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愚かの海に
身を浮かべ
ありえない明日を
夢想する

突然お金に
恵まれてみたり
昔の失敗を
取り戻してみたり

愚かの海は
生温く私を包む
ありえない未来を
心に描かせる
薄明の世界に
正しい現実を
見失わせていく

夢見るべきは
夜明けの光なのに
踏みしめ歩むべき
茨の道なのに
愚かの海では
繰り返される
日常の波が
寄せては返し
ゆりかごのように
まどろみを誘う
私が大地へ
近づくことはなく
見えていた岸が
遠くなった事に
気づきもせず
今という瞬間を
当たり前のように
繰り返していく

いつの日か
黒い海へ流されて
その冷たさに触れ
私は初めて
流されてきた
距離の長さに
驚くだろう
愚かの海の中に
失ってきたものに
嘆くのだろう
しかし
そこから帰る
道はなく
嘆きの海で
やがて溺れて
いくのだろう


2005.02.07c.椎葉