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ロマンティック ストーリーズ  - ポプラ社(2001)
ロマンティック ストーリーズ

空飛ぶフライパン ロバートFヤング ロマンティック ストーリーズ ポプラ社(2001) 訳:伊藤典夫 のあらすじ

マリアンの職場はフライパン工場だ。ベルトコンベヤの前に立ち、流れてくるフライパンに柄を付けるのである。

この仕事は"鋳型"であり、"鋳型"は創造的でない、人生の敗者のする仕事だ。
では、才能とは、何か?それはテレビに出て踊る事だ。マリアンの目指すのも、そこである。

ただ、それには、"才能"が必要だ。"才能"とは、他人よりも素早く動けたり、足首が細かったりする事だ。
後、幸運でなくてもいけない。

マリアンはもう数年、小さなアパートで目を覚まし、工場に出かけていた。


ハロウィーンの季節が来ると、ダンスパーティーがある。
今日は、もう数人の男がマリアンを誘いに来た。
そのたびに、マリアンは言うのだった。
「あたし、ダンスは嫌いなの」
そして、コンベヤを流れてくるフライパンに柄を付けるのだった。


昼食を取り、午後になると、大量のフライパンがやって来た。忙しくなる。
男も更に二人来た。マリアンは頭痛を感じた。


アパートに帰ったマリアンの元に、母から手紙が来ていた。
今年は、葡萄が良く実った。めんどりは沢山、卵を産むけど、値段も下がるから同じだ。
エドの雑貨屋が店を拡げるらしいよ。ドリスに子供が出来た。ハワードが自宅を改築したよ。まるで宮殿の大きさだよ!
もう、帰っておいで。

もう一通手紙があった。ハワードからだった。

親愛なるマリアン。今、家を改築しているんだ。理由は判るかな。それは君のためなんだ。君が田舎に帰って来た時のためさ。僕は待っているよ。僕には見える。夕暮れに、君が丘の上に立っている。そして僕は言う。『とうとう、帰って来たね。愛しているよ』でも、そんな事を考え、うっとりしていて、みんなに見られ、笑われているのさ。


思い出すのは、冬の夜空の下。トラクターに乗っていた。星と雪だけの山。トラクターを運転しているのは、ハワード。
ヘッドライトが道の先を照らす。ハワードが言う。『愛しているよマリアン』『私もよ』

気が付くと、外では子供達が、各家を回っていた。
窓で、カチカチと音がした。どこの、子供だろう?いや、違う?

窓を開けて、外を覗くと、ネオン広告が目に飛び込んできた。

『魚の目フライパンって最高!』

ただ、窓の下にもフライパンがあるのに、気が付いた。
いつもの習慣で、マリアンはフライパンを手に取ると、柄を付け様とした。

「私の円盤に手を触れるな!」

そこに居たには、灰色の宇宙服にボンベを背負い、手に光線銃を持った、身長13cmの…つまり…宇宙人!

彼女はとっさに窓を閉めようとした。
「動くと、焼き殺すぞ!」

小さな金切り声が、"英語"を話した。そして、言った。
「私は、モイ トレハーノ王子である」

その声は、威厳たっぷりの調子だったが、きんきんの高い声のため、あまり効果はなかった。

「私は、このつまらん惑星の軌道上に停泊する宇宙艦隊の総司令官である」
「…どうして、地球に来たの?」
「攻撃するためだ!」
「どうして、攻撃を?」
「お前達が、銀河文明にとっての脅威だからだ!お前らの都市と言う都市を、焼き尽くしてやる。都市に住む者は全滅だ!わしの言う事を聞くなら、命は助けてやっても良いが」
「どうすれば、生き残れるの?」
「お前、電池を持っているか?懐中電灯の電池で良いのだが?推進装置に不具合があって、今、ここに停泊している」
「あるわよ…」
「変な真似をすると、原子光線銃が壁を貫き、お前を焼き殺すぞ!」
「…これで、どう?」
マリアンは円盤を、まじまじと見た。どう見ても…これはフライパン…底に張ってあるのは…裏返しにしたフタじゃないの!!

(いけない!いけない!)
マリアンは思い直した。いつも、フライパンを扱っているせいだ!何でもフライパンに見えてしまうんだ!
つい、手が伸びる。

「さがれ!」
慌ててマリアンは下がった。

「ありがたい。これに免じて、貴様に良い事を教えてやろう。我々が破壊するのは、都市だけだ。
   村は、また小都市も人口二万人以下なら、全て残す。攻撃は、四時間後だ。すぐに都市をされ!」

マリアンは、ポカンとその話を聞いていた。

「さがれ、さがれ!ジェットエンジンの劫火に焼かれたいか!」
マリアンは、慌てて下がった。

すると、フライパンの後ろから、ジッポのライターの様な炎が、ポッと出たかと思うと、円盤は消えた。


そして、マリアンは駅へ向かった。電報を打った。
「アシタカエリマス。ハワード。キッチンニハ、マドヲツケテネ」


任務を終えたモイ トレハーノ王子は、帰路で考えていた。あれは、我ながら良い思いつきだった。
ライターの点火用電池が切れていたなど、誰が気づくだろうか?ただ、あのおかげで、物語に迫真性がついた。
何故、重要な情報を教えるかの理由も、もっともな物になった。


隣をホウキに乗った魔女が通る。あんな、時代遅れの物に乗ってる!

ハワードが怠け者と言う訳ではないが、都会に行った恋人を待ち続けているのでは、家の掃除もままならないだろう。
それじゃ、こっちが大変だ。

だから、掃除をして貰う様に説得しなきゃいけない。だけど人間は、
ブラウニー(手伝い妖精)なんかより、居もしない宇宙人の存在を信じてるんだから。


..............

先日、あるホームページ(ウォールストリート ジャーナルだか何か)を見ていたら、そこで、その特派員が、日本の印象として、「この世界では、
『誰もトイレ掃除人を軽蔑しない』」と書いていました。
話の骨子は、日本の都市では、物が盗まれにくい。例えば、自転車はタイヤに鍵をかけて、サドルを取り外さなくても、2時間後に、そのままの姿で、そこにある!
とか、レストランの椅子に財布を置き忘れたら、店を出た後、ウェイターが必死で走って来て、返してくれた。とか言う内容の一つですが、
確かに、私の様な世代では、『トイレ掃除人を軽蔑する』事は邪まな事と習いましたし、事実そう思っています。
(建前上でも)『職業に貴賎なし』。日本でも、最近はそうでもない様ですが、はるか先を行っている米国でも、昔は、こう言う作品があった訳ですね。

記:2013.02.03


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三分 小説 備忘録

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