■ プリント基板によるデジタル時計の製作 ■


AVRマイコン ATmega88 + ニキシー管 デジタル時計

  他の製作記事では、単品での製作のため、ユニバーサル基板を使用してハンダ面も
 手配線で組んでおりますが、今回、友人からニキシー管時計を作ってみたいとの依頼が
 あり、プリント基板を起こすことにしました。
 
  趣味の製作でプリント基板を起こすのは20年ぶりで、昔は生基板にレタリングシールや
 アートワークテープを貼ってエッチングしておりましたが、現在では、家庭でもパソコンで
 フイルムを作製し感光基板を使用することで、簡単にプリント基板ができてしまいます。
 
  また今回は、高電圧発生用のDC-DCコンバータ回路の変換効率をアップするため、部品
 の見直しを行いました。

回路の概要
 
1.マイコン部

 
 ・AVRマイコンは、必要最小限のポート数と動作クロックに
  より、ATmega88-20を選定しました。
 
 ・動作クロックは、クロックをカウントして1秒を得るため、12.8MHz高精度クリスタルモジュールを
  使用してあります。
 
 ・AVRのプログラムは、「オリジナルデジタル時計」のページで作ったAT90S8535用のソースを、
  ポート等の修正をして移植しました。

2.ドライブ回路
 
 ・ニキシー管のアノード制御は、高耐圧フォトカプラTLP627を使用し、カソード制御はSN74141
  を使用しました。
 
 ・小数点とAM/PMのネオン管制御は、高耐圧のトランジスタで行っております。
 
 ・0〜9のカソードは、74141の出力ツェナーダイオードにより、消灯時の端子電圧が60V以内に
  制限されますが、小数点はトランジスタ制御のため、プリバイアス回路を設けてあります。

3.高電圧DC-DCコンバータ回路
 
  この製作で一番時間を要したのが、DC-DC回路の変換効率アップです。

  (1) 部品配置とパターン
 
   ・DC-DC用IC、MC34063A(NJM2360A)で200Vの高圧変換を行う場合、12V電源をマニュアル
    通りICに供給し、電流制限抵抗を通した後コイルに接続する回路では、パターンによりICに
    供給する電源にノイズが混入し、動作が不安定になる場合があります。
 
   ・パターンを引く場合は、まずコイルに電源を供給した後、IC回路へ引きバイパスコンデンサを
    取り付けると動作が安定します。 
     (電流制限回路は使用できなくなります)
     (両面基板で、電源とGNDをベタにできる場合は考慮不要です)
             

  (2) 出力電圧調整用コンパレータ回路
 

・ICのコンパレータ入力(5P)に接続する分圧回路は、
 出力電圧が高圧なため高抵抗を用いることになり、
 インピーダンスが高くなることから、ICからの距離を
 長くしたりコイルの近くに配置すると、ノイズが混入
 して変換効率が落ちてしまいます。
 
・また、理由は不明なのですが、ボリュームとGND間
 の抵抗値を3KΩ未満にすると、効率が落ちてしま
 いました。

  (3) 半導体の選択
 
   ・MC34063AとNJM2360Aでは、実測値の変換効率で、2360Aの方が5%ほど良くなりました。
 
   ・FETの選択は、スイッチング時間よりも、オン抵抗の小さいFETの方が良い成績となりました。
 
   ・整流用ダイオードは、逆回復時間(Maximum Reverse Recovery Time)の短い物が良いです。

  (4) コイルの選定
 
   ・変換効率を一番左右するのがコイルの選定です。
 
   ・以前製作した回路では、「秋月電子」のDC-DCコンバータキットに入っている400μHの
    トロイダルコイルを流用しましたが、変換効率が上がらず、コイル自身の発熱も50度Cから
    下げることができませんでした。
 
   ・発振用のコンデンサ(3P)の値を1,500PF以上にすると、多少温度は下げられますが、
    コイルから発生する「ジー」と言う振動音が大きくなってしまいます。
 
   ・巻き数を変更したり、数少ない手持ちのコイルで試してもあまり成果は出ず、他のコアでも
    テストをして見たかったのですが、入手が困難なため断念しました。
 
   ・ところが、定格電流が少ないので選択肢から外していた、ラジアルリード型のコイルを試した
    ところ、変換効率がアップしたばかりか発熱もほとんど無く、一挙に問題解決となりました。
 
     (コイルの取扱が得意ではないので、理由は説明できませんが、コアの周波数特性だと
      思います)
 
   ・あとは、コイル容量に合わせて発振用のコンデンサ値を調整し、下記のようになりました。
 
出力電圧 180V時
   入力 12V/152mA = 1.824W
   出力 180V/7.5mA = 1.35W
       変換効率 74%
        (旧回路 50%前後)
    

回 路 図  GIF版 AM88NCir.gif (254KB)  PDF版 AM88NCir.pdf (447KB)

部品配置図  GIF版 AM88NPcb.gif (281KB)
アートワーク  GIF版 AM88NAW.gif  (210KB)
   注意! この図面を使用した、いかなる損害にも責任を負いません。 

プログラム  テキスト形式 ソースファイル  AM88C204.txt (28KB)
 BASCOM-AVR用 ソースファイル  Am88C204.bas (28KB)
 インテルHEX形式 オブジェクトファイル  AM88C204.HEX (11KB)
 
注意! 著作権は放棄しておりませんので、販売や配布目的での使用は絶対にしないで下さい。




日付表示

側面

後面

プリント基板

基板 正面

基板 右側面

基板 上面

基板 後面

基板 左側面

基板 ハンダ面
↑ 画像をクリックすると、拡大します。 ↑


プリント基板
 ・プリント基板は、主基板(116.8×76.2mm)と、AM/PMネオンランプ基板(10.1×76.2mm)の2枚に
  なっておりますが、収納するケースにより、ニキシー管部分のみを切り離して取り付けることも
  可能な様にしました。
 ・そのため、アノード配線6本と、カソード配線10本及びDP・AM・PMの配線3本が必要です。
 
 ・ニキシー管の取付は、管の種類により端子の配置がまったく違うため、アノード端子を中央に
  配置し、残りの端子を楕円形に取り付けて行き、各カソードに対応するように配線を変えることで
  12φクラスの管での汎用性を持たせています。
 
 ・AM/PMネオンランプ基板は、ニキシー管の高さに合わせて切断し、取り付けます。
 
 ・AVRのPB0端子(14Pin)は、表示デバイスが7セグメントタイプかBCDタイプかを選択する端子で、
  L(GND)レベルで、BCDモードになります。


AVRマイコン ATmega88の、ヒューズ ビット書き換え
 
AVR ATmega88のシステム クロックは、工場出荷時に内蔵RC発振器の8MHzで、1/8前置分周器がONに設定されているので、外部のクリスタル オシレータを使用するには、AVRのヒューズ ビットを書き換える必要があります。

下記ページの書き換え方法 「6.」を、以下の様に変更して、ヒューズ ビットの書き換えを行います。

    ヒューズ ビット書き換え

 6.[ FusebitC ] の右欄 [ 0:Divide Clock by 8 Enabled ] をクリックすると、右側にプルダウン
   メニューが現れますから、 [ 1:Divide Clock by 8 Disabled ] を選択します。
 
   [ FusebitKLA987 ] の右欄 [ 100010: --- [CKSEL=0010 SUT=10];default value ] を
   クリックすると、右側にプルダウンメニューが現れますから、
   [ 100000: --- [CKSEL=0000 SUT=10] ] を選択します。
 


操作方法
1.電源投入
 
  ・電源が入ると、現在のプログラムバージョンが、0.2秒周期で点滅表示されます。
  ・「Time Set A」ボタンを押すと、「2000年1月1日 AM12:00:00」からカウントが始まります。
  ・表示桁数は「6桁表示」、表示モードは「通常」になります。

2.スキャンスピード
 
  ・「Time Set A」ボタンを押しながら電源を投入すると、スキャンスピード設定モードに入ります。
  ・初期状態では、「0.075.」が表示され、下位2桁が点滅します。
   (この状態で、スキャンスピードは75Hzです)
 
  ・「Time Set B」ボタンを押すと、「0.050.〜1.234.」の範囲で数値が変化しますが、増加する値は
   AVR内部タイマーの設定値から計算しているため、整数の一定値ではありません。
  ・表示と共に実際のスキャンスピードも変化するので、表示のちらつきが無く、隣接桁にゴーストが
   出ないように設定値を決めます。
 
  ・設定値が決まったら、「Time Set A」ボタンを押すと、プログラムバージョンの表示に戻ります。
  ・設定値は、AVR内部のEEPROMに記憶されますので、電源を落としても再設定は不要です。

3.表示切換
 
 
 ・「Time Set A」と「Time Set B」ボタンを押すことにより、下記の様に表示が切り替わります。
6桁モード時
通   常 時.分.秒 表示
Time Set A ボタン 月 日   表示
Time Set B ボタン 年    表示
4桁モード時
通   常 時.分 表示
Time Set A ボタン 月 日 表示
Time Set B ボタン 分.秒 表示

4.時刻設定
 
  ・「Time Set A」と「Time Set B」ボタンを同時に3秒以上押すと、時刻設定モードに入ります。
    (年は、西暦2000年から2099年までの範囲で対応しています)
  ・設定モードに入ると、下記の順に設定できる項目が点滅表示されます。
     ( 6桁/4桁選択 → 表示モード → 年 → 月 → 日 → 時 → 分 → 終了 )
  ・「Time Set B」ボタンで、設定値が増加し、1秒以上押し続けると早送りになります。
  ・「Time Set A」ボタンを押すと、次の項目に移ります。
 
  ・「6桁/4桁選択」時は、左側に「6.4.」が表示され、「Time Set B」ボタンを押すと右側の表示が
   「6」と「4」で交互に変わります。
  ・「表示モード」時は、左側に「8.2.」が表示され、「Time Set B」ボタンを押すと右側の表示が
   「00」と「82」で交互に変わります。
    「00」→ 通常表示。
    「82」→ 秒の下1桁が、0〜7の8秒間は時間を表示し、8〜9の2秒間は、月日を表示します。
   ・この二つの設定値は、AVR内部のEEPROMに記憶されますので、電源を落としても前回の設定
   が表示されます。
 
  ・分の設定が終わると、秒を00にして通常の時刻表示に戻りますので、秒の単位まで合わせる
   場合には、00秒になったと同時に「Time Set A」ボタンを押します。

5.12時間/24時間表示の切換
 
  ・スライドスイッチを切り換えることにより、いつでも選択が可能です。

6.日差の微調整
 

  ・水晶発振子(Xtal)の上面にある穴の中に、微調整用のボリュームがあり、回転させると180度を
   境に、進むまたは遅れる(位置は不確定)ので、1日の誤差を見ながら、左右どちらかに少しずつ
   回転を繰り返して日差を修正します。


○パーツの参考資料
 ・基準信号 水晶発振器  「秋月電子通商」 超高精度クリスタルモジュール(12.8MHz±1ppm)
 ・基板  「サンハヤト」 感光基板 43K ガラスコンポジット 片面 1.0x100x150mm
 ・ケース  「ダイソー」 コレクションボックス ミニ 169x85x100mm


   電子工作の部屋 Top へ 前のページへ戻る