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猫が鳴く
扉の前で
私を振り返り

ああ、
外へ行きたいのか

私が開けた扉から
顔だけを出して
外の匂いを
かいでいる
そして再び
私を振り返り
猫が鳴く

まっすぐに
私の目を見つめ
視線をそらさずに
何度も鳴く
調子を変えながら
訴えるように
誘うように
なだめるように

伝わらない言葉が
もどかしいだろう
伝わらない思いが
寂しいだろう
それでも
あきらめずに

私の目を見つめ
鳴く猫の
瞳のうちに
私に似た誰かを
見つけた気がした

そうだね
冬の野原へ
散歩に行こう
二人で
春を捜しに


2005.03.13b.椎葉