観念セット自体がまちがっている

 

 「不良債権を処理すれば景気は良くなる」というのは、誤った観念セットです。不良債権処理は景気回復のための必要条件ではあるが、十分条件ではありません。にもかかわらず、希望的にそのようなとらえ方をし、あたかも「これさえ解決すれば全てうまくいく」といわんばかりに振る舞っている人が、要路の人にも多い。自分の作った観念に自分を納得させてまちがった結果を生む、まったく子供じみた態度だと思います。

 同様に、「日銀が金融緩和をすれば、景気は良くなる」という通念も、まったくの誤りであることは、市場が示しています。でも、この考え方に多くの人がぶら下がっている。

 「特殊法人改革を成し遂げれば構造改革ができる」。 これもウソです。そんなに甘くはありません。

 正すべきは、こうした誤った観念セットを「空気」として共有してしまう曖昧な思考の方です。 どうやら、思考の構造が実に単純な守旧派の論理に引っ張られて、みんな考えが浅くなっているのではないでしょうか。正常な状態に較べて、明らかに思慮を欠いているように思えます。

 「あらゆる組織は、改革と安定の時期を繰り返す」という誰もが認められる命題を前提として(「いや、世の中には安定しか無い」という人もいるかも知れませんが、そういう人は置いていくしかありません)、「では今は改革が必要である」という意識共有を行い、その目標を外さないように細心の注意を払いつつ、道を探るべきだと思います。

 誤った観念セットの共有は、厳に慎むべきでしょう。

 政策立案者には、「問題と機会を発見し、構造化されていない問題を診断し、解決策を探索し、意思決定のダイナミズムを管理し、同時進行の意思決定をさばき、それをプランに統合していく」(ヘンリー・ミンツバーグ)必要があるのです。


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