『日本伝承医学の由来と歩み』   トップページへ戻る

私が日本伝承医学の技法と初めて出会ったのは、昭和41年(1966年)広島皆実
高校の二年次(当時17歳)の柔道の授業の時であります。この時の柔道担当の非
常勤の先生から、授業の中で鼻血の止め方を習った時です。当時は当然その技
法が日本に伝承されてきた医学とは知る由もなく、後に日本伝承医学の研究に入
ってから気づいたものであります。17歳の時に偶然に習ったこの鼻血止めの技法
が、私を日本伝承医学の研究に一生を捧げるきっかけを作った貴重な体験になっ
たのです。

この習った鼻血どめの技法が、後々の臨床の世界やスポーツトレーナーの世界で、
大いに役立ち、一度の失敗もなく止血できています。また家庭療法として指導し
多くの方々にも役立ててもらっています。簡単で確実な止血の技法は正に日本伝
承医学と呼ぶに相応しい技法であり、後世に残していくべきものと考えています。


『九州の山本宣良先生との出会いが、日本伝承医学の研究に向かわせた』

24歳(1973年)で日本体育大学を卒業し、すぐに鍼灸あんまマッサージ指圧の専門
学校に入学し、本格的に治療の世界に足を踏み入れました。東洋医学の研究に
没頭し、経絡治療の大家、故 小野文恵先生に師事し、東洋的な物の見方、考え方
の基礎を固めました。これがその後の“有機的全体思考”の考え方を身に落とし、
本物を見る眼を養わせてくれました。

鍼灸学校卒業後、病院勤務を経て、整体術の大家故鈴木正教先生に三年間内弟
子として師事し、整体術の基礎を固めました。そして鍼灸と手技療法の接点を探る
べく、姿勢保健均整専門学校に入学しました。そこで運命の故山本宣良先生と巡
り会ったのです(1981年、32歳)。

故山本先生の技法を一目見て、正に自分が追い求めていた技法であると直ぐに
直感しました。その技法は当時身に付けていた、有機的全体思考と人体生命の
全面的認識法(人体は固体、液体、気体と構造、機能、形態と物質、エネルギー、
情報の統合体)に照らして正に合致したのです。特に故野口三千三先生から学ん
でいた人体液体説の中の「ゆり・ふり・たたき」という概念ともぴったり一致したの
です。また追い求めていた鍼灸と手技療法の接点も見出せたのです。
ここから本格的な、日本の伝承医学、日本伝承医学の研究に入っていきました。


『山本宣良先生から伝えられたこの医学のルーツ』

故山本宣良先生の口述の中から、先生の使われていた各種技法は先生のお爺
さんから学んだものと聞いています。祖父は宮崎県延岡市の出身で、延岡市が、
市になる前の三つの村町の中の一つの村長を務められていたそうです。名前は
山本弥右衛門と聞いています。その方が不思議な体術を会得されていて、死ぬ
病人を蘇らせたり、難病を完治させたり、体術で何人もの人を一度に投げ飛ばし
たりという技を使われていたそうです。そして不思議な治療術を使って人々の病気
を治しておられたそうです。

延岡地域の名士であられた祖父がその縁で、九州一圓の行者と親交があって、
様々な日本古代から伝承され続けてきた技を取得されたのではないかと考えてい
ます。
九州の宮崎地方は古代文明の栄えた地域でもあり、九州自体が神道関連の行場
が多く存在し、また平家の落人伝説の多く残る地域になります。詳細な歴史的な
つながりは知る由もありませんが、この地域に古代の医学の伝承が綿々と受け
継がれてきたことは事実であります。

また、この日本伝承医学の時代考証は縄文時代に遡(さかのぼ)ると推察されます。
その後の歴史的な変遷は明確ではありませんが、後世においては平家の系譜を
引くものではないかと私は推察しています。
古来よりこの日本に伝承された医学が、日本の古代人の生命観、人体観の中か
ら開発研究されている事は演繹的な思考法の中から解明できるものであります。


『何故日本独自の医学と言えるのかーー日本伝承医学命名の理由』

この治療技術は、既存の整体術や各種手技療法とは全く概念の違う技法になり
ます。それは手技により、骨髄に響かせる治療方法だからです。日本伝承医学は
人体の骨に対して、「ゆり・ふり・たたき」というヒビキ(振動)や、下肢の角度を
とって踵を落下させ骨に圧を与える事が技術の主体になっています。つまり骨の
特性である「圧電効果」と「骨伝導」を利用した世界に例のない技法になります。

そしてまた様々な特殊な技術を考案しています。例えば子宮筋腫を下腿の骨を
細かく振る技術で、一回の治療で効果を出し、腫れや炎症を除去したり、痔や脱
肛を頭部の左頭頂部の骨の反応点を静圧する事で、消し去ったり、眼病一切を
受者の眼球上に術者の親指を1センチ位の距離から左右に動かし続け、電気を
発生させ、涙を出させる事で治したりします。

世界的に見てもこのような骨に特化した技法や電気発生法を応用した技法は存在
しません。このような治療技術を開発構築できる民族は、世界一、骨を大切にし、
骨に“カミ”を見出した日本人以外に考えられないのです。後年この技術を日本伝承
医学と私が命名した理由がここにあるのです。


『日本伝承医学と命名し、山本宣良先生から受け継いだ治療技術に理論的
 根拠を付与し、後世に正しく伝える作業を開始する』

我々人類は古代の人の血と汗の結晶の中から発見開発された貴重な遺産を正し
く継承し、それにまた創意工夫を加え、後世に正しく継承する責務をもっています。
古来日本から綿々と受け継がれてきたこの貴重な医学を、遺産を、途絶えさせて
しまうわけにはいかないのであります。

臨床において、受け継いだ技術を行使すれば見事な結果が得られるのです。この
伝承された“技”を使えば使うほど、日本の古代人の人体生命への解析度の高さ
と治療技術の構築力に、ただただ驚嘆するのみでした。何とか古代人の命の捉え
方を解読し、技術の理論的な解明をし、後世に正しく継承しなくては師への恩返しが
できないとの思いと、この貴重な古代人が残してくれた遺産を用いて、人類の健康
に貢献したいという一途な思いが、日本伝承医学解明の作業に向かわせたので
あります。


『骨を捉え直す作業から日本伝承医学解明のアプローチは始まった』

1985頃より故山本先生より伝授された技法を日本伝承医学と命名し、先生から
伝授された技術に理論的な解明を加える作業を開始しました。当時身につけてい
た生命人体への全面的認識法を駆使してこの困難な作業に着手しました。
生命人体の全面的認識法とは、人体を固体、液体、気体として捉え、構造、機能、
形態面から分類し、生命の仕組みを物質、エネルギー、情報の三態で構成されて
いると分析した認識法です。これに徹底して身につけた東洋的な物の見方考え方
を加味してあります。

治療の技術の解説書は、理論だけでは成り立ちません。理論を立てて日々の臨床
の中で行使して、実際に確実に効果がある事を確認する事で、理論づけが成立す
るのです。それを一つずつ確認しながら進めていく作業でした。
そのためには主体となる骨を既存の解釈とは離れて、多面的に捉え直す事が求
められます。その中から出てきた骨の秘密が、日本伝承医学解明のキーワードと
なったのです。


<骨の多面的考察>

①骨は人体の支持組織である。
②骨は人体中最大の組織である。
③骨はカルシウムとリンの貯蔵庫であり、必要に応じて溶出し、また蓄える。
④骨は圧や振動が加わる事で電気を発生するーー圧電作用。
⑤骨は人体中最速最大の伝達系であるーーー骨伝導。
⑥骨格として全身をネットワークしている。
⑦骨は生命情報の記憶装置であり、格納庫であるーーー保存状態が良いと何億
 年も残る。
⑧骨は大地や大気ひいては宇宙からのエネルギーや情報の受信のためのアンテ
 ナであり、また情報の発信装置である。

以上の認識に基づいて骨を捉え直す事で、人体生命における骨の重要性が明ら
かになったのです。詳細は拙者著述の「骨を捉え直すシリーズⅠからⅢ」「骨に神
を見た日本人」「骨に情報を刻む」「人体電気を捉え直す」「磁気を捉え直す」
として10冊の資料にまとめてあります。
このような長い時間をかけた地道な研究の中から、次第に日本伝承医学の全容
が明らかになっていったのです。


『日本伝承医学の解明は、古代からの文献や資料という証明がなくとも、演繹的
な解析法でその根拠と歴史、その本質を知る事は可能となるーー生命の仕組み
からの考察』

⑴生命の仕組みの考察

医療というものは、究極的には人間の命を全うさせる事を目的としています。命
を扱うという事は、命の仕組みを知る必要がある事は言うまでもありません。生
命とは何かとの問いに答える事は容易ではありませんが、生命の仕組みとなるも
のは、はっきりとわかっています。どのような生物であっても、生命を成り立た
せている仕組みは、「物質」「エネルギー」「情報」の三態で構成されています。

全ての生物(生命体)は必ずある“物質”で作られ、生命体を生かし動かす“エネル
ギー”が必要で、さらに内外との“情報”の、受容、伝達、処理、反応能力があって
始めて生きていくことができるのです。生命あるものの仕組みは必ずこの三態を
備えないと存在できないのです。これが絶対必要条件になります(詳細はHP、院長
の日記、生命の仕組みに準拠した日本伝承医学の解説の項を参照ください)。

⑵生命の仕組みの三態を具体的に人体にあてはめる

上記の生命の仕組みの三態となる物質、エネルギー、情報を具体的に人体にあて
はめて考察しますと、人体生命を構成する上で、不可欠な物質は究極的にはCa
(カルシウム)とP(リン)になります。さらに大きな視野に立って生命に不可欠な物質
をあげれば、それは命の源となる“血液”になります。そして人体の機能のほとんど
を動かすエネルギーの主体は“電気”エネルギーになります。心臓も筋肉も脳も全
て電気をエネルギーにして機能しています。そして人体の情報として作用するのは
“磁気”であります。人体の情報の各種司令中枢は脳にあり、その主体は磁気情
報での受容、伝達、処理、反応が行なわれています。

要約すると、物質としてのCa(カルシウム)とP(リン)と血液(赤血球、白血球、血小板)
であり、エネルギーとしての電気、情報としての磁気になります。
人体はこの三要素の全てが備わらないと生命体して成立しないのです。

⑶人体の最重要組織を「骨」に見出した古代人

次の展開はこの生命の仕組みとなる3条件に、一番関わる人体の組織器官は何
なのかを探れば、人体生命にとって一番重要な組織器官が割り出せます。これが
見出されれば、生命に対して一番合理的なアプローチの方法が構築できる事に
なります。これに気づいたのが日本の古代人だったのです。

上記の3条件の全てに関与しているのが人体の組織器官の中の“骨組織”なので
す。人体の骨は正にカルシウムとリンの貯蔵庫であり、骨の主成分はリン酸カルシ
ウム(アパタイト)でできています。リン酸はDNAの構成成分であり、エネルギー代謝
のもとであるATP(アデノシン三リン酸)になくてはならない物質です。またカルシウム
は、全細胞の機能調節物質として最重要です。つまり、骨こそ、生命活動の中心たる
物質が集積している器官なのです。すなわち、遺伝子の複製、遺伝子の機能発現、
細胞呼吸とエネルギー代謝など様々な生理作用の要となる生きた貯蔵庫なのであり
ます。さらに骨の中の骨髄で血液(赤血球、白血球、血小板)は作られているのです。
また骨の特性として、圧や振動(ヒビキ)が加わることで、圧電作用が働き電気を発生
します。そして電気が流れることで電磁誘導により磁気も発生します。

さらに人体の情報の伝達系の大元は神経系だけではなく人体の中心に歴然として
存在する骨格を介した「骨伝導」になります。骨伝導は人体中最大で最速の伝達系
で、骨伝導を介して電気エネルギーも磁気情報も全身に伝達されます。体の中で実
際に活動している部分は主に内臓であるために、我々はどうしても目がいってしまい
ますが組織器官として内臓と同じくらい重要なのが「骨」なのです。正に骨は生命物
質の貯蔵と生産、電気エネルギーの産出と充電、磁気情報の発生と伝達の主体と
して生命維持の中心を担っているのです。

以上の事を日本の古代人は、その鋭い感受性で感知し骨を主体とした生命力活
現法(骨髄機能の発現法)を開発研究したのです。正に骨は保存状態が良ければ
何億年も腐らず存在できる物質であります。生命体はその何億年も残る骨に生命
の遺伝子を刻み込んだと考えられます。日本の古代人はこの事を直感し骨に“情
報を刻む”技法を開発したのです。

⑷演繹的解析法により、日本伝承医学の根拠が証明できる

演繹的解明法とは絶対的な原理や真理を解明する事で、それを成り立たせる絶対
必要条件を割り出し、答えを導き出す方法論です。この手法を古代人の生命観や
人体観の解読と生命力発現法の解明にあて、結果割り出された答えのキーワード
は“骨”に全て集約されたのです。

日本の古代人は骨の秘密を発見した故に、世界で例を見ない骨に圧や振動を加え
る技法を開発研究し得たのです。骨に神(カミ)を見出したからこそ、骨に情報を刻む
技法を考案したのです(詳細は拙者執筆の「骨に神を見た日本人」、「骨に情報を刻
む」の項を参照ください)。

以上の展開の中から、日本人が世界で一番骨を大切にする民族の謎が解けるの
です。骨を大切にし、骨に畏敬の念を抱き、骨に執着するからこそ、日本人は遺骨
を重要視し墓の中に大切に保管し、崇敬の念をもって代々埋葬し続けているのです。
遺骨が無いと祈りの念は通じないと考えているのです。それが戦後70年以上も経
過しても諦める事なく、遺骨を見出すために国を挙げてとり組んでいるのです。

以上の考察の中から、今日まで伝承されてきた数々の技法は、日本の古代人が
開発し残した技法であると確信をもって言えるのです。先人達が日本独自の骨に
圧や振動を与える技法を残してくれたのです。また骨が生命の仕組みの三態全て
に中心的に関与し、命の物理の原理に則っているからこそ、生命力を発現でき、
病気や症状の回復に大きな効果を発揮する事ができるのです。

日本伝承医学は日本の古代人の直感力と日本独自の歴史と文化、また気候風土
が生み出した民族医学として位置づけられます。決して個人の力で開発継承された
ものではなく、古来からこの地に継承され続けてきた、日本が世界に誇れる偉大な
民族遺産であると言えます。


『骨に情報を記憶させる事のできる唯一の治療法ーーー骨に情報を刻む事で、一
回の治療でも大きな効果を生む技術』

これまで解説した様に、骨は情報の記憶装置であり格納庫であります。
保存条件と状態が良ければ、何億年も残る存在です。これが古代人に骨に命の
源(みなもと)を見出させた大きな理由であります。
現代の我々も、古代の生物の骨が残った事でそのDNAを解析する事で、年代の
確定から、その種の様々な情報を手に入れる事が可能になっています。

その骨の情報記憶能力を活用する事で、治療の刺激の情報を骨に記憶させる事
が可能になるのです。記憶は磁気情報として収納される事から、磁気を発生させる
事が条件になります。磁気の発生は電気が流れる事で電磁誘導作用によって発生
します。故に骨の圧電作用を利用する日本伝承医学だけが骨に情報を記憶させる
事ができる唯一の技法になります。

日本伝承医学の技法は全て骨に圧や振動(ヒビキ)をかける操法なので、必ず電
気が発生し、骨伝導で全骨格の中を瞬時に電気が流れます。この電気の流れに
よって磁気が発生し、骨の中に記憶されるのです。

発生する電気量も磁気量も超微弱なものになります。人体の各組織器官は超微弱
な電気や磁気に反応するように作られているからです。特に脳内の脳幹部や視床
下部、下垂体、松果体等は超微弱な磁気で作動するように作られています。

よく目力があるなどと言われますが、眼は心臓に次いで電気を発生する場所と言
われています。目からは微弱ながら電気が発生していて、この電気力が衰えると
眼病にかかりやすくなります。「目でものを言う」とか「目で射抜かれる」「目は心の
窓」「目が死んでる」等、目は意志や感情を表わし、体調も一番反映される場所です。
これら全てが目から発する電気力の加減が関わっています。この目の電気力は相
手にも大きな影響力を及ぼします。
目力は意志力であり、ある方向性をもったエネルギーとして作用すると考えられる
のです。目だけでなく心の“意志”もある方向性をもったエネルギーでもあるからです。

この事は臨床の技術の行使において、ある意志をもつ事で患者に、電気的、磁気
的なエネルギーを発する事につながるのです。日本伝承医学の治療においては、
骨に電気を発生させ電気が流れる事で磁気も発生しますが、これをさらに作用さ
せるには、“骨の情報を刻む(記憶させる)”という強い意志をもつ事が、患者に大き
な作用力を及ぼすのです。そして骨に情報が刻まれるのです。

以上の理由により、患者の骨に刻まれた情報が消える事なく作用し続け、一回の
治療だけで大きな成果を産み出すのです。また一度記憶させた情報は、ある手順
を行使すればすぐに作動を開始します。まさに人体はコンピューターと同じような
機能をもっているのです。しかしある意志が働かないと真の作動は起こりません。
ここが機械と人間の決定的な違いなのです。

日本伝承医学の臨床家は、以上の認識を肝(きも)に命じて、技術を行使しなけれ
ば、真髄(しんずい)に響かせる、真の治療効果は発揮できないのです。


『今後の展望』

以上が日本伝承医学の由来と歩みになります。日本伝承医学を標榜して32年が
経過します。故山本宣良先生から伝授された技法の理論的な解明はほぼ終わっ
ています。ただし臨床の場においては、技術の獲得にこれでいいという、終わりは
存在しません。より優れた技術の習得に今後も日々精進する事は言うまでもなく
より新たな気づき、発見を日々目指しています。

そしてこの受け継いだ日本人の貴重な医学遺産をより良い形で後世につなぐ事が
私に課せられた使命と受け止めています。今後も歩みを止める事なく進み続けま
す。この医学が人類の健康に貢献できることを祈願します。

                      2017年 10月25日
                         
                            日本伝承医学主幹    有本政治