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一発逆転ミステリー nbsp;ポプ赤木かん子編 ポプラ社(2002)
一発逆転ミステリー

アミオン神父の大穴 ヘンリースレッサーHenly Slesar Father Amion's Long shot 訳:川口正吉 のあらすじ

アミオン神父は天の啓示を聞いた!

今すぐ、天井を修理せよ!
天は、彼の頭に雨漏りを垂らしたのだ。

さて、当っては、ペンキの塗りなおしも必要だ。それには、献金が!

次の日、神父が40人程の信者を前に説教をした後、献金皿を見て驚いた。
財務省発行のアレキサンダー ハミルトンの肖像画が鎮座していたからだ。

「10ドルなんて、初めてだ!いったい誰が?」
「初めて見た顔です。乱暴者の顔つきで、変な服を着ていました」
「変なとは?」
「ピンクのチェック柄の奴ですよ」
「おお、あれか。しかし、わしは、お前が言う様に、あれが、『変』とは思わんぞ。アレキサンダーじゃからな」

翌週、またピンクのチェック柄は現われ、皿にはアレキサンダーが鎮座した。
神父は礼拝後に、男に声をかけた。


「ちょっと、お話して良いかな。多額の献金を感謝しております。お名前は?」
「シャリダンって者です。いやあ、教会なんて、生まれて始めてなんですが、試しにと思って祈ってみたら、
   とっても良く効いたんですよ」
神父は40年の教会奉仕も、価値があったと思った。

「なんたって、ここでの説教を聴いた日のレースは8レース中、6回の当りですよ。それも1回は20倍と来る!」
「ちょっと待ってくれ。私の話を聴いてから、競馬でもやったと言うのかね」
「ええ、ええ、奇跡ですよ。奇跡。すごい御利益だあ」
「祈りはギャンブルのためにあるんではない」
「それは、判っております。しかし、何ってたって20倍の奇跡を起したんですから」

「良いですか。その話を聴いた別の人間が、私の話を聴いて、別の馬を祈る。
   そうなると、どう、なります?今度は当らなくなる」
「ところが、奴らは、まだ気が付いちゃいない。そこが付け目なんですよ」
「はああ…」
「怒ってるんですか??もう、ここには来るなと…」
「そうは言わん。ここは、神様の家だ。誰も拒むことはない」
「じゃあ、また来週、頼んまっす!」


翌週、神父は驚いた。35ドル!
「これは、どうしたんですか?」
「いや、馬券を買う前に決めたんですよ。レッド デビルが着たら、5ドル献金だ、と。そしたら、大穴も大穴で」
「シャリダンさん。私はあなたのために祈っています。しかしデビルとは…」
「おお、神父さんも、あたしの味方ですか?」
「いや、馬にじゃない。あなたの魂の救済にです。心をこめて祈っています」
「何でもいいや。まあ、とにかく頼んまっす」


翌週シェリダンは新車で現われた。
「これは、これは、凄い車ですな」
「ええ、おかげで、全く借金なく買えました。ただ、この車は、とんでもねえガソリン喰らいで。
   必死になってお祈りしました。それが報われて、18回中、14回的中です」
「そうですかあ」
「ねえ、神父さん。言っちゃあ悪いが、あんたの教会も塗り替えが必要だ。もしも2、3ドル注ぎ込んでくれたら…」
「私は、ギャンブルはやりません」
「いえ、話だけですよ。今度のレースは絶対の牝馬がいるんです。それで倍率は20倍。
   こりゃ願ってないチャンスだ。それで一生懸命にお願いをしてるトコなんすよ」

その後、教区員が集まって、教会の維持費が高いとか、
修理費なんぞ、とんでもないと、神父を憂鬱にさせる会議が続いた。


翌日シェリダンがやって来た。
「神父さん。お世話になりました。あっしは、このレースに買ったら、田舎に引っ越します。
   幸い、明日の天気も良さそうだし、うまく行きそうですよ」
「シェリダンさん。私があんたに金を預けたら、レースに賭けてくれるかね。500ドルなんだが」
「おお、神父さんも、その気になりましたか。もちろんですよ」


シェリダンが立ち去った後、神父は不安になった。やはり賭けは止めようと思った。
しかし記名帳を見ても、シェリダンの名前欄の横に住所はなかった。

主教がやって来て、神父は罪を告白した。
「あなたは神父の身で、競馬に賭けたと言うのですか?」
「は、はい。つい、財政の事を考え、あの男に託してしまったのです」
「神父!あなたの行なった事は、神に仕える者として、けっしてしてはならぬ事です。さ、早速始めましょう!」
「な、何をですか?シェリダン氏の住所は判らないのです」
「違います。祈るのです。その馬が勝たない様に、神の名で不浄の金銭を得てはいけません。さ、早く!」

神父は一心不乱に、祈った。馬が勝たない様に。これまでにない程、一生懸命に!


さて翌日。

浮かない顔をした男がやって来た。
「どうしました。シェリダンさん」
「ええ、馬が負けてしまって」
「そ、そうですか…」
「で、これが配当です」
「どうして?馬は負けたんでしょ」
「2100です。思ったよりは少ないでしょうが。あの馬は、直前まで一番だったんですが、急に力が抜けて…」
「なら、どうして配当が出るんです」
「いや、あっしのはゼロになりました。しかし、神父のは安全を考えて、順位にしたんですよ。
   馬は2着だったんで、配当が出ました」
「じゃあ、これは私が貰っても良いのかね」
「ええ、あっしは、あんまり利口じゃないんで、有り金、全部すっちまいましたが、また、元の商売に戻りますよ」

そしてシェリダンはすこし、もじもじしていたが、献金皿の前で、なけなしの金を置いて帰って行った。

..............

つまり、騙されたのは神父ではなく、読者だったと言う訳で、にくいオチです。

これも、ヒッチコック劇場に売れるんじゃないでしょうか。
ある意味、Oヘンリーの『警官と賛美歌』(だったっけ?)的じゃないでしょうか。(ちょっと、違うか?)

記:2013.01.16


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三分 小説 備忘録

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