これは自分にとってとてもつらい作業になります。傷口を掘り起こす大変な苦しみに
 なるからです。共に感じ、今共に歩んでくれる他者がいなければ絶対できないことで
 また、中途半端な気持ちで取り組んではけっしてならないことです。
  
  解離性同一性障害の人は人に対する信頼感、心をゆるすということを知らずに
 生育してくる場合が大半になります。
愛情をかけられなかった分、人への愛情の注ぎ方を知らないため、親身になって
 くれる人がそばにいないケースもあります。
 できるだけ家族や周囲に今いる人たちからの力で自然回復を試みたいのですが
 専門家の力をかりることもひとつの開かれる道だと思います。
  DIDの精神科医でのもとでの治療には5〜7年を要するのが一般的になります。
 長い歳月で形成されてきた精神の病には、また果てしなく長い歳がかかるのです。
 入院治療主体の施設も数多くあり生活を共にしながらの治療になるケースも多く
 みられます。
 この世に生を受け、一番初めに出会った人、親から心からの愛情を注がれなかっ
 た子はまた、心から人を愛し信用することができずに成長していきます。
 DIDは人に対する不信感から始まった自己を守るための防衛本能であるので、
 どれだけ先生に対して心を開けるかが焦点となってきます。
 いくら名医といわれる先生であっても、本人の波長があわなければ意味がありま
 せん。  がまんして歳月と費用をかけた分、余計に苦しくなるばかりです。
 先生に、親身になって取り組んでもらえないと感じた時点で、迷わず場をかえること
 もまた大切なことです。
 治療も出会いもすべてにおいてフィーリングが大切です。
 心の病を克服していく上で感覚があわなければいくら歩み寄ってもまじわることはなく、
 平行線のままで終わってしまうのです。 

  何がいちばん大切か。それは今生じている症状を一時的に抑制することではない
 はずです。 ことの「理」、内面からの解決に目をむけなければ、解離してまでも傷つ
 いている人の根本的治癒にはならないのです。 精神の病には必ず、そうならざる
 を得なかった原因が潜在下にはっきりと存在しています。
 そこに気づくことがまず第一歩です。心が傷つきながらも、懸命にバランスをとりながら
 闘おうとしているのです。
 長い目とあたたかい情愛で包み込むやさしさをもって、けっしてあきらめないで
 ほしいと願います。

                    2002年11月24日  記:内田多美子

   追記: 人はだれでも多面性をもっています
        ある意味でみな多重人格者なのです
        それを理性と知性でバランスをとって
        調整しながら生きているのです
        だとしたら 解離していく心のあらわれは
        人として素にもどっていく本能
        正直な裸の姿なのかもしれません