冷戦時代の一国平和主義が通用する時代は、とっくの昔に去っているのに、国内では、平和主義しか唱えることができない左派と、この期に乗じて後先を考えずに軍事行動に踏み切りたいとする右派が跳梁跋扈し、小泉政権は実際上のコントロールをアメリカに委ねているという状況だと思います。
果たして、この3者のどの視点が正しいのか、誤っているのかを判断するためには、その戦略を採ることが目先10年の、あるいは30年後の「日本の国家主権」を保ち続けるのに有効であるかどうかということを評価の基準とすべきではないでしょうか。
テロに対する断固たる抑止装置は必要です。報復は言葉の通じないテロリスト予備軍に対するコミュニケーションの手段として、抑止効果を期待して認められると思います。しかしアフガンの山の中に逃げ込んでいるテロリストが死のうが生きようが、今回はわれわれの利益にはあまり関係がありません。しかし、国家主権を他国に委ねてしまうというような前例をつくってしまっては絶対にならないでしょう。
われわれは、今後は各国の情勢を的確に分析して、「自国の国益を如何にして守るか」を常に念頭に置き、従来の立場に囚われることなく柔軟に自分たちの態度を変更して、「国家としての主権」を守り抜かなければならないという、まったく新しい立場に置かれているのだということを認識する必要があるのではないかと私は思います。
「われわれは断固として軍事協力を行う」と世界の先頭を切って堂々と宣言しての多国籍軍参加と、「show the flag」と言われた後に軍事協力を表明するというのでは、まったく効果は違います。われわれは緒戦で負けているのです。
アメリカは大規模空爆をやらないほうが得策です。
兵力差があまりに大きいので、ボコボコにやっつけられるとは思いますが、テロリストを蹴散らしても得るものはありません。
「いやあ、山岳ゲリラとの戦いは準備も実戦もたいへんなんで」と言いつつ、目的はパキスタン、や旧CISスタン諸国への長期駐留。
アメリカは、この機会に引きこもり政策から転向して、うまく振る舞えばあの地域に橋頭堡を確保し、中国とロシアに対する強力な牽制力を得ることになります。
パキスタンを親米政権にすれば、中国を背後から脅かすことになります。
イランイラクにもにらみが利く。
カスピ海油田の開発利権が転がり込むかも。カスピ海からインド洋までパイプラインを引くと、OPECの影響力は限りなく低下する。
下手をしたら、ウクライナなどCIS衛星諸国がNATOに加盟。
自衛隊のアメリカ海軍への組み込みは台湾海峡紛争への強力な抑止力になる(達成済み)。
中国とロシアにとっては最悪のシナリオです。しかし今回は「国連中心」を叫ぶしかない。さらにアメリカは、インドを将来的に非常な脅威と考えています。インドの隣国を手中にするメリットはあまりに大きい。
かつ、イスラム諸国の反発が少なければなお良し。この加減で、軍事作戦の進行は決定されるでしょう。はっきり言うと、ビンラディンの身柄確保の優先順位はその後に来るのかも。
決め手は周辺諸国への経済援助。日本への期待は大きい……。
これは、いくつかのシナリオのうちの一つに過ぎません変化する状況に応じて日本が取るべき態度は何かを読んで、先手を打たなければならないのです。