森政権に加藤紘一が公然と反旗を翻しました。
私は、加藤に面識はありません。面談したこともありません。
ただ、ダボスの会議でサマーズに内政干渉まがいのことを言われて平気で引き下がってくるのを聞いたりして、「なんて根性なしなんだ」と歯がみをしたことがあるくらいです。
が、この外務官僚出身の政治家は、今回自分の政治生命を掛けました。
もし彼が、党人としての行動規範を超え、一政治家として自らの存在を掛けて行動するのであれば、私は一私人として彼を支持します。
彼は、自民党の中だけで通用しているロジックを超えて、日本をこれまでのレールから引き剥がして、まともな成長軌道に乗せる真の改革派としての旗印となるべく行動し、また彼を支持する議員たちに対する求心力を高めるべきです。
もし彼らが脱党して森首相に対する不信任決議に賛成した場合、森内閣不信任決議は成立する可能性があります。その場合、21世紀を迎えてすぐに、選挙になるでしょう。
この総選挙では、自民党は負けるはずです。
その結果、まったく新しい政治秩序が形作られる可能性があります。その時、加藤が中心的な役割を果たすか、または全く別の政治リーダーが活躍するかはわかりません。ただし、そうした大きな変化のきっかけを作るのは加藤なのです。自民党の枠組みの中に彼がいる限り、どのような立派な財政再建のシナリオも負け犬の遠吠えに他なりません。
私は、彼の信条は関知しませんが、彼の踏み出した大きな一歩を奇貨とし、本来の、政策本位の政治を行う姿勢を持った政治家として、彼を支持したいと思います。
総選挙になった場合、新しい世を作る権利はわれわれ有権者のものになります。
少なくとも加藤の打った一手は、そうした大きな変革をわれわれの手元にたぐり寄せてくれることになるでしょう。
自民党は党を分裂させるくらいなら、森を引きずりおろしても彼を留め置こうとするかもしれません。彼が多少の保身や政治的立場の改善に満足して日和るなら、改革は終わりで、これからの日本は下り坂を転げ落ちるだけです。逆に彼が信念を貫き通すなら、日本は自己変革への大きな一歩を踏み出すことになるでしょう。