懐しさをこめて かけようとした 電話 ふるえる指先が 最後の番号を 押せないまま 受話機を置いた 沈黙 ここにいる私と あなたとの距離 それぞれに過した 時間の重さが 二人を こんなにも遠く 隔てている 越えられない谷 奈落の底を のぞくような 目まいに襲われ 手にした 受話機の重さ 残した番号 一つの先に あなたがいる 秋の夜長に また一つ ため息を重ねた