあった。
奔流のようにあふれ出した記憶。
誘拐犯と被害者だけが知る「真実」とは・・・・・・・・。


物語は 小説家・小海鳴海の夫が 失踪した妻が残した原稿を編集者に送るところから始まります。
妻は実は25年前の誘拐・監禁事件の被害者であったということ。
その犯人が出所後 作家へのファンレターを装ってだしてきた手紙を彼女が受け取ったことから彼女は25年前の自分の事件を回想します。

主人公、小海鳴海こと北村景子は10歳のとき誘拐され、アパートの1室に1年間監禁されます。
誘拐したのは小学校もろくに行っていないという工員、ケンジ。

工場の2階にある狭くて古いアパートの部屋で、景子はろくに食べ物もあたえられず、猫のようにケンジに飼われます。
いつかは家に帰れるという希望は 隣の部屋に住むというヤタベさん。
ヤタベさんが気づいて助けてくれるはず、という希望はいつか悲惨な形で壊れるのですが、やがて彼女は家主に見つかり、家に帰ることができます。

1年も行方不明で死んだと思われていた娘が帰ってきたことに狂喜する母。
景子が男に「なにかいやらしいことをされたのだろう」と いう周りの目。
事件の裁判のために あるいは景子の心のケアのために景子に事件のことを尋ねる大人たち。


実際に起こった事件から イメージを膨らませて作ったという物語。
本当に被害者の手記を読んでいるような気持ちになり、作家の想像力というもののすさまじさを感じました。

「残虐記」 桐野夏生 

残虐記 (新潮文庫 き 21-5)