キリキリと
巻いたネジから
指を離すと
ポロンポロンと
やわらかな音で
単調な音楽が
聞こえてくる
この小さな
箱の中に
秘められた思い
バネがのびるまで
わずかの時間に
せつせつと
繰り返される調べ
私は思い出の中の
波間を漂い
あちらの島へ
こちらの浜へ
流されていく
どれだけの思いが
積み重ねられて
今の私に
なったのだろう
どれだけの歴史が
この曲に
込められて
いるのだろう
同じ時間は
繰り返さないのに
曲とともに
何度も思い返す
過ぎ去っていった人
ゆっくり
流れる音楽が
切れ切れになり
一音を奏で
途絶える