漢方薬と西洋医学の薬

 

 漢方薬を飲むのなら、粉状や錠剤になっている既製品ではなく、昔ながらに煎じて飲むものをすすめます。顆粒にお湯を注ぐだけのコーヒーと、豆からひいて入れるコーヒーとでは、味も香りも違うように、漢方薬も、既製品のものと、配合して煎じていくものとでは、大きく効用が異なります。
 漢方薬は自然界の草根木皮等を乾燥させたものを、何種か混ぜて配合していきます。水を入れて約40分間弱火で時間をかけて煮出し、煎じていきます。西洋医学の薬のような副作用はなく、体を内部から改善させ免疫力を高めていくので、難病や治らないといわれた症状でも回復していくことが多々あります。

 昨今では薬局や大学病院で漢方薬が処方されることが多くなってきましたが、本来はひとりひとりの症状や体質、体型に合わせて、さじかげんを調整しながら配合していくもので、既製品が適切とは限りません。誤った知識や素人判断で服用することがないようにしてください。

 子宮筋腫の女性が、薬局で血液の循環を良くするツムラの婦人科の漢方薬を処方されたところ、服用後出血がだんだんひどくなり、腹部に激痛が起こるようになってしまいました。2か月後に漢方専門医のもとを受診。その薬は彼女の筋腫にとっては逆効果で、服用してはならなかったもので、もしこのまま続けていたら、出血多量で危なかったと言われました。

同じ病名でも体調や症状が人によって違うように、漢方薬も充分な診療と問診を行なった上で、その人に合わせて処方していかなければならないのです。

 現今、終末期医療といわれているホスピスでは、余命3か月以内と宣告された人でしか入れないところが多くなっています。余命1年の人は不安の中7か月余りの歳月を、順番があくのを待たなければなりません。ホスピスでは病気を治すことよりも、いかに苦しまないで死を迎えられるかという点に重きをおいているため、モルヒネを調整しながらの痛み緩和ケアが主体になります。

 命の保証に絶対ということはありません。余命3か月と診断されても、1年、3年、5年と生きている人はたくさんいます。体は、命の期間を宣告され、不安と恐怖で肝臓が充血し、血のめぐりが悪くなることで、ますます弱ってしまうのです。人は絶望したときに、寿命が大きく縮まっていくのです。

 セカンドオピニオン(第2の意見、別の医者の意見)の重要性が今、医学界で取り沙汰されていますが、必要なセカンドオピニオンとは、西洋医学界間だけではなく、視点のちがう東洋医学界との間にではないでしょうか。限られた分野の手段、ひとつの方法だけではなく、患者にも様々な治療方法を知り、自分の意思で選ぶ権利と自由があるのです。

今から30年前に、ある医学生が言いました。

「これからは西洋医学と東洋医学が融合していく時代だ。西洋医学には限界がある」と。その人は今、整形外科医として、西洋医学と漢方医学を合わせた治療法と痛み緩和のケアに努めています。

 ほとんどの医療現場では、体だけをみて人の心が置き去りにされているのが現状ですが、医療とは、患部だけをみて治すのではなく、充分に意思の疎通がなされた上で、どうしたいか、何が苦痛か、残りの人生をどう生きていきたいかを話し合い、理解納得した上で行なわれていくべきものだと思います。

 私たちの体にとって、不安と恐怖の中で絶望していくことが何よりも良くないことです。絶望の中に希望のきざしはみえません。死を迎えるだけの終末期病棟、退院不可能で長期入院者が多い精神病棟、こうした環境の中でも、望みを絶たなければ可能性は生まれてきます。

自然界には、人間の力、英知ではとうていおいつくことができない神秘がひめられています。小宇宙といわれる人間の体の中にも、自然の神秘の力が(ひそ)んでいます。科学や医学の力でいつのまにか封じ込めら潜在下に埋もれてしまっの力を抽象、引き出すことをあきらめたくはありません 

             日本伝承医学心理療法士

                      内田 多美子