作品一覧へ
表紙へ

強い日差しで
乾いた庭に
ザァザァと
水をやりながら
真っ赤に色づいた
小さな実に
指をあてる

熟した実は
触れた指先に
ぼとりと落ち
あおい匂いが
微かに残る

黄金に焼けた
夕方の町並

祭を告げる花火が
ドーンとあがる

強さを増した
夕方の風に
隣の軒先の風鈴が
ガチャガチャと
忙しなく鳴り響く

この風に乗って
町を出たあの人が
帰って来ないかと
夕闇の中に
見慣れた人影を
探している

空になった
ジョウロを片手に


カエッテオイデ


2007.07.24.汀尋