いま、傷つき、悩んでいる人たちの心が,前向きに思えるように、周りの人
たちも見放さず、あきらめず、努力していく姿勢が、本来の自然な治癒の
ありかただと思います。
また、そこまで患者を導いてあげることが、精神科医、心療内科医、
治療家としての努めではないでしょうか。
日本の心の医療には日々、ものすごい疑問を感じています。
20年前、学生のとき夢と希望をもって学んでいたとき、
「日本は宗教観がない。目に見えないものにはお金も労も費やそうとは
しない。20年たってもアメリカにはかなわないよ。」と仲間に言われたとき
の言葉をいつも思い浮かべます。
目に見えない潜在意識の内にこそ真実があります。潜象の中にこそ
明らかな現象は存在しているのです。現象は形のない潜象にすぎないの
です。
目に見えない形ないものだからこそ、心の医療には最善を尽くし、
取り組むべきなのです。
現代の心の医療はさまざまな薬品が開発され、脳の細部も解明され、
技術としてはこの20年、目まぐるしく進化してきました。
しかし、心病む人たちの数は、ストレスを抱えながら生きている人たちは
急激に増えています。
皆、どこか傷つき、 心身共に弱って、それでもがんばって生きています。
病は気から。 医療の進化と共に、傷ついた心だけがおきざりにされ
悪とみなされ、封じ込められているのが現実の姿なのです。
これは進化ではなく、見えざる医療の後退なのだと、
私は感ぜずにはいられません。
2003年 2月15日
記:内田 多美子