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職場と家族のメンタルヘルス


港勤労者医療協会芝病院
専門は神経内科・労災職業病
労働共済連顧問医師
渡辺 靖之

  

過労自殺の多発

「過労死」は「セクハラ」と並んで,すでに立派な一つの概念となっています。「過労自殺」も平成11年9月14日の「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」(労働省通達・基発544号)が出るにおよんで,ひとつのキーワードになった感があります。

最近の日本の労働者の置かれている厳しい状況の一面を表す言葉として,単に象徴的な言葉ではなく,実際に過労による自殺が多発していることを示しています。

ひとつには,いろいろな産業分野から極度の長時間労働のはてに精神消耗状態で自殺死した例が実際に,労働災害として認定されつつあります。

また,基盤にうつ病が潜在し,その上に過労による心身過労が追い打ちをかけることがあり,こうした事例は非常に多くにのぼると思われ,私たちの身のまわりにいつでも起こりうることなのです。もちろん私自身,あなた自身の身の上にもです。

対策のポイントは「過労対策」と「うつ病対策」の二面作戦となると思われます。

私の勤務している病院での自殺対策

私が務めている病院は労災職業病を専門のひとつにしており,じん肺や腰痛症,頸肩腕障害,産業中毒,振動病の患者さんが多いのです。1981年から1987年の7年間に職業病の患者さんの中から実に7人もの自殺(既遂)がありました。

自殺未遂の方はもつと多数にのばります。中にはこんな患者さんもおられました。60歳のじん肺患著さんで,重症の喘息発作重症状態が続くために長期間の入院を余儀なくされていました。ある日の早朝のこと,同室のやはり重症のじん肺症の患者さんが呼吸不全で亡くなられた2時間後のことでしたが,果物ナイフで喉を自らかき切ってしまったのです。20cmもパックリと開いた傷から気管や頸動脈が露出していましたが,切断されておらず,一命はとりとめました。患者さん本人も,看護婦さんも泣きながら傷の縫合をしましたが,この方はその2ヶ月後には喘息重症発作のために亡くなってしまいました。

自殺した7人の方がたや未遂の方がたを,どのような苦悩が自殺にまで追いやったのでしょぅか。その時に医療担当者の私たちは,もっとできることはなかったのでしょうか。苦い思い出を教訓にして,その後私たちは,いろいろな取り組みを重ねてきました。

気になる仲間 気になる患者

私たちの病院の職業病担当の医療チームは月1回の定期的な会議を開いていますが,そこには「気になる患者」というコーナーがあり,心配で気になる患者さんについて話し合いをしています。

医師の診察室だけではなく,マッサージ治療を受けながらいろいろな話をして治療者に聞いてもらえること,運動療法での経験交流で他の患者さんとも交流できること,受付係の職員にいろいろ話が問いてもらえること等から,患者の苦しい療養生活に少なくない励ましをもたらすことになるのだと思われます。

またキチンとしたケースワーカーの相談活動や,専門のカウンセラーによる相談活動が重要であることは,もちろんです。

労働組合の分会・サークル・家族などの小さな単位

職場でのメンタルヘルス対策として職場で期待されるのは,なんといっでも労働組合の役割です。それも分会単位の比較的小さな集団での「気になる仲間」の取り組みが大事だと思われます。定期的に会議が開かれて,そこで気になる仲間について話し合うことが出発点であると思われます。

うつ病対策は精神科受診にこぎつける事

うつ病であるかどうか,うつ病が潜在しているのかどうか,身体症状が表面に出ているけれども仮面うつ病であるかもしれません。

うつ病は精神科医の診断を受けて,適切な薬物僚法を受けることが大事です。そのためには,本人とよく話し合って精神科受診を進めることがまず第一歩です。

良い聞き手

では,職場やサークルの仲間や,家族の一人が元気がなく,落ち込んでいる様子,疲れ切っている様子に見える時,またしばらく姿をみせない,部屋に閉じこもりがちになっている時,どのように接するのがよいのでしょうか。

とにかく「良い聞き手」になるように心掛けることがまず第一だと思います。

人は自分の困難,苦悩が誰にも理解されないことが,一番辛く悲しいことなのだと思いますので。

ここでは人間関係(改善)の方法について,深い人間信頼(自己信頼感も含む)に基づいて,非常によく洗練されたシステムをつくりあげたドマス・ゴートンさんの考えを紹介いたします。


心の扉を開く言葉

人は時々,自分の気持ちや問題について話し始めるように勇気づけられることを必要としています。

「私はその問題について話をしたいのですが」

「あなたはその問題について何か感じているようですが」

「その問題についてもっと話したいと思いませんか」

「あなたの言っていることを問いています」サイン

相手が言ったことを黙って聞く,うなずく,相槌をうつことがまず大切です。次には「あなたの言っていることを聞いています」という明確なサインを出すことが必要です。聞き手として,理解できたことを相手に返します。

それが相手の聴いてもらいたかったことに近ければ,自分の問題,苦悩が理解してもらえたという気持ちが生まれ,とても良い励ましとなると思われます。

「はげまし」や「気休め」が良くないわけ

問題を抱えたり,悩んでいる人に対して,批判・非難,悪口を言う,バカにする,はずかしめるのはもちろん,探る・尋問する,お説教・訓戒,忠告・提案,講義・説諭等は決して励ましや勇気づけにはならないことは比較的分かり易いことです。

また,解釈・診断・精神分析も,ごまかし・注意をそらす・ユーモアで紛らわす,説得・同情・なぐさめる,称賛・おだてる,ことも決して真の励ましにはならないと言えます。なぜならば,これらの言葉の底には相手への真の理解がないことが多いからです。



慢性疲労症候群程度表
0:倦怠感がなく通常の社会生活ができ,
  制限を受けることなく行動できる。

1:通常の社会生活ができ, 労働も可能で
  あるが, 疲労感を感じるときがしばしば
  ある。

2:通常の社会生活ができ, 労働も可能で
  あるが,全身倦怠感のため,しぼしば休
  息が必要である。

3:全身倦怠感のため, 月に数日は社会生
  活や労働ができす, 自宅にて休息の必
  要である。

4:全身倦怠感のため, 週に数日は社会生
  活や労働ができず,自宅にて休息が必
  要である。

5:通常の社会生活や労働が困難である。
  軽作業は可能であるが, 週のうち数日
  は自宅にて休息が必要である。

6:調子の良い日には軽作業は可能である
  が週のうち50%以上は自宅にて休息し
  ている。

7:身の回りのことはでき, 介助も不要であ
  るが, 通常の社会生活や軽労働は不
  可能である。

8:身の回りのある程度のことはできるが,し
  ばしば介助がいり,日中の50%以上は
  就床している。

9:身の回りのこともできず,常に介助がいり,
  終日就宋を必要としている。

     (厚生省慢性疲労症候群研究班・1992年)

[ 3項目以上該当した人は, 医師の診
 断が必要である ]



メンタルヘルス・過労チェック
A 睡眠
(1)寝付きが悪い
(2)眠りが浅く一晩に何度も目がさめる
(3)寝つきが悪く眠れず朝早く目が覚める

B 気力
(1)朝のうちは調子が出ず,午後は幾分が
  よくなる
(2)仕事の能率悪く,おつくうで根気が
  ない

(3)会社に出たり人と話し合うのがいやに
  なる

C 意欲
(1)仕事がいやでよく休む
(2)仕事に張り合いがなく, 仕事の展望
  がない
(3)何のための仕事をしているかわからなく
  なる

D 気分
(1)理由なくイライラして落ち着きがなくなる
(2)自分が別世界の中にいるような感じが
  する
(3)回りから怠け者とか人が変わったとい
  われる

E 不安感
(1)ゆううつで気分が沈みがちである
(2)身体のことが気になって仕方がない
(3)なにか悪い病気にかかっている様な気
  がする

F 展望
(1)人生がつまらなくて生きていく自信が
  ない
(2)人のいない静かな山や海のそばで暮ら
  したい
(3)買物や人に会いに出かけるのがいやに
  なった

G 集中力
(1)本を読んだりテレビをみる興味が無く
なつた
(2)服装,化粧,ファッションに関心が持て
  ない
(3)家事や片づけものするのがいやでたま
  らない

H 食欲
(1)食事が進ます物の昧がしない
(2)胃や腸の具合ガわるい
(3)のどの奥に物がつかえる感じがする

I 感覚
(1)目が疲れやすい
(2)騒音が気になる
(3)頭痛がしたり,頭が重い

J 疲労感
(1)身体がだるく疲れやすい
(2)首すじや肩がこって痛んだりする
(3)胸に圧迫感があったり動悸,息切れが
  する

30問のうち該当数が,全体の合計で5個以上該当する場合は,AからJまでのどの項目にそれが集中するかを調べ,どのような性質の不調と疲労の内容があるかによって対処の方向を考えてみることで
す。10個以上の場合は,何らかの措書をとる必要があります。このためには,どの項目か多くなっているかにより,精神疲労・ストレスの内容を検討し,精神科医等による相談も必要です。20個を超える場合は,ただちに何らかの措置をとるようにし,職場,家族の人が協力して医療的ににも生活的にも支えていく体制をつくることを考えましょう。

(働くもののいのちと棚を守る全国センター発効の「過労死予防手書」より)


●参考文献●

心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について:
                            労働省通達(基発544号)平成11年9月14日

ゴートン博士(アメリカの心理学者)の 親に何が出来るか「親業」:
                     近藤千恵・中井幸美子訳,三笠書房,1991年(平成3年)



                    (2000.4  労働共済連 春季号 掲載)



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