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過労による病気=職業病

顧問医師 渡辺靖之

  

職業病性頸肩腕障害,職業性腰痛,自律神経失調症

   

仕事のせいで「頸やかたのこり」や「慢性の疲れ」で悩んでいる人はいませんか。健康診断や人間ドックでは 特に異常がみあたらず,内科や整形外科にかかっても,ただの疲れといわれるだけで,重いのか軽いのかもさっ ぱりわからない,という人はいませんか。昔も今も,仕事以外のことから「頸やかたのこり」,「慢性の疲れ」 がくることはめったにあるものではありません。長い人では特にそうです。あなたも職業病にかかっている可能 性がありますよ。


■近年の職業病の特徴

1950年代までは,職業病とは特別に有害・危険なものをあつかっている,あるいは特別に悪い労働環境で 働いている鉱工業労働者だけにおきる特別な病気だとおもわれていました。たとえば職場を汚染しているいろい ろな有害,有責物質が体にはいったり,皮膚・粘膜をおかしておきる塵肺症,鉛中毒,有機溶剤中毒,皮膚炎な どの病気,ひどく暑い所で働いている人におきる熱中症,騒音性難聴などの病気です。

1960年前後から日本は技術革新,高度経済成長の時代になり,これまでにない労働生産性の向上,人べら し合理化,労働強化が急速におしすすめられ,ひろがっていきました。そしてたちまちのうちに,従来型の労働 の環境条件や有害物質の取扱いよりも,業務における頭と体の使い方そのものや,労働用具の性質,性能に原因 がある健康破壊が,これまで職業病などとは全然関係ないとおもわれていた職種で大問題となってきました。


■事務労働者の職業病

まずキーパンチャー病にはじまり,打鍵作業の有無に関係なくほとんどの事務作業労働,電話交換手,速記者, 印刷産業の植字労働者などにひろがっていった職業性頸肩腕障害です。ついでスーパーマーケットのチエツカー の間にもひろがり,1980年代にはVDT(注)障害が大きな問題になりました。


■教育・福祉労働者の健康障害

機械化がすすんだわけでもなく,危険・有害物質に接触することもないのに,業務疲労・過労から重大な心身 不調をおこす人が激増したのは教育と福祉労働の職種です。

1960年代後半から,保母や教員の業務疲労による健康障害の問題は十分な改善がなく今にいたっています。

1970年代からは,障害児・障害者の教育・養護施設の急増を追って,これらの施設で働く教員,保母,介 護の職種の人々の間にはさらに深刻な健康障害が多発するようになりました。


■過労性腰痛

1960年代の半ばから,多くの生産や運輸の現場労働も機械化の進展による作業量の急増に労働強化・過密 化で対応することが強制され疲労・過労による健康障害か多発する事になりました。新聞産業では高速度輪転機 の導入,鉛板を運ぶベルトコンベアーの導入,そして増員なしの増べ−ジ,増版が進む中で20キロにおよぶ鉛 板を輪転機に着脱する作業の密度がいちじるしく高められて腰痛の多発をおこしました。

空港の荷物・貨物の積み下ろし作業での腰痛,スチュワーデスの腰痛が多発しました。


■最近は海外諸国でも問題に

職業性頸肩腕障害は従来,もっぱら日本だけの問題だったかの観がありました。しかし過労性疾患は日本だけ の問鹿ではあるはずはありません。

実際,1975年オーストラリアの労働衛生学者達の中でRSI(反復過労性障害)として注目されてきまし たが,その後は腱鞘炎のような器質的障害とみなすにとどまり,過労性疾患としての研究がすすめられなかった ようです。

また最近アメリカとカナダの労働衛生学の領域でもこのRSI(反復過労性障害)にかんする症例報告や総説 が多くみられるようになっていますが,「手根管症候群」として手指の限局した器質的障害と診断,治療されて いるにとどまっているようです。


■過労性疾患としてのとらえ方

日本では林業性頸肩腕障害がもっとも多発した1960年代の総まとめとして1972年に日本産業衛生学会 「頸肩腕症候群」委員会の統一見解がだされました。「(定義)業務による障害を対象とする。すなわち上肢 を同一肢位に保持,または反復使用する作業により神経,筋の疲労を生ずる結果おこる機能的あるいは器質的障 害である。ただし病像形成に精神的因子及び環境因子の関与も無視しえない。従って本障害には従来の成書に見 られる疾患(腱鞘炎・関節炎・斜角筋症候群など)もふくまれるが,大半は従釆の尺度では判断し難い性質のも のであり,あらたな観点に立った診断基準が必要である。」

今から考えてみても,この見解は事実に基づいたものであり,その後の過労性疾患研究の発展をうながす意味 でも非常に進歩的な見解であったといえます。当時の良心的な労働衛生学研究者や臨床医師の努力の結晶です。

一方これに対して多くの整形外科医や企業の産業医はたとえば次のような考え方をしました。「職業性頸肩腕 障害は,職業的,心理的因子が大きく蘭与しているものの,体質的素因に加わった相対的荷重負荷による上肢帯 と項部筋の疲労である」(慶応大学医学部整形外科平林助教授)。とくに心理面,体質面を重視した筋疲労説で す。

この見解には,二つの問題点があります。心理,体質面という労働者の素因を重視することによって業務起因 性を曖昧にすること,問題を筋疲労に限局することによって全身的な心身不調は精神:心理的問題として業務疲 労とは関係ないこととみなしてしまうことです。

■今もさまざまな職種から発病

今も業務による疲労・過労に原因が求められる健康障害は後を絶ちません。私たちの病院の外来にも様々な職 種からの患者さんが来院しています。

VDT入力を含めてほとんどの事務作業,デザイン関係の入力作業,検査技師,歯科医師や歯科衛生士,最近 特に多いのは手話通訳者の健康障害です。

過労性腰痛の女性ではスチュワーデス,保母さんの腰椎捻挫,背腰痛,看護婦の背腰痛,頸肩腕障害,管理労 働者の自律神経失調症などです。


■過労のはて

過労の連続の結果は一体どのような病的状態になるのでしようか。職業性頸肩腕障害の多発職種であるキーパ ンチャー,VDT作業者では,作業の能率を極度にあげるため,全身疲労や精神的疲労は極力排除されており, 「一点集中」の反復作業を正確,迅速に長時間にわたって遂行することを「強制」されているのが特徴です。こ のような作業では筋肉(腱)の疲労現象よりも運動のコントロール中枢である神経系統(脳)の「疲労」現象が 本質的な問題であるとみることが妥当ではないでしようか。

事実として,キーパンチャー病,VDT障害の重症・難治の患者さんでは,共通の基本的な病状としては(1) 異常な疲労感,異常に過度の疲れやすさが何年も頑固につづく。(2)全身広範囲な手から足の裏にいたるまでの凝 り,痛み,過度の凝りやすさ,なおりづらさの持続。(3)目や耳の過度の疲れやすさ。(4)暑さ,寒さにたいする 適応の障害。などが認められます。

重症者の多くの方には次のようなことが見られます。診断がついて休業の指示が出されるまでは何とか働きっ づけていた罹病者も,休業しはじめると,かえってどんどん状態が悪化し,一時は寝たりおきたりで家事も出来 ないないという状態になります。そして上記の(1)〜(4)のような心身不調のため何ケ月〜何年もの休業治療をよ ぎなくされることもあります。


■職場での自己診断法

過労性疾患(職業性頸肩腕障害,職業性腰痛,自律神経失調症)は通常の健康診断や人間ドックで発見,診断 されることはありません。また心身の不調のために普通の内科や整形外科を受診しても多くの場合は従来からの 疾患である「腱鞘炎」や「関節炎」と診断されたり,ただの「かたこり」や単なる「疲れ」といわれることもあ ります。

そこで,この過労性の病気については自己診断が重要なのです。

普通の肩こりが,だんだん強まり,異常なほどつらく,痛い,疲れやすさが異常に強い,仕事が終わって帰宅 しても食事や入浴する元気もなく,まず横になって休まなければならない。せっかくの休日は朝起きるのがひど くつらい。一日に何回も横になって休む。でかける元気もない。

このような状態であれば過労性の病気である可能性は非常におおきいと思われます。ぜひ,私たち専門の医療 機関に御相談下さい。



注:VDT(Video display terminal コンピュータの端末で,文字や図形を表示するブラウン管・液晶など の装置。(岩波書店『広辞苑』による)

                                  (1994.10 労働共済連 秋季号 掲載)



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