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冬の日溜りの中に
倒れている男
糸の切れた人形のように
投げだされた手足
履いている靴には
穴があき
身にまとう服も
薄汚れてすりきれている
疲れ切り
横たえられた体の中で
どんな夢を
見ているのか
静かな呼吸に
伸ばされた髭が
かすかにゆれる

乱れた髪の間から
日に焼けた肌がのぞく
その深く刻まれた
しわの奥に
どんな悲しみを
しまいこんだのか
どんな苦しみを
飲みこんでいるのか

梢の上では
一羽のカラスが
不思議そうに
男を見おろし
首を傾げるその羽は
うららかな日差しを受けて
輝いている

吹き降ろす北風も
眠っているような
穏やかな時間


2005.01.05.椎葉
2005.01.07.修正
2005.01.08.修正