芝大門クリニック_ページトップ_タイトル画像

  TOPへ戻る  クリニック紹介  診療案内・初めて受診するには  アクセス・交通案内

クリニック紹介

診療案内・初めて受診するには

アクセス・交通案内

低出力レーザー治療について

 集中治療コースのご案内!

掲示板

診療相談など

体験記

患者さんから寄せていただいた慢性痛などの闘病体験記

過労性疾患の特集記事など




リンク


  

くび肩.net

院長・渡辺譲二による慢性痛についての専門サイト

新小岩わたなべクリニック

当院と医療・研究面で連携しています。過労性疾患、慢性痛、頸肩腕症候群、肩こり・首や肩の痛みなど。診療掲示板・労災掲示板も充実。




トップページへ戻る

「過労性疾患の記事」トップに戻る
 

職業性の頸肩腕障害100万人?

重症度を正確に診断することが治療の出発点

東京・芝病院神経内科
渡辺 靖之

40年ほど前の高度軽済成長期,キーパンチャー,電話交換手,タイピスト,スーパーのレジなどの女性に大量の頸肩腕障害が発生しました。

首・肩・腕などがひどく凝ったり,痛くなつたり,しびれたり,疲れが強くでる病的な状態です。

ピアニストの手指けいれんなどは古くから知られた職業病でしたが,爆発的に職業性頸肩腕障害がおきたのは日本が最初でした。「先進国に追いつき追いこせ」のかけ声のなか,働く女性が増え,無防備に過酷な労働をしいられた結果です。

その後,企業側も一定の改善策をとるようになり,頸肩腕障害の労災認定は百人ほどに減りました。

アメリカでは毎年25万人が

ところがここ数年,アメリカで毎年25万人ずつ新しい職業性頸肩腕障害の患者が生まれているという統計が出て,世界の注目を集めています。総計200万人が治療を受けているといいます。

アメリカの医療は私的保険ですから,治療を受けるのに保険会社の認可が必要です。そのため,保険会社の統計によってこのような実態がわかったのです。

日本では仕事からくる頸肩腕障害であっても,多くは健康保険で治療したり鍼灸などの治療院にかかったりしていることが多く,統計の数字として表れません。

しかしアメリカの統計を当てはめてみると,職業性の頸肩腕障害の人が100万人くらいはいるのではないかと考えられます。

訴え多いが診断むずかしく

職業性頸肩腕障害のなかでも,痛みやしびれが手指や腕に限られているもの(手指健鞘炎,上腕骨顆炎,胸郭出口症候群,手根管症候群など)は,整形外科的疾患として,比較的問題なく診断できます。

ところが,首の後ろから背なか・腰・足までとか,のどから腕までなど広い範囲にわたってコリ(筋硬:きんこう)や圧痛(指でおして感じる痛み)があり,疲れやすく,脱力感,頭痛,不眠,冷え症などがある場合は,患者の訴えが多いわりには,診察では把握しづらいといわれています。

頸肩腕障害は傷や炎症があるわけでもなく,神経の変性でもないので,身体疾患であるにもかかわらず,客観的判定を出すのがむずかしいのです。この点が非常に重要です。

通常の整形外科や,神経学による診察によって診断するのはむずかしく,またX線やMRI検査の画像診断でも異常が見られないのは仕方ないのです。

重症度の判定の仕方は

しかし,私はこれまでの臨床経験から頸肩腕障害の診断は,次のようにすればできると考えています。

(1) コリの拡がり(広範筋硬症)

コリの客観的判定は,不可能とまではいえないとしても困難です。そこでコリの拡がりに着日した診察方法により判定します。

左右どちらかのうなじ(首の後ろ側)を基準点とし,そこのコリの度合いを10点とします。うなじからふくらはぎまでを指で圧して,患者さんに各所のコリを点数で評価してもらうのです。左右の拡がり,腰や足までの拡がりを記録します。

コリの拡がりが,病態のすすみ具合と平行すると考えられます。

述べる痛覚過敏や半身感覚障害がある場合は,その部位を避けて基準点を決めます。

(2) 「痛覚過敏」の検査

圧痛検査は,疼痛学会では約4kgの強さで圧すと決まっていますが,これがなかなかうまくいきません。

患者にとっても,コリと痛みの区別は非常にむずかしいと思われます。

これに対し,私は,昔からある方法ですが,指先で叩く「叩打法」(こうだほう)の有効性に着目しました。痛覚過敏があれば患者さんは叩打には敏感で,痛みと感じる(痛覚過敏)範囲が比較的容易にわかるからです。

この診察法で99年度の頸肩腕障害患者を検査したところ,183人中28人(15.3%)が,比較的長期間,痛覚過敏領域が固定していました。

これら28人はすべて,慢性的で治るのが困難になった人たちで,痛覚過敏の範囲や程度は,慢性・難治化の指標のひとつになりうると考えます。

(3) めずらしい「半身感覚障害」

「半身感覚障害」は頚肩腕障害約180人中,5人くらいに見られる比較的めずらしい症状です。

体を縦割りにした半分に知覚障害があるもので,患者は「何か重い膜がかかったような不快な感じで,寒冷に敏感」という表現をします。

半身感覚障害例の具合の方が,もう一方側よりも悪いのです。

障害がある方の半身では,コリの検査はむずかしく,痛覚過敏と合併することもあります。

(4) 握力・背筋力の著明な低下

頸肩腕障害で,握力・背筋力測定の意義を認める臨床医はあまり多くありません。その理由は,「患者は,意識的・無意識的に病状を重く診てもらいたいと考えているだろうから」とか「背筋力測定は腰痛悪化の危険性が高いから」ということです。

しかし当院では,適切な指導を行なえば握力・背筋力は安全にはかれるし,1ヵ月単位の推移をグラフにして見られるので,病状の経過を把握するのにもっとも優れた検査法と考えています。

就業年齢20〜50歳女性の標準値は,だいたい握力が右25kg,左25kg,背筋力が70kgです。たとえばこれが15,15,40kgくらいに下がっていれば,業務を軽くする,あるいは休業療養が必要だろうという判断の目安となります。

またリハビリや再就労の段階でも,握力・背筋力の測定値は非常によい目安です。

どんなに重く治りづらい病気でも,患者さんは我が身に起きている事実から出発するしかありません。病状をきちんと知ることが一番納得してすすんでいける道だと思います。ですから,重症度を正確に診断することが治療・療養の出発点と考えます。

(2002.2 いつも元気で MIN-IREN 掲載)



このページの先頭に戻る  「過労性疾患の記事」トップに戻る


トップページに戻る



Copyright (C) 2011 Shiba-Daimon Clinic