金属加工学教室金属物理学講座は昭和37年大学の拡張期に工学部冶金学教室を母胎として創設された金属加工学教室の1講座として発足した。
本講座では金属・合金の物性、特にその磁気的、電気的性質に関する諸問題を量子物理学的見地から研究および講義している。
金属物理学講座は昭和38年4月に開設され、中村陽二が京都大学理学部化学科より講座担当教授として着任した。1年後昭和39年に助手志賀正幸(昭和54年助教授、平成元年より教授)が加わり、低熱膨張率合金材料として知られている、鉄ニッケルインバー合金の示す数々の異常物性の起因を解明すべく研究を開始した。そのため、超微粒子Fe-Ni合金やFe-NiーMn合金などを作成し面心立方晶鉄合金の磁性、電気的熱的性質を調べた。 また、微視的情報を得るため、当時まだ世界的にも始まったばかりの、メスバウアー分光法を導入した。これらの研究を通じインバー合金の示す大きな磁気体積効果をバンド理論に基づき説明した。インバー型合金の研究はさらに、Fe-Pt合金、ラーベス相金属間化合物と引き続き行われこれらの物質の中に顕著なインバー特性を示す物質を見いだしてきた。 助手村岡芳俊(昭和55年〜昭和58年,昭和59年逝去)が行った超音波による弾性率の研究、助手和田裕文(昭和61〜平成4年,現助教授)による磁気比熱の研究はこの流れに沿うものである。
昭和40年より、助手槌田 劭(昭和42年助教授、昭和54年転出)が加わり希土類化合物の物性の研究が始められ、セリウム化合物の磁気的・電気的性質について研究をおこなった。希土類金属化合物の研究は現在も引き続き行われている。さらに,微視的測定手段を充実すべく、核磁気共鳴法による研究が助手安岡弘志(昭和42年〜昭和50年)を中心に開始され,その後助手中村裕之(平成2年〜)が担当し研究室の重要な研究手段となっている。
このほか,新しい試料作成法としてスパッター装置を導入し,助手隅山兼治(昭和50年〜平成元年)を中心に気相急冷法による非平衡合金の構造と磁性について系統的な研究が行われた。 また,昭和41年から7年間井上和子教務技官は貴金属ー遷移金属合金の電気抵抗の研究を行っていた。 このほか、家原力太郎技官は研究室発足当初から実験機器の作成・補修、実験補佐、物品の購入管理などにあたり研究をささえてきた。
平成8年、大学院重点化構想により工学部・大学院の組織が大幅に改組された。主な変更点は以下の通りである。
以上のように、組織は大きく変わったが、実際の運営はほぼ従来の形を継続し、2002年3月現在,スタッフは、教授:志賀正幸(3月31日定年退官) 、助教授:和田裕文、助手:中村裕之、技官:家原力太郎の4名で構成されている。
この他の大きな変化は、創設以来研究室があった工学部6号館から、1999年5月に新しく建設された8階建ての物理系校舎に移転したことである。これは、吉田キャンパス整備計画に沿って行われたことである。その後、大学の方針に変更があり、工学研究科および情報学研究科が平成15年度に1部完成する桂キャンパスに移転することになった。我々、材料工学専攻は平成18年に移転予定である。なお、我々の研究室のあった6号館南部分はすでに取り壊され、やはり8階建ての工学部総合校舎が建っている。
旧工学部6号館
1998年6月撮影
現在南半分は取り壊され、工学部総合館が建っている。
工学部物理系校舎
1999年3月完成 1999年5月移転
位置は旧機械工学教室中庭あたり
量子材料学研究室は南棟1階にある