CCS811の動作説明 |
動作モード
CCS811には、以下の5つの動作モードがあります。
•モード0 : 休止。低電流モード。
•モード1 : 毎秒IAQを測定。定電力モード。
•モード2 : 10秒ごとにIAQを測定。パルス加熱モード。
•モード3 : 60秒ごとにIAQを測定。低電力パルス加熱モード。
•モード4 : 250msごとにセンサーを測定。定電力モード。
モード1、2、3では、すべての採取に対して等価のCO2濃度(ppm)とTVOC濃度(ppb)が計算されます。
•モード1は、ガスの存在に最も速く反応しますが、より高い動作電流です。
•モード3は、ガスの存在によりゆっくりと反応しますが、平均動作電流は最も低いです。
センサーの動作モードをより低いサンプル・レート(例えば、モード1からモード3)に変更する場合、
新しいモードを有効にする前に、少なくとも10分間はモード0(休止)にしなければなりません。
センサーの動作モードをより高いサンプル・レート(例えば、モード3からモード1)に変更する場合、
新しいモードを有効にする前に待つ必要はありません。
モード4は、外部のホスト・システムが生(未加工)データを使用して演算を行うシステムに対して、
250msごとに新しいサンプル・データが提供されます。
注: モードのタイミングは、CCS811の内部クロック精度に準ずるため、標準で2%の許容値になります。
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nWAKEピンの制御
[nWAKE]を操作するには、2つの方法があります:
1.ロー(GNDレベル)に接続して、常に動作状態にする。
2.GPIOを使用して、動作状態と静止状態をホストから制御する。
・[nWAKE]信号がローにされると、CCS811の内蔵プロセッサが稼働し、I2Cインターフェイスで要求を
処理します。
・このピンがハイの時には、CCS811はスリープ・モードに入り、すべてのI2C要求は無視されます。
・したがって、この信号をGPIOで制御する事により、CCS811の消費電力を効率的に制御できます。
・消費電力が重要になるアプリケーションでは、[nWAKE]を永続的にローへ引き下げることは
推薦されません。
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使用の初期 (バーン・イン / 通電ならし)
CCS811の性能は、抵抗値と感度に関して、使用の初期の間に変移します。
抵抗の変移は、作動の最初の48時間の間に、最も大きくなります。
センサーの性能が安定していることを保証するために、選択された動作モードでCCS811を48時間
稼働させることをお勧めします。
(少なくとも24時間連続して動作することを推奨)
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調整期間 (ラン・イン/ならし運転)
初期期間(バーン・イン)が完了した後の調整期間とは、VOCを測定する前に良好なセンサーの
安定性を得るために必要な時間です。
もし、センサーが休止状態のまま8時間以上経過しているならば、最初に20分以上動作させてから
VOCの測定を始めることを推奨します。
センサーをモード1~4で設定するためにMEAS_MODEに書き込みを行った後に、CCS811を20分間
動作させてから、正確な読み取り値が生成されます。
(これは、サポートされているすべての動作モードにあてはまります)
より短い調整期間でCCS811を使用することができますが、これはセンサーが暖められるまで、
VOCの測定値が不正確になることになります。
調整期間は、BASELINEレジスターに書き込む前に、観察する必要があります。
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eCO2
CCS811の等価CO2(eCO2)の出力範囲は、400ppm~8192ppmです。
この範囲外の値は切り捨てられます。
TVOC
CCS811の総揮発性有機化合物(TVOC)の出力範囲は、0ppb~1187ppbです。
この範囲外の値は切り捨てられます。
これは、屋内環境における標準的なTVOCの混合物に対して較正されます。
環境中の化合物の比率が著しく異なる場合、いくらかのVOC化合物がセンサーに少なからず
影響を及ぼして、TVOCの出力はその影響を受けます。
屋内の空気品質の悪化による影響
空気品質
の表示 |
VOC濃度 |
VOCの影響 |
屋外濃度以上の
CO2濃度 |
CO2の影響 |
悪 い |
高 い |
長期間身をさらす:
発ガン性、肺、肝臓、
腎臓および中枢神経系
の損傷。
眼、鼻、のど、皮膚刺激、
頭痛、吐き気、めまい |
> 2500 ppm |
健康への影響
(吐き気、頭痛、めまい)
成績・生産性と判断力
の著しい障害。 |
中程度 |
中 位 |
目、鼻、のど、皮膚刺激
頭痛、吐き気、めまい |
1500~2500 ppm |
判断力の低下、疲労、
集中力の低下。 |
良 い |
低 い |
影響なし |
< 1500 ppm |
健康や判断力に影響を
与えない |
これらの値は、あなたの周囲環境における屋内空気の質の問題を示し、エンドユーザーに適切な
措置を取るよう警告します。
センサー使用の初期段階では、抵抗値と感度の点でCCS811の性能が変化するため、
初期のIAQ表示は正確ではない可能性があります。
使用の最初の24時間は、エンドユーザがIAQ表示を慎重に扱うか、無視することを推奨します。
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温度と湿度の補正
VOCを監視しながらCCS811によって生成されたTVOCおよびeCO2の値は、湿度および温度変化の
影響を受けます。
外部のセンサーが利用できる場合、この情報をCCS811に書き込むことで、温度や湿度の変化に
よるガスの読み取り値を補正することができます。
ENV_DATA(環境パラメータ)レジスター(0x05)を参照してください。
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測定完了と、しきい値による割り込み
各測定サイクル(250ms、1秒、10秒、60秒)の終わりにフラグがセットされ、オプションで割り込み
ピン[nINT]が出力されます。
MEAS_MODE(測定モード)レジスター(0x01)を参照してください。
ユーザーは、eCO2の値がしきい値レジスターによって設定された範囲を超えた場合にのみ[nINT]を
出力するように選択することができます。
しきい値レジスター(0x10)を参照してください。
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オプションのNTC(負の熱係数サーミスタ)回路(AUX)
CCS811は、負の熱係数(NTC)サーミスタを接続するための外部インタフェースをサポートしている
ため、費用効果と電力効率の良い周囲温度の計算手段を利用できます。
このサーミスタにより、アプリケーションはCCS811が置かれている場所の周囲温度を測定することが
できます。
この温度は、CCS811のMOXガス・センサーの環境補償のために使用することができます。
NTCの構成の詳細については、アプリケーション・ノートams AN000372を参照してください。
外部の温度センサーが利用できない場合に、オプションのNTC回路を使用して周囲温度を測定し、
この情報をCCS811に書き込むことができます。
NTCレジスターは、ホストシステムが周囲温度を計算できるように、RNTCとRREFに応じた電圧(mV)を
供給します。
計算された温度は、温度変化によるガスの変化を補償するために、CCS811に書き込むことが
できます。
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自動ベースライン補正
感応層の抵抗RSは、センサーの出力です。
しかし、金属酸化物センサーは絶対的な読み取り値を与えません。
抵抗RSは、センサーごとに(製造のばらつき)、また活用事例ごとに、そして時間とともに変化します。
この問題を軽減するために、センサーの出力は正規化されます: RSはRAよって分けられます。
RAの値は、ベースラインとして知られています。
RAは1回の校正では決定できません; それはソフトウェアで実行中に維持されます。
このプロセスをベースライン補正といいます。
CCS811は、すべての動作モードで、TVOCおよびeCO2の濃度を計算するために使用される
ベースラインを継続的に監視します。
VOCの濃度レベルは一般的な屋内環境で変化するため、自動ベースライン補正が実施される
推奨の最小時間は24時間です。
CCS811は、自動的に最低レベルを24時間追跡します。
補正は小規模であることが予想されますが、時折観測されることがあります。
手動のベースライン補正
CCS811は、ガスの濃度の相対的な変化のみを検出します。
これは、現在の周囲の空気がきれいな空気とみなすために、センサーがガスの濃度を最初に
計算することを意味します。
センサーがきれいな空気にさらされると自動的に変化します。
空気の質が悪くなると、より正確なIAQの読みが得られます。
長期間にわたり汚染された環境で稼働している時の、起動時の精度の問題を回避するために、
CCS811はベース・ラインの保存と復元をサポートしています。
調整期間後にきれいな空気に遭遇した場合には、この特別なセンサーのためのきれいな空気の
ベース・ラインは、アプリケーションによって保存する必要があります。
CCS811は、不揮発性メモリー(NVM)にベース・ライン値を保持する方法がないため、ホストの
システムによって保存され、定期的にCCS811のレジスターに復元される必要があります。
きれいな空気のベース・ラインは、センサー毎に一意的であると考えられ、一定ではないため、
センサーの経年変化に伴って変化します。
ベース・ラインは24時間ごとにアプリケーションによって定期的に保存することをお勧めします。
これにより、次回のセンサーの電源投入時に、最も正確なベース・ラインをCCS811に書き込む
ことができます。
CCS811には、BASELINEレジスターを使用して、以前に保存したベースライン値を手動で保存
および復元するメカニズムがあります。
ベースラインを保存する正しい時間は、ユーザーの使用ケースとアプリケーションによって異なります。
○24時間以上電源が供給されているデバイスの場合:
・最初の500時間には、24~48時間ごとにベースラインを保存します。
・最初の500時間の後、5~7日ごとにベースラインを保存します。
○電源供給が24時間未満のデバイスの場合:
・デバイスが動作している場合は、電源を切る前にベースラインを保存します。
・複数の動作モードが使われるならば、それぞれに別々のベースラインを保存する必要があります。
・ベースラインは、抵抗が安定している場合(通常は20~30分)にのみ復元する必要があります。
・低電力モードから高電力モードに切り替える(アイドル状態で少なくとも10分を費やさずに)場合、
ベースラインを復元する前にセンサーの抵抗を再調整する必要があります。
注:
1. センサーが安定する前にBASELINEレジスターに値が書き込まれると、TVOCとeCO2の
計算結果が予想より高くなることがあります。
2. ベースラインは調整期間後に書かれなければなりません。
CCS811の使用に関する追加情報については、アプリケーションノートams AN00036:
CCS811 Programming and Interfacing Guide を参照してください。
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