CD再生音に対する振動の影響  戻る    2003.3.21

スピーカーなどが発生する振動が電気系を通じ音質に影響を与えるメカニズムとして、導線が磁場中で振動することによる誘導起電力の影響、CDの光検出器の誤動作などが言われている。しかし、これは例によって定性的な可能性を列挙したまでで、定量的な見積もりを行なった例を知らない。確かに、これを理論的に導き出すのは与える条件が多すぎて信頼できる推定は不可能に近い。そこで、微小な外的要因が与える影響を調べるときに使われる手法として、極端な条件を与えた場合について、振動の影響を実験的に検証してみた。具体的には以下のような測定を行った。

ちなみに私が使っているラックはホームセンターで購入した、比較的がっしりした木製の組み立て棚である。

初めに、無音CDをパソコンで作成する。実際にはEasy CD Creator のSound Editor 機能を使って製作した。念のため第1トラックには普通の音楽を録音し第2トラックを無音部分とした。(なお、雑学帳のCDの誤り訂正機能の所に書いたように、CDの録音にはEFM変調が施されており無音部分といえども決して盤面にピットが無いわけではないことに注意する必要がある。むしろ、無音部分は0と1がほぼ同頻度で分散している。このことは、無音部分でエラーがないことは有音部分でもエラーがないことと等価であることを意味している。)

次に、アンプのスピーカー端子にオシロスコープのプローブ(1/10 attenuator 付)をつけ、無音部を再生しながらラックを硬質ゴム製の小槌(槌部の直径 6cm 長さ 9cm)で叩き、何らかの出力が検出出来るかを調べた。

その結果、オシロスコープの感度を最大に上げ(5mV/Div)さらに、アンプのボリュームを徐々にあげながら、ラックの支柱部分を小槌でかなり強く叩いた影響を調べたが、最大音量にしてもノイズレベル以上のシグナルは何ら観測されなかった。

スピーカー(スコーカー)に耳を近づけることにより耳での検出も試みたが何も聞こえなかった。もちろん、このとき小槌がラックを叩く音が邪魔をするが、硬質ゴムを使用しているのでそれほど大きな音はしない。従って、スピーカーからの音はかなり微小な音でも検出できるはずである。

このことは、CDの再生は振動の影響をほとんど受けないことを意味する。ただ、これが、信号検出そのものが影響を受けないのか、誤り訂正機能により訂正された結果なのかはわからない。

いずれにしても、これは雑学帳のCDの誤り訂正機能の所に書いたように、CDのディジタルデータの読み誤りはこのような極端な悪環境の下でも、ほとんど無いことを実証するものである。

また同時に、アンプそのものも振動によってほとんど影響を受けないことも意味する。
ただし、これは半導体アンプの場合であり、真空管アンプの場合はいわゆるマイクロフォニックノイズ(極板の振動によるノイズ)による影響が出るはずである。