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泣きそうな顔の
子どもの手を引き
若い母親が
道を急いでいる



雪の降りそうな
薄暗い昼下がり
道行く人々の足は
忙しなく

つながれた
母と子の手は
唯一つの温もりで
決して離すまい
離されまいと
結ばれた絆は
温かく絡みつき

先を急ぐ母親と
転びそうになって
ついていく子の
二つの靴音

あの角を
曲がっても
結ばれた手は
解かれないだろう

あの子が
泣かないように
母は足どりを抑え

母が困らぬよう
子は泣くのを堪え

二人はどこまで
行くのだろう

雪模様の空が
広がっている


2005.12.26.椎葉