過去の日記 インデックス
魔女と遭遇 （生後４３４日）
2003,10,31
ようやく風邪も少し良くなってきて、仕事に復帰した。まだ、だるさと、咳は残っている。
さて、今晩カンの散歩に行って、折り返しを過ぎて、帰りがけの竹藪の間を抜ける道に来ると、何やら妖気が漂う。カンはそれを察知したのか、アウ！アウ！と吠えはじめた。
すると、ぼろぼろの作業服のようなものをきた、髭を伸ばしっぱなしの中年男が近づいてくる。かなりアルコールくさい。うわ、嫌な人に出会ったものだ、と思ってよく見ると、彼の輪郭がぼんやりかすんでいる。どうやら、彼は、あちらの世界の人のようだ。
中年男は私たちに話しかけてきた。名前を聞くと、ジャックという。なぜこんなところにいるのかと聞くと、死んでしまったので天国に行ったのだが、けちで飲んだくれた人生だったので、神様が入れてくれなかったのだという。そこでジャックは大きなカブ（カボチャ）をくりぬいて、その中に灯をともし、地上に戻ってきたのだという。今は何をしているかと聞くと、職がないので、しょうがなく、魔女に仕えているとのこと。
私とカンは、ジャックの向こう側を見ると、何やら空中から近づいてくるものがある。
「あっ！」
箒（ほうき）に跨（またが）った、黒い服にとんがり帽子をかぶった魔女である。魔女はジャックに、
「おいっ！どこほっつき歩いてンだよ。仕事だ仕事だ。今日は忙しいんだから。」
と言いながら、持っていた、カボチャをくりぬいたランタンをジャックに渡した。
「やれやれ見つかっちまった。おいら、仕事が嫌いなんだ。特に今日は１年で一番忙しい日だしよ。最近じゃ日本でも仕事が増えちまってよ。」
そう言うと、箒でお尻をはたかれたジャックは、「あばよ！ワンちゃん！」と一言残して、魔女とともに一瞬のうちに消えてしまった。
やれやれ、この間は御犬様。今度は冥界のジャックに魔女か。いろいろあるなあ、と思いながら帰路についた。
たしか今日はハロウィンである。
参った！ （生後４３３日）
2003,10,30
実は、ここ３日間仕事を休んでいる。風邪が悪化して、ただひたすら横になっているばかりの３日間だった。
寝ていても、のどが痛く、だるい。何かしていないと気が紛れず、日記だけは書いた。ところが、その日記のプロバイダーさんの具合がよくないらしく、うまくつながらないことが多かった。また、あまりに暇だったので、ちょっとした悪戯もしてしまった。
今日の午後こそ仕事に行こうと、背広に着替えたのだが、やっぱりだるさが半端ではない。悩んだあげく、電話をして休むことを告げた。その後、カンを中に入れて、一緒に横になると、あっという間に３時間ぐらい眠ってしまった。今日は午前中も寝ていたので、一体何時間眠れるのだろうと不思議な気分になった。
夕方少し楽になった気がしたので、カンを連れて短い散歩に行った。こんな日に一日寝ているなんて・・・と思うような陽気だった。
日本人保存会 （生後４３２日）
2003,10,29
僕が、飼い主や人間たちにいっておきたいことがあるのだけれど、人間と犬は共存共栄していくべきだから、人間の悪口は言いたくないのだけれど、僕たちを展覧会に出すのは別に結構だけれども、人間たちだって展覧会に出ていたって知ってた？
そうさ！今年の春に行われた日本犬保存会の展覧会は、実は、犬たちによる、日本人保存会の展覧会でもあったのさ！ハンドラーはもちろん我々犬たち。引かれて立ち込んでいるのは、我々の飼い人。
当然僕も、僕の飼い主を出展してやった。身長○○○ｃｍ以上○○○ｃｍ以下の部に出展だ。何せあいつときたら、初めての展覧会で、随分緊張していたなあ。
審査は、我々犬たちの中で、長年人間をよく見てきた、ベテランが行う。今回は、柴犬の太郎ベエ先生が審査する。
さあ、僕の飼い人の番がきた。え〜、まず、歯の審査。何！入れ歯が１本入っているぞ！次に毛の審査。う〜ん、少し薄毛になりかかっているなあ。続いて血圧。正常。それから、体重に、コレステロール。あ〜あちょっと数値が悪いよ。次は走ってみて！・・・ダメだよ。すぐ息が切れちゃうじゃないの！ちょっとちょっと、口あけてみて。肺が汚れているよ。煙草吸ってるね。減点〜。やれやれもう少しでレントゲン審査に回されるところだった。
何とか審査終了。成績発表。１席○○さん。やっぱりね〜。体がたくましいもの。２，３，４・・・あれ、うちの人間は？あれ、ブービーだ。それでも一応優良に入ったみたい。ハハハ、。血統はいまいちだし、普段のトレーニングはサボり気味だものなあ。それに甘いものばっかり食べてるし。まあ、次回鍛え直して、出してみるか。
今日も、カンが日記書きました。まさか、犬によって人間が審査されているなんて知らなかった・・・
激闘！対ドラえもん （生後４３１日）
2003,10,28
この間、僕の飼い主が、僕の囲いの中に怪獣を送り込んできた。そいつの名前は「ドラえもん」というらしい。飼い主は、そいつがガラスケースの入っていたのを、クレーンで吊り上げて捕獲したらしい。そして、僕を鍛えるために囲いの中に入れたというのだ。
僕はまず、やつの顔を集中攻撃することに決めた。僕は目があるところを強く噛みつき続けた。それから、やつをくわえて振り回してとどめを刺すのだ。「ドラえもん」の鼻としっぽについていた丸い玉をちぎって捨てた。それからやつの体の皮を食い破って、中の白い綿を外へつまみ出してやった。
どうやらドラえもんはもとの形が分からないくらいになったようだ。そうなるとどうも興味がなくなってくる。僕は囲いの片隅にドラえもんをほっぽっておいた。
ときどき、飼い主が、わざとドラえもんを取り上げようとする。それには強烈に抵抗する。だって、ドラえもんは、もう、僕のものなんだもの。
今日の日記は、カンが特製パソコンで書いたものです。漢字の部分は私が変換しておきました。
魔法の指輪 （生後４３０日）
2003,10,27
今日は何回目かの結婚記念日だったが、私の体調は最悪で、のどは痛く、鼻水は出る、だるい、と風邪の症状だった。
先日、岩波少年文庫の『アラビアンナイト上・下』を読んだ。その中に「アラジンと魔法のランプ」の話が出ていた。今まで、何となく分かっていたつもりだったが、今回、子ども向け（私は子ども向けの本が結構好きだ。わかりやすく読みやすく、エッセンスだけが載っているから。）とはいえ、話の筋を初めて知ることができた。
アラジンは都市に住む怠け者で、不良少年の一員だった。親も見放して、あきらめたところに、魔法使いが来て、アラジンを利用しようとする。言いくるめて、危険な場所に魔法のランプを取りに行かせようとするのだ。しかしこの魔法使いのたくらみは失敗する。アラジンは洞窟の中に取り残されるが、魔法使いが与えた、魔法の指輪を付けていたおかげで、これをこすったところ、魔物が出てきて、この魔物の主人になることができたのだ。そして、ランプやその他のお宝を持ち帰ることができた。しかし、この宝物の価値が分からなかったアラジンと母親は、その後も慎ましく暮らし、アラジンも少しづつ改心し、真面目に働くようになった。その後、アラジンがお姫様に恋をして、最後は実を結ぶという話である。
私が妻にあげた婚約指輪も、ふたりが付けている結婚指輪も、こすっても何の効果もないが、例えばカンのこと一つをとっても、ふたりで楽しめるし、笑えるし、ふたりで考えることができるし、指輪の効果は、実は結構あるのではないかと思う、今日この頃である。
画像は昨年１０月２７日のカン。
静かな日曜日 （生後４２９日）
2003,10,26
私は今日も風邪が治らず、鼻水や咳が出ていた。しかしカンの散歩は、朝晩自転車で出かけた。というのは、妻も頭痛がひどく、散歩がだめそうだったからだ。
午前中は、植物に液肥をやり、ＨＰ（柴犬はな）の更新を途中までした。それからシステム手帳の来年のスケジュールのものを買い、選挙に行った。埼玉県民にとって、ここ１ヶ月で３回も選挙がある。知事選、参議院補選、そして衆議院だ。これでは選挙民も少し疲れてしまう。できたらまとめてやって欲しい。おそらく一番そう思っているのは、選挙の係の人たちだろう（ただ、アルバイト代は結構いいらしい）。
わたしは、選挙は２０歳以降ほとんど欠かしたことがない。１度だけ、Ｋ市の市議会議員選挙に行けなかったことがあるだけだ。どうしていくかというと、政治家たちは、我々が１票の権利を持っていなかったら、我々のことなど相手にしないだろうからだ。今回の選挙は凄まじく低投票率だそうだ。私のようなサラリーマンはあまり行かない。行かないと無視される。熱心に行く人たちだけの政治が行われる。それでは困る。私は、難しいことを考えずに、この人が当選すると、自分に利益があるという人に入れる。それで十分だと思う。行かないよりは。
夕方まではこの上ない素晴らしい陽気が続いた。ただ、夕方から冷たい北東風が吹き始めた。夜は日本シリーズをゆっくり見よう。
画像はカンが勉強しているところ。かなり真面目に取り組んでいる。もう少したったら、カン用パソコンで打ち出された、カンの文章を、この日記にアップロードしていこうと思う。
夕映え （生後４２８日）
2003,10,25
美は一瞬にしてあらわれ、気がつくと消えてしまう。今日の夕映えもその一つだった。
今日は午前中仕事があり、帰ってちょっと休んだ。ここのところの仕事の忙しさからか、または、冷え込みからか、風邪をひいてしまったようなのだ。
夕方カンの散歩に早めに出かけて、帰宅したときに、家から夕映えが見ることができた。今日は１日曇っていたのに、最後に太陽が希有な芸術を私たちに示してくれた。明日は晴れ間が見えるのだろうか。
古代ギリシャの人々は、善にして美なるものを、とにかく追求したという。ミロのビーナスの彫像から分かるように、人間の肉体においても、最も美しい形を求めたという。プラトンは、理想の形（イデア）に人間があこがれる気持ちを、エロスとよんだ。欧米で、「美学」なる学問が成立したのは、彼らの精神文化の源流がギリシャにあるからなのだろう。
日本では、形は違えども、美なるもの、風流なものを求めてきた歴史がある。清少納言が再三にわたって書き記した「いとをかし」とは、彼女の美的感覚による。松尾芭蕉らは「侘び」「さび」に、美の境地を見いだした。
今日、結婚以来使い続けていたカメラが先日の日光でついに使えなくなってしまったので、新しいカメラを買った。ピント自動調節のそれほど高いものではないが、このカメラでどれくらい美しい光景が収められるか楽しみである。
美しいもの （生後４２７日）
2003,10,24
お金があれば美しいものが手にはいるというわけではない。
昨日日光で、素晴らしい光景を目の当たりにして、この世に存在する美しいものは、大金を投じなくても、貧しくても豊かでも、誰でも手に入れられるものなのだなあと感じた。本当に美しいものは自然の中にしかないのだろうから。
何とも形容しがたいカエデの葉のグラデーションは、古来、日本の着物の柄になっていた。先人たちは、この景色に心を動かされ、丹念に観察し、写し取っていったのだろう。
美しいものは、もしかしたら日光まで出かけなくても、私たちが住んでいるこの場所にも、きっとあるに違いない。ただ、日常の喧噪にかき消され、五感が感知できないだけなのかもしれない。よく見てみれば、夕陽に透けるトンボの羽とか、美しいものは転がっている。
ゲーテの書いた『ファウスト』では、ファウスト博士は、悪魔に魂を売り渡してまで、この世で最も美しいものを手にしようとするが、結局過ちに気付いて、天国へ昇る。
『聖書』によると、イエスは荒野で断食修行をしていたところ、サタンが来て、私にひれ伏すならこの世の栄華と権威をやろうと言った。しかしイエスは拒絶し、サタンは去った。（マタイによる福音書）
美しいものを永遠に我がものにすることはできない。たった一瞬、感じられるだけである。
そして、身近な美しいものが見つけられればいいなと思う。
日光・結構・コケコッコウ（生後４２６日）
2003,10,23
今日は、妻も私も休みが取れたので、日光に紅葉狩りに出かけてみることにした。カンは留守番である。
平日だから、週末よりはすいていただろうが、やはりいろは坂周辺は混んでいた。しかし、多少の渋滞は苦にならないほど、素晴らしい天気と景色に恵まれた。
面白いのは、下界から坂を上がっていくに連れ、木々の色付きが増していったこと。そして、戦場ヶ原を超えて湯の湖の辺りになると、もはや紅葉は終わりかかっており、立ち枯れた木々が冬の様相を呈していた。今、真っ盛りなのはいろは坂付近だと思った。
我々は、途中清滝ＩＣを過ぎた辺りの渋滞を我慢したあと、中善寺湖畔に着いた。晴れて、空気も澄み、木々の色付きは、関東平野の真ん中の埼玉の紅葉（１１月中下旬頃）よりも、深い。朝晩の気温差によるものだろうか？
ここで湖畔に降り、散策したあとカレーを食べた。１５００円の高価なものだ。そのあと、湯滝に行った。水の流れと、白いしぶきと、紅葉と、青い空のコンビネーションは絶妙だった。
さて、帰りがけに、金谷ホテルで、立ち寄り入浴した。そんなに広い浴室ではなかったが、磨りガラスの向こうに色づいた木々が垣間見える。素敵なシトゥエーションだった。誰もいなかったので、デジカメでぱちりとしてみた。
湯上がりにこのホテルの喫茶室でお茶を飲んだ。調度品が素晴らしい。かつて昭和天皇も宿泊されたことがあるというだけあるな、と思った。
帰路はやはり渋滞した。帰宅したのは１８時半で、日本シリーズが始まっていた。それにしても今回のシリーズは接戦が多い。すでに３度目のサヨナラゲームだ。
カンも待ちくたびれていたようだったので、早速散歩に行ってあげた。
和の花 （生後４２５日）
2003,10,22
庭いじりを始めて何年か経つが、自分に馴染む草花というものが出てくるから不思議だ。
始めた当初は、あれも植えてみたい、これも植えてみたいという願望が強く、いろいろ買っては、枯らしてしまったことがよくあった。もちろん今でも、思いつきで草花を買ってしまうことはある。しかしもう買わないだろうというものもあるのだ。
私が植えていったもので、飽きが来ないのは、日本風の名が付いているものだ。それらが古来より日本に原生していた植物かどうかは知らないが、素朴な味わいが、とても風流で、見ていて飽きが来ない。特に秋は、素朴な和の花々が美しく感じる。
例えば、りんどう、桔梗、秋明菊、普通の菊（ポットマム）、つわぶき、ホトトギスなどだ。今の季節ではないもので、朝顔、水仙、ギボウシ、芍薬なども私は好きだ。
第一、管理が楽だ。日本の気候風土に合っているせいか、病気もしないし、枯れることもあまりない。私のように日曜園芸（隔週くらい）だと、ありがたい植物たちだ。
今は、つわぶきの黄色がとても鮮やかだ。金色といってもよいくらい鮮やかである。うちの庭で増えすぎて、株分けして職場に植えたこの二つの種は、よく太って、見事に咲いている。それを見ているだけで、秋を感じてしまう。
今日は１日雨にうたれていたが、明日は晴れて乾いた風に美しく揺れることだろう。
お犬の学校 （生後４２４日）
2003,10,21
カンが勉強を習い始めた。きっかけは、先日、日記に書いた、本を書いたドイツの犬を見習ってのことだ。
まず、日本語から練習させる。「あ！」「う〜」「い！」「くい〜ん」「う！」「ガウガウ」てなわけで発音が難しいようだ。それではと、手話に挑戦。何せカンは自分のことを犬と思っていないので、自分でも言葉を話せないのがもどかしいらしいのだ。
右手を挙げたら「あ」。左手は「い」。舌を出したら「う」という感じで教えていく。あかさたな、まではスムースに覚えたが、それからがなかなか容易でない。特にらりるれろ、と、やゆよが困難だった。それでも何とか覚えきった。
さすがカンは、ブリーダーさんのところでも際だってＩＱ（イヌキュー）が高い「あやめ」の子である。
次に文字を教えにかかる。漢字はまず無理だ。人間だって外国人は漢字を覚えるのは難しいという。そこでひらがなを覚えさせる。これに１週間かかった。しかし何とか、文字を見せると、手話で反応できるようになってきた。あとは文章にすることだ。さすがに人間と一緒に住んでいるだけあって、言葉そのものは頭の中に入っている。あとは、それを手話で表現させるトレーニングが大切だ。ようやく、簡単な言葉を、手話で話すようになってきた。
犬と会話ができるなんて夢のようだ。バウリンガルなんて必要ない。ちなみに、カンがよく話す言葉は、「おいしいものをくれ！」と、「外へ連れ出してくれ！」の二つで、当初予想していたとおりである。
そこで、私たちは、犬用の特注パソコンを注文してみた。キーボードが一つ５�兒擁�という、特大キーボードつきパソコンだ。１００万円するといわれたが、値切って５万円でやってくれることになった。今、到着を待っている状態である。これが来れば、いよいよ『柴犬カンの大冒険』の執筆が始まる。
画像は、カンが言葉を話すトレーニングの最中のところ。
気分の問題 （生後４２３日）
2003,10,20
１０月、１１月は忙しいと覚悟していたが、予想通りだ。特にこの１週間はあきらめモードだ。でも今日は、途中で仕事を投げ出して帰ってきてしまった。カンが待っていると思うと、帰宅しようと思う気持ちが強くなるからだ。頭の中で計算して、何とか期限中に片づけられそうだと感じたので、先延ばしできることは、気分が乗らないのに無理して今日やる必要もないだろうと思ったのだ。
やる気が湧かないのに無理してやると、ミスが多くなり、精神的疲労度の蓄積率も通常の時に比べて倍以上だ。この疲れをとるために、時間をとって休まねばならない。結局、効率的ではないということになろう。今日残した仕事も、やる気が湧いてきたときにやれば、目にもとまらぬスピードで、あれっ、という間に片づくのだろう。
私は気分に左右されやすい。コーヒーは買ってきた水で入れる。水道水のものよりおいしいような気がする（確かに埼玉の水道水はあまりよくない）。
どうもお腹の具合がよくないときは、「強力わかもと」という薬を飲む。便秘や下痢が治るような気がする。
これらはみな気分の問題。ブランド志向も同じこと。分かってはいるけど、「気分の問題」をバカにしちゃいけませんよ。
今日のカンはやけに活発だ。どこかねじが一本抜けているみたいに走り回る。どういう「気分」なのだろうか？
画像は先日昼間撮影したカン。
落ち葉焚（た）き （生後４２２日）
2003,10,19
快晴。一点の曇りなし。清々（すがすが）しい１日だった。
しかし私といえば、昨日の東京遠征のツケで、今日は１日パソコンに向かって持ち帰りの仕事をしなければならなかった。外出といえば、カンの散歩２回。煙草を買いにちょっと出ただけのつごう３回のみ。あとは庭に出て、そろそろ終わりに近づいた夏の草花を処理する作業をしただけだった。
仕事が一段落ついた４時半ころ、いつもより長めのカンの散歩に出かけた。日は西にだいぶん傾いてはいたが、日中の暖かさがまだ残り、薄着で十分対処できる気候だ。川沿いの道を進み、途中ほとんど行かない道へと舵を切っていく。だから、途中まで行って、行き止まりだからと引き返してくることがあったほどだ。
途中、畑で農夫が落ち葉を焚いている。白い煙が辺り一帯に立ちこめて、むせるくらいだ。鼻が敏感なカンは、くしゅんくしゅんとやっている。
♪さざんか、さざんか咲いた道 焚き火だ焚き火だ 落ち葉焚き♪
この曲にはまだ１ヶ月ほど季節が早くて、北風ピープー、ではないし、焚き火にあたりたいほど寒くないが、山茶花（さざんか）は、早咲きのものはすでにちらほら咲いている。
日が暮れてきたので家に向かうことにしたが、時間があればもう少し歩きたい、そんな一日だった。
画像は公園でボール遊びをしているカン。
マーラーを聴く （生後４２１日）
2003,10,18
今夜、東京都心、アークヒルズにあるサントリーホールで、東京交響楽団演奏による、マーラー「交響曲第２番〜復活〜」を聴いた。友人のＹさんにチケットを取ってもらい、ふたりで出かけた。Ｙさんは市民オーケストラでチューバを吹く、音楽青年で、一度よいコンサートがあったら誘って欲しいとお願いしてあったのだ。
少し早めに出かけて、新宿の街をぶらついた。コーヒーカップやら衣料品やらを伊勢丹中心に見てみた。伊勢丹はバーゲンでもないのに大変な人出で、しかも価格は驚くほど高いものが売れていく。本当に不況かよ、と不思議に思う光景だった。埼玉では降らなかった雨のせいで、デパートに人出が集中したのかもしれないが。
さて、Ｙさんと待ち合わせたあと、地下鉄に乗って、溜池山王駅で下車した。なにせアークヒルズなど一度も来たことがない。ちょっとしたお上りさん状態だ。私は、恵比寿ガーデンプレイスもお台場のパレットシティも行ったことがない。
アークヒルズ周辺は高層ビルが建ち並び、大変整備が行き届いていた。
さて、日本最高峰の音響を誇るサントリーホールに着いた。程なく演奏が始まった。約１時間半、５つの楽章が次々と演奏される。テーマはやはり、西洋音楽らしく神との対話。最後の方には佐藤しのぶさんなどの歌と、５０名以上の合唱隊を交えての壮大な交響となった。
音楽は、洋の東西を問わず、古来、宗教的な儀式の補助的役割を担ってきた。しかし、近代以降（バッハ以降か？）、音楽そのものが主人公になっていった。そこら辺の難しさを感じた。テーマには宗教色が残っているのだけれども。あえていえば、指揮者があたかも神の代理を演じているように見えた。一方、技術的なことは私には分かりかねるが。
さて、長い拍手で幕を下ろした演奏会のあと、赤坂見附まで歩いて、途中ラーメンを食べた。ブッシュ氏の滞在する迎賓館が近くにあるせいか、警察の警備が目についた。
また、機会があったら、音楽やそれ以外も含めて、いろいろなところに出歩いてみたいと思った。
有名になりたい！ （生後４２０日）
2003,10,17
昨年の今日、カンは雑誌の取材を受けた。「ｓａｉｔａ」という生活情報誌で、ブリーダーさんのところに取材があったので、カンが応援部隊として里帰りしたのであった。
女優の吉本多香美さんが柴犬の写真を撮るというコーナーで、カンやクロベはちょうど生後２ヶ月弱で、かわいい盛りだったので、多くのカンの画像を載せて貰った。
私たち飼い主は仕事で取材現場に立ち会えなかったが、結果として２回にわたり、カンとクロベがメインで雑誌に掲載された。
雑誌やテレビで取り上げられたいという願望は、私の心にある。有名になりたいのか。人より上回りたいのか。よく分からない。一方で、吉本さんのように、有名になりすぎると、日常生活が不便なのではと思ってしまう。静かにしていたいときにそれができなくなってしまうということもあるだろう。
結局アンビバレント（正反対）な感情が心に同居しているのだ。でも、今の私は、何か、何でもいいから（悪いことは除く）、この世に残したいという気持ちが、日に日に強まっている。仕事でも、仕事以外でもよいから、世間に受け入れられる仕事をしたい。そして結果として有名になるなら、それはいたし方ないことだと覚悟している。・・・簡単にそうはならないだろうけど。
画像はカンと吉本さん。
透き通るような青空 （生後４１９日）
2003,10,16
午前中代休で休みだった。外の空気は澄み、空気も乾き、適温でとても過ごしやすかった。
空を見上げると、美しい青空だ。少しばかり白い雲が太陽を覆うときもあったが、すぐまた日差しが帰ってくる。
庭に出て、先日植え替えた、まだ小さなパンジーなどの苗に液体肥料を与えていると、頭頂部に違和感を感じる。あれっと手をさしのべると、小さな黒い物体が空中を漂っている、トンボである。秋真っ盛りなのだ。
たまたま午前中休みだった妻が、カンの散歩に行こうよ、というので、いつもの「桜公園」へ出かけた。公園には、数組の幼児を連れた母親たちが、砂場やベンチで、ゆったりと時を過ごしていた。テニスボールを持っていったので、ひとしきりカンに「持ってこい！」遊びをしてあげた（画像）。いつもは留守番している時間で、囲いの中で寝ているためか、または、日中はまだまだ強めの日差しが照りつけるせいか、カンの動きはいつもより鈍かった。２０分くらい遊んだあと帰宅したら、妻は今度はカンを洗おうという。暖かいしちょうどよいと思い賛成した。
相変わらず、耳の辺りに水がかかるとカンは「ふい〜ん」と鳴いたが、さしたる抵抗もなく、よい匂いのカンになった。
仕方なく午後は仕事に行ったが、できたら一日ゆっくり過ごしたい、素晴らしい陽気だった。
ゆりかご （生後４１８日）
2003,10,15
夕方、カンのお散歩の帰りに、獣医さんのところでフィラリアの薬を貰いに行った。体重を計ったところ、９．７ｋｇ。なんとまあ、秋になって４〜５００ｇ増えたことになる。確かにこのところの食欲は凄い。夏の間など、朝あげたドッグフードは夕方になっても手つかずだったことが多かったのに、今は、朝晩カップ２杯のドッグフードに、煮干し３きれ、さらにジャーキーまで平らげている。外へ出すものもたくさん出しているのだが、太るのも当然だろう。
獣医さんの待合室で、生後３ヶ月の予防接種をしに来ている雑種の子犬がいた。初老の夫婦に連れられていたが、彼らは見るからに紳士淑女であった。聞いてみると、近くの公園に捨てられていたのだという。このような優しく穏やかな飼い主さんたちに貰われて、この雌犬は幸せだなあと思った。
少し震えているようだった。カンが怖いのか、それとも２度目の予防注射ということで、トラウマになっているのか、もしかしたら、かつて捨てられた経験から、飼い主以外の人間が怖いのか。分からなかったが。
捨てられるというのは、犬も人間にとっても怖いことだ。獣医さんに寄ったあと、ちょっとした買い物をするため、カンをそばの公園のベンチに繋いでおいたのだが、私が離れるにつれ、寂しそうな顔を見せる。そして、２分後に戻ってきたときの嬉しそうな顔といったら・・・。
画像は昨年１０月１４日のカンだ。ゆりかごのようなベッドに包まれ、とても幸福そうに見える。私は、自分がゆりかごに乗っていた頃のことを思い出そうとしても、どうにも思い出せない。妹が寝ていたベビーベッドに、くるくる回り、吊ってある音が出るやつは、かろうじて記憶がある。その妹も１児の母だ。難しいことは何も考えず、ただ、ベッドで横になり、愛と布団に包まれた経験があれば、犬も人間もすくすくと育っていくのだろうと思う。
オリエント急行の夜 （生後４１７日）
2003,10,14
今日は、午後から雨が降り、冷え込んだ。１９時の時点で外気温１２℃。寒いわけである。
こんな日には夕食後温かいコーヒーがおいしい。夏に購入した、リチャード・ジノリ社製のオリエント・エクスプレスという種類のカップで飲んでみた。画像は大きく見えるが、実はデミタス（ちいさいもの）である。この種類は、コーヒーカップだけでなく、皿など、本場のオリエント急行で使われている。現在はかつてアガサ・クリスティーが『オリエント急行殺人事件』を書いた頃に比べると、短い距離を走っているのだが。
そのオリエント急行は、１８８３年１０月に初運行され、パリからルーマニア経由でイスタンブールまで走った。列車内の豪華な装飾、食器、一流シェフによる食事、一流スタッフのサービスなどはヨーロッパの上流階級の人々など多くの人に愛され続けた。一度廃止されたが、１９８２年に復活して、現在に至っている。
最近鉄道の旅にいっていない。昔から自分で時刻表を作成してしまうほど鉄道少年だった私にとっては、旅といえば鉄道だ。そして車内販売がある電車では、必ずコーヒーを頼む。最近は、車や航空機の旅が増えてしまい残念だ。近いうちに鉄道の旅に出てみたい。
そんなわけで、このカップでコーヒーを飲んでいると、夜の田園地帯を走る寝台列車、雪が降りしきる中を行く汽車、夕陽に光る海を横目で走る特急「いなほ」、岳人たちを乗せ八ヶ岳の麓を走る「急行アルプス」などが、胸の内を走りすぎていくのである。
ＰＳ…日記のプロバイダーの関係で１日以上日記が見れませんでした。
鱗（うろこ）雲 （生後４１６日）
2003,10,13
今日は１日のうちに季節が変わる不思議な天気だった。
カンを我々の寝所に入れてはじめて一緒に寝て、起きたあと、妻が散歩に出かけると随分なま暖かく、夏の朝のようだったという。ただ、このあと雨の予報が出ていたので、ドッグランは中止し、デパートへ買い物に行くことに決めた。カンは留守番だ。
１０時半頃大宮に着く頃には、厚い雲が空を覆っていたが、その様子は台風が接近しているときのようだった。デパートでは、妻の誕生日の贈り物として、キーホルダーとエプロンを買った。これで、妻の誕生プレゼントを何とかしなければ、という心の負債は解消された（なぜなら私の誕生日に毎年良いものをもらっている）。私は綿のズボンを買った。
茄子のミートソース・スパゲティー（偶然ふたりが同じものを選んだ）を食べた。これがなかなかの美味だった。さて、駐車場に向かおうとすると、かなり激しく雨が降っている。駐車場まで５分ほど歩かなければならないので、仕方なく傘を買った。
帰宅してからも夏の驟雨のような雨はしばらく降り続いたが、やがて止み、陽が差してきた。気温はみるみる下がり、カンの散歩に行った５時前後は完全に秋の空気に入れ替わっていた。空を見上げると、秋の鱗雲だ。天も高い。心が透き通るような気分になった。
散歩から帰ると、今度は冬によくある北西風が吹きすさび始めた。私たちのぼろ屋は、風で揺れる。
一体どういう天気なんだ？体がついていけない。明日はどうなるのだろう。
画像は、家の中に入って、興奮して駆け回るカン。
柴犬「はな」１歳に （生後４１５日）
2003,10,12
今日は「はな」の誕生日。早いものだ。もうあれから１年経つ。私の義父母の家でも柴犬が欲しいということで、ちょうどカンが我が家に来てすぐ生まれた犬のうち１頭を、同じブリーダーさんから譲り受けたわけだ。ということは、先日埼玉展で会うことができた「さくら」ちゃん。義兄の奥さんの実家の「もぐ」ちゃん。Ｄさんのところ行った「ぽち」ちゃん。…いずれもメス…も今日が誕生日ということになる。それぞれの家で盛大な記念式典が催されていて、普段食べたことのないような甘くて高価なものを、犬たちは口にしていることだろう。
カンを連れて「はな」に会いに行った。相変わらず２頭で押し合いへし合いするが、「はな」の方が優勢だ。…ちょっとショック…。でもそのあと２頭で同じバケツに顔を突っ込んで水を飲んだ。そして、そのあと「チュッ」とキスをした。仲がいいのだと思う。
「はな」は来年春の埼玉展に出展するかもしれない。また、カンとの間に子犬を作ろうかという話もある。もちろんブリーダーさんに相談してのことだと思うが。
私は、妻の実家からカンを連れて土手沿いの道を散歩した。今日は湿気があって私もカンもあまり走れなかった。だから、普段４０分位の道のりが５５分もかかってしまった。
明日は晴れたら、再びドッグラン。雨だったらなし。予報は雨だという。
画像は今日の「はな」。
３位入賞…ヘラブナ釣り （生後４１４日）
2003,10,11
本当に久しぶりにヘラブナ釣りに出かけた。その理由は、妻が仕事でいないこと。このところ腰痛が幾分おさまっていること。気分転換を図るため。以上である。
ヘラブナ釣り（以下ヘラ釣り）は朝が早い。５時半には起きて、６時半には白岡町の「隼人大池」に着いた。今日は土曜日なので、競技大会が開催される。私も参加してみた（入場料込み３０００円）。この釣り場は、管理釣り場といって、釣り堀を大きくしたものだ。中の魚はもちろん放流したものだ。
ヘラブナとは、その起源から、釣られるために改良されたという。祖先は琵琶湖の源五郎ブナだそうだ。釣った魚は基本的に池の中に戻す。だから、魚が傷つかないように、ヘラブナ用の針には「カエシ」がない。えさは、お麩を砕いて、サナギ粉を混ぜたものが一般的で、他にワラビ粉を錬ったものなどが使用される。
実はこのヘラ釣りは、ビギナーからベテランの技術の差が如実に表れる。従って、毎日通っている人、訓練された人が強い。私は、この正月に行って以来９ヶ月ぶりで、勘は鈍っていた。大会は７時から３時まで。釣った魚をフラシ（大きな網）に入れ、その合計重量で競う。
それにしても今日の魚はやる気がなかった。始めて１時間半、全く釣れない。そこで私は、真冬によくやる、「段差の底釣り」という方法に変えてみた。私はこの釣り方はそこそこ自信がある。そうしたらぽつぽつ釣れる。周りのベテランたちは、夏の釣りにこだわって、苦戦している。
そしてとうとう３時。計ってもらうと、２９匹、２１．０ｋｇと言う結果だった。
表彰式ではやはりみんな釣れていなくて、私が約７０名中３位に入った。今までこのような大会に結構出たことがあるが、ベスト３は初めてだ。久しぶりなので、無心に釣ったのがよかったと思う。そもそも、このところ精神的に疲れ気味で、気分転換しようということで釣りに行ったわけだから、上出来すぎた。賞品は、柿、みかん、お菓子だった。
帰宅後、カンの散歩に行った。これからも余裕があったら、ぽつぽつ行ってみることにしよう。
画像は、デジカメを持っていって、釣れた魚を撮してみたもの。
一夜明けて （生後４１３日）
2003,10,10
昨年１０月９日の夜、カンが我が家にやってきた。夜鳴きもせず朝を迎えた。とにかく無事夜が過ぎ、えさも食べたのでホッとした。１０月１０日の午前中、私は休みを取ってあった。カンの様子を見るためだった。
９時頃、とても良い天気だったので、カンを庭に放してみた。ちょこちょこちょこと駆け回る。とても愛らしい。縁台の下の潜り込んだり、草の匂いを嗅いだりしていた。しばらくして、大便をした。小さなウインナーのようだった。これで、大便も小便もして、寝て、犬のお仕事を全部我が家で行ったことになる。匂いを付ければ、ここが自分のテリトリーとして認識し、安心するだろうと思った。
カンは庭から駐車場の方へ降りる段差が怖くて、一定のエリア内しか行動しなかった。しかしそれは１週間も持たなかった。ほどなく、段差をぴょんと飛び降り、道路の方まで飛び出ていきそうになったので、リードを付けずに外へ出すことはできなくなっていくのである。
その日の午後は妻が仕事を休み、翌日は妻が１日休んだので、土曜日からの３連休を入れると（水曜日の夜カンが来た）、５日間は、カンにしっかりついていられる体制を取った（ちょっと過保護か）。その後これと言った問題もなく、１週間後に、雑誌の取材で再びブリーダーさんのところへ３晩預けるまで、カンは無事に過ごすことができたのである。
カン！我が家に来て１周年！（生後４１２日）
2003,10,9
昨年１０月９日、夜７時過ぎ、私たちはブリーダーさんのところにいた。
母犬あやめ、そして雌柴ちゃん、クロベらと遊ぶカンの様子をデジカメに収めたあと、カンを貰い受ける段階となった。ブリーダーさんからドッグフードを少々、あやめの匂いのついたぬいぐるみを少々渡され、基本的な注意事項を聞いた。
我々は、カンを運ぶための段ボールと、それに敷くタオルだけ持ってきたので、カンをそこに入れた。ブリーダーさんはわざわざ車まで見送りに来てくれた。わずかな期間とはいえ、ともに過ごしたのだから、離れるとなると寂しい思いがあるのだろう。
丁重にお礼を言い、車を出した。運転していた私はいつもより手のひらが湿り、緊張を感じていた。信号で止まるたび後部座席で、妻に抱かれている、カンの入った段ボールをのぞいた。カンは寝ることなく、のそのそと姿勢を変えていた。
慎重に運転して我が家についた。カンを、作ってあった室内の囲いの中に入れ、水とえさをセットしておいた。
我々が、近くの弁当屋で買い込んであった弁当を食べている間、カンは囲いの内周を見て歩き、脱走できないと知るや、囲いをつなぎ止めてあったビニールテープをかじり始めた。しばらくやって無駄と分かったのか、犬用ベッドに体を投げ出して眠り始めた。
しばらくしてブリーダーさんから電話が来た。わざわざ様子を聞いてくれたのだ。ところが、まさにその電話の最中に、カンが「ゲッゲッ」と吐いた。白い嘔吐物に混じって犬の毛がだいぶ入っていた。妻は思わず「あっ！吐いた！」と声をあげた。私も驚愕し、心配した。
しかし、ブリーダーさんとの電話を切ってしばらくすると、カンが金属の入れ物に入れたドッグフードを食べ始めた。どうやら、出すものを出して、お腹が減ったらしい。それにしても今のカンと比べると、随分入れ物が大きく感じられる。最初の頃は前足が入れ物の中に入ってしまうこともあった。
我々はホッとした。ブリーダーさんは、吐いても特に心配はないです、と我々を安心させてくれていたが、入れてあったえさの半分くらいは平らげた。それから水の入った入れ物の方に向かい、ぺちゃぺちゃぺちゃと水を飲んだ。その姿の愛らしいこと！
元気の出たカンの様子を見て、囲いから出し、ひとしきり抱いた。そして１１時過ぎに囲いに戻した。その晩私は１時半まで起きて、ときどき１階に降りて、カンの様子を見た。床についてからも眠りは浅く、早朝５時半には目を覚まし、カンの様子を見た。ベッドでぐっすり寝ていた。
こうして初日の晩が過ぎた。不思議なことに、一番恐れていた夜鳴きをしなかった。後日ブリーダーさんに聞いてみると、我々が何回もカンに会いに行っていたので、カンが安心できたのでは、と言う。そうだとすれば、しつこいくらいカンに会いに訪れたことが、少しは役に立ったのかなぁ、と思ったのである。
ホマルハウト （生後４１１日）
2003,10,8
秋になると、南の夜空に、輝く１等星がある。それが、「南の魚」座のホマルハウトである。
この星の周りには、あまり強く光る星がないので、この星はよく目立つ。そして、なぜか孤独で、寂しげに光っている。私は、幼い頃からこの星が好きだった。そして、幼い頃から、孤独で、せつなくて、寂しいのだけれども、人々の中に入っていくのは嫌だったのだ。
小学校高学年くらいから、天体に興味を持つようになった。望遠鏡も買ってもらった。自作の望遠鏡も作ったこともある。市立の天文台の、天体観測教室に通ったこともある。真夜中に起きて、天体観測をした。二重性、木星の縞。土星の輪。星雲、星団。月のクレーターをカメラに収めたこともあった。
ただ、いつでもひとりで行動した。誰かと一緒に観測した記憶はない。基本的には、今でもひとりでいるのが好きだ。ひとりでできる楽しみを見つけ、それに没頭する。本を読むのが、そのさいたるものなのだけれども。
今日は十三夜だそうだ。別名、「豆名月」ともいわれる。これは、十三夜に豆を供える地域が多いことに由来する。
今夜の関東地方は、夜半を過ぎて雲が切れてくるらしい。ホマルハウトも今日は月という相棒を得て、少し寂しくないかもしれない。
金木犀…きんもくせい （生後４１０日）
2003,10,7
街の所々から、金木犀の香りがする。本格的な秋を告げる香りだ。
我が家の庭にも金木犀があり、年々花数が増し、匂いもはっきりと感じられるほどになった（画像）。庭に植えてから２年間は、花が咲かずじまいだった。昨年、少しだけ咲き、今年は一気に増えた。この木は、ホームセンターの片隅にほおって置かれていた、安物だった。それでも、時が来ればしっかり成長してくれる。
植物を育てていると、すぐには結果が出ないことが多い。ゆっくり、あせらず、待つことが大切だ。時には、植物の存在を忘れてしまうことすらある。それでも、最低限の管理さえ怠らなければ、植物の方は応えてくれるものだ。
人間もきっと同様だ。あせって結果を急がない方がよい。何事も気長に取り組むことだ。ただ、チャンスだけは逃さないようにしないと。
今日、職場から見える田圃（たんぼ）の様子を眺めると、半分くらい刈り取られている。いつの間に？そして、藁が唐傘のようにまとめられていて、風情を醸し出している。
「秋だなあ。」と思った。
パンジーなどの苗を、昨日、育苗器からポットに移し替えた。１２月の声を聞く頃には花を付けていることだろう。草花の持つ力を信じて、忘れてしまわない程度に管理することにしよう。
ふたり仲良し （生後４０９日）
2003,10,6
毎週、月曜日が来ると憂鬱だ。しかし、今日はそれほどでもなかった。１日の勤務は忙しかったけれど、スムースに仕事を進めることができた。今日に関しては体調が良かったのだろう。
ただ、油断ならない。特に今週は遅くまでかかりそうな仕事が２件ある。あと４日。マイペースで行こう。そうすれば念願の３連休だ。妻がそのうち２日間仕事やらで出てしまうので、何をしようか思案中である。何もしないというのも、当然選択肢にあるのだが。
今日、調子が良かったのは、昨日、柴犬をいっぱい見てきたからであろうか。
そういえば、昨年の１０月６日は、カンの兄弟犬「やまと」が、兄弟の先頭を切って、もらわれていった日であった。私はその情報を聞きつけて、のこのこ「柴犬のおやかた」さんのところに出かけていった。その３日後にはカンを貰いに行くことが分かっていたにもかかわらずだ。柴犬見たさが、我慢できなかった。そしてその日はちょうど昨年の埼玉展が行われた日でもあった。「やまと」の飼い主さんのところでは、今頃盛大な１周年記念パーティーがとりおこなわれていることと思う。相当溺愛しているようだからだ。
さて、画像はカンの兄弟犬、右がクロベ、左が雌柴ちゃん。昨年１０月６日撮影。兄弟犬の中で、とりわけ仲が良かった２頭。
秋季埼玉展観戦記 （生後４０８日）
2003,10,5
今日も素晴らしい秋空に恵まれた。
そんな中、越谷市のしらこばと水上公園で行われた、日本犬保存会の秋季展覧会に、昼前から観戦に出かけた。着いたときは１審が終わって昼休み中。リングはアスファルトの反射熱でかなり暑く、犬たちも大変そうだ。
今日はカンは参加せず、家で留守番。はなの姉妹犬「さくら」や、カンと父犬「三郎」が同じ黒柴の「そら」ちゃん。いずれもメス。そして、ストランドさんの飼い犬「どん」ちゃんが出展していた。ブリーダーである柴犬のおやかたさんのマイクロバスのまわりにみなが陣取っていた。初めてお目にかかった人にはご挨拶をした。途中、クロベの飼い主のＵさんご夫妻も見学に来られ、ご挨拶をした。
結果は、なかなか難しかった。やはり、専門的に育成している人々にはかなわないのだろう。「さくら」ちゃんは毛の生え替わる時期で余計にそうだった。ただ、いつもホームページ上の画像でしか見れなかったワンちゃんたちに会えて、とても楽しかった。
やはり、この場に来ると、４月の展覧会のことを思い出す。口を開けることがどうにもできなかったカン。きっと次に出しても難しいだろう。ただ、私の希望としては、妻の反対を押し切って（説得して）もう一度は出展してみたい。カンは今、毛が抜けていて、これから生えてくるだろうし、少し情緒不安定になっている（最近無駄吠えが多くなった）。いろんなことが落ち着いたら、時機が到来するだろう。
画像は、左、「さくら」、右「そら」。いずれも若一雌の部に参加しているところ。
１０月の風 （生後４０７日）
2003,10,4
今日は仕事があったが、その途中、建物の外へ出てみると、とても心地よい。ひんやりとした空気に柔らかな陽光が降り注ぐ。「ああ、こんな日に仕事とはなぁ。」と思いつつ持ち場に戻った。
日本では、１年のうち５月と１０月が最も美しい季節だという。確かに、暑からず寒からずで、季節の花々が咲き乱れる。と言うことはそれ以外の季節は、寒かったり暑かったりだということで、良い季候なのは１年の６分の１に過ぎないのだということになる。
今日はそんな貴重な一日だった。
夕方、辺りがまだ暗くなりきらないうちに散歩に出かけた。明るさが残っているときは川沿いの道を行く。何頭かのワンちゃんや、ジョガー、散歩の人たちとすれ違った。あまりの気持ち良さに、通常の３．８ｋｍコースに、プラスして５００ｍくらい追加して歩いてしまった。ここのところ、急に仕事が忙しくなって、やや疲れ気味であるが、たまった体内の毒素が流れ落ちるような気分がした。
明日もまたゆっくり時間をかけて歩いてみたい。
画像は、ジニア・リネアリスの中で匂いを嗅ぐカン。
人間なんてららららら （生後４０６日）
2003,10,3
犬になってしまったのか、犬だったのが、人間になる夢を見たのか、定かではないが、私という意識が確かにある。しかしまあ、意識というか、自我というか、どうしてそんなものができあがってしまったのか。しかも、怪物みたいに。
ありとあらゆるものは、ただ人間の意識の中で生じ、滅するとする、唯識（仏教の考え方の一つ）…ゆいしき…の考え方もあるし、ハイゼンベルグという、ノーベル物理学賞を取った科学者は、「不確定性原理」といって、物質の究極の根源の姿は、波でもあるし、粒子でもあり、見るものの主観にゆだねられる、という考え方もある。
だから、Ｒ．Ｄ．レインのいうように、空想も、現実の一つである、との考え方も、その通りかもしれない。だから、私が日記に書いた話は、空想という現実なのだ。
もしかしたら犬たちは、あくせく働き、いろんなものに拘束されている人間たちを見て、「哀れ」と思っているかもしれないのだ。
犬追物…いぬおうもの （生後４０５日）
2003,10,2
犬になって１ヶ月ばかり経ったある日の朝、目を覚ますと私は、荒涼たる平原の中にいた。一体ここはどこなのか？私はその辺りを歩き回ってみた。どうも感じは、今までいた関東平野に似ている。しかし、風景は全く別物で、遠くに集落らしき一角があり、そのまわりに畑が広がっていた。しかし、大部分は草が生い茂った荒れ地と、森がまだらに点在していた。
すると人間の声がする。「ここぞ！」烏帽子帽をかぶり、和服を着た男たちが私を追いかける。ついに私は捕らえられた。そして男たちは、私を木の柵でできた囲いの中に投げるように入れた。同じように、収容された囲いの中に、大きいのから小さいものまで１０頭ぐらいの犬がいた。なぜか、日本犬らしきものばかりであった。
その収容所で出されたえさはひどいものだった。骨ばかりの魚と、よく知らない穀物ばかりだった。そして、体の大きいここの大ボスが、「わしが最初に食うのじゃ」と、妙に仰々しい口をきいて、私を威嚇した。しかしその犬も何日かして、烏帽子帽の男に連れて行かれた。
「あいつはどこへ行ったのかね。」と胡麻の入った犬に聞いてみると、「いやぁ、我々は殺される運命なんだよ。人間が放つ矢の標的にされるんだそうだ。」という。嘘でしょ、まだ死にたくない。生きて人間に戻れる日が必ず来るはずなんだから。
ちょっと気になったので胡麻犬に聞いてみた。「ところで今、人間の世界で一番えらいのは誰だい？」
「北条高時様だろう。でなきゃ京都の天子様かな。」
なるほど、私は鎌倉時代にタイムスリップしてしまったようなのだ。私は昔、歴史の教科書に書いてあった、「犬追物」という武芸の訓練を思い出した。犬を放って、それを馬に乗った武士が矢を放って殺すというものだ。さては、我々はそれ用に捕らえられたということか。
いよいよ私の番の日が来た。私は数人の武士に囲まれる中、こんな野蛮な連中に殺されてなるものかと、必死になって逃げた。しかし、私を取り囲む輪は小さくなるばかりだ。ついに、髭を生やしたいかにも教養がなさそうな関東の地侍が、私にめがけて矢を放った。逃げられるすべもなかった。
「ぎゃあああ〜〜〜」と大声を張り上げたが、私の胸に矢が刺さっていくのが分かった。
「あぁ〜〜〜」私は目が覚めた。そこは人間用の布団の中だった。
「夢か。」ぽつりとつぶやいた。ホッとした。やっぱり犬になっちゃうなんて、あり得ないよな、と思った。しかし次の瞬間、私はふと疑問を抱いた。
今、こうして目が覚めていると思っている状態が夢なのではないのかしらと。
変身 （生後４０４日）
2003,10,1
ある朝起きると、私は犬になっていた。私の目の前に長く伸びた口吻と、黒い鼻が見えた。皮膚からは３ｃｍほどの黄土色の密集した毛が全身に生えていた。お尻からは、見事な巻尾がくるりと巻いているのが分かった。手は、指がなくなり、黒い肉球と化していた。
私は蒼ざめ、すぐ家の中を見た。妻が、朝食の支度をしているのが見える。私は、妻を呼んだ。
「助けてくれ。おれはここにいるんだ。カンの囲いの中だよ。」
すると妻は、ガラス戸を開け、
「ちょっと待っててね、もうちょっとしたらお散歩に行ってあげるから。」
と言う。
「違う、違うんだ・・・」どうやら私の声すら、犬の鳴き声になってしまっているようだった。
悲しくて、何も考えられなくなると、無性に腹が空いてきた。私はアルミ製の容器の中の褐色のドッグフードをのぞいてみた。それから、思い切ってそれを口にしてみた。不思議なことに、手よりも先に自然と口が容器に向かった。一口食してみると、これが案外おいしく感じられる。人間だったときには考えられないことだ。半分くらい平らげると、尿意を催した。妻は私に首輪を付け、私を外に連れ出した。私は、恥ずかしかったが、犬がするように片足をあげて用を足した。
散歩から帰ると、男が植木鉢に水をやっていた。誰だ？私はじっとその男を見つめていると、その男の面影に、私が囲われているところにいた、柴犬のカンが見て取れた。さてはカンのやつ、おれになりすましてやがる。悔しかった。
茫然自失の中、犬になって１週間ほど経った。何かの「はずみ」があれば、きっと元に戻れる。しばらく辛抱しよう。そう心に誓っていた。ところが、だんだん手の使い方、日本語の話し方が分からなくなってきた。焦る一方で、犬であることの生活に慣れてきた。１日仕事にも行かず、のんびり過ごし、鳥の声を聞き、虫たちのダンスを眺める。風の匂いを嗅ぎ、日光浴をする。
「このまま、犬のままでもいいのかなあ。」そんな思いが胸の内をよぎるようになってきたのであった。
