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一発逆転ミステリー nbsp;ポプラ社(2002)
一発逆転ミステリー

ヒッチハイカー Hitch HikerロアルドダールRoald Dahl (ヘンリーシュガーのわくわくする話より) のあらすじ
一発逆転ミステリー 赤木かん子 ポプラ社(2002)

新車を買った。BMW3.3リッター コンパーチブル。もちろん電動の奴だ。
時速70マイルまでは、不快な音を立てるエンジンも、それを越えると満足の音を上げる。

6月の晴れた日。野には花が咲く。ロンドンまで、車を走らせる。
新車は男の玩具だ。


前方にヒッチハイカーがいた。
俺はすぐに車を止めた。

他人を乗せるのは嫌だと言う奴もいる。決まって大型の高級車だ。奴らは空気を運ぶのを楽しむクソ野郎だ。

ヒッチハイカーを乗せた。
「旦那、ロンドンまで、行きますか?今日は競馬の大きなレースがあるんで」
「行くよ。そうか、私も競馬は大好きだ」
「あっしは、競馬はやらねえ。あれは間抜けがやるもんだ」

「なんだ。じゃあ、スロットかい?」
「あはは、それこそ、金を捨てる様なもんだ。そんな間抜けな事は勘弁だ」
「じゃあ、君の職業は何なのかな?いや、すまん。私は作家なので、他人の生活に興味があるんだよ」
「作家!そいつは凄い。本を書くのは間抜けにゃ出来ん。旦那には腕がありますね」

「君も腕がありそうだね。しかし、私にも、それ程の腕があるとは限らんぞ」
「いや、ありますよ。この車が証拠だ。腕がなくちゃ、持てねえ車だ」
「確かに、安くはなかったな」

「この車、相当スピードが出そうですね」
「時速129マイルだ」
「そりゃ、カタログの宣伝文句でしょ。実際には出ない」
「いや、出るさ。そう言う車だ」
「じゃ、出して見ましょうよ」

折り良く車専用の直線路になった。加速する。
「100マイル、110、120...129!旦那!凄いですね」


その時、警察のサイレンが後ろから聞こえた。
しまった!


白バイが横に付いた。130マイルは出しているに違いない。
路側に止まった。

白バイに乗っていた警官は鬼の様な顔をしていた。

「随分とお急ぎですね。理由は何ですか?陣痛の来たご婦人は、どこですか?それとも、家が火事で急いでいるんですか?」
「いや、陣痛でも火事でもありません」
「じゃあ、きっと、ここらの制限速度を知らないんだ」
「いえ、時速70マイル...」
「じゃあ、制限を50マイルも越えている事はご存知ですね?」
警官は免許証を見て、手帳に、私や、車体番号を記入した。

その時、警官は、横の男を見て言った。
「ところで、この男は誰ですか。どこかで見た事が有る様な...おまえも身分証明書を出せ」


警官は二人分の、身元を書き留めた。
「このスピード違反は裁判になりますよ。それから、お前!お前の面は気に入らん。お前の事も調べてやる!」
警官は行ってしまった。


「くそっ!しまった!...ところで、あんたは本当は何者なんだ?警官が見覚えがあると言っていた」
「旦那だから言いますが、あっしにも、旦那と同じく、腕があるんですよ。この指です」

「ピアノ弾きかなんかかい?」
男の出した指を見た。細長く、繊細。脳外科医か時計細工師か...

「あっしの商売は、習うのが、大変だ。誰も教えちゃくれない。ピアノなんて子供でも弾ける」
「じゃあ、判った。カード使いだろう」
「いかさま師なんかじゃ、ありませんよ。それより、このベルトに見覚えはありませんか?」
「えっ?それは私の腰ベルトじゃないか!いったい、何時の間に??」
「旦那が運転をしている間ですよ」
「馬鹿な!そんな事は不可能だ!」

「じゃあ、この靴紐が、落ちているのを拾ったんですがね」
「ど、どうやったんだ。君が屈む所なんて、一度も見なかったぞ」
「そうです。旦那は見ていないんですよ。あっしの指が動く所を。ところで、今、何時ですか?」
「目の前に時計があるだろう」
「あっしは車の時計は信用できんのですよ」
「その時計は合っているよ。ほら...!!腕時計が??」
「中身は十八金ですね。こりゃ高く売れそうだ。もちろん、中身は偽物と交換しますが」

「返してくれないか」
「良いですよ。旦那には世話になった。ほら時計、それからキーホルダーが4つ、札が3枚に銅貨が4つ...」
ライターと鉛筆、メモ帳。妻から預かった壊れた真珠の指輪。

「指輪は値打ちもんですよ。肌身離さず、持っていないと...」
「つまり、君はスリだ」
「そいつは素人に使う言葉だ。『指の細工師』って言って欲しいな」
「そうか、それで競馬場へ」
「ええ、負けた連中からは頂かない。だけど大勝した連中からはね」

「だが、あの警官には調べられた」
「ええ、でも、あの警官なら大丈夫ですよ。奴はメモを取った。だから、記憶しようとは思っていない」
「しかし、逃げないと」
「これを燃やしちまえばね」

男は、懐から、あの手帳を出した。

..............

そりゃ、まあ、ポプラ社は、水島ヒロの一件では、クソみたいな事を、しでかしましたが、昔からの良質な出版社であった事も事実な訳で、
例えば、この「赤木かん子さんシリーズ」などは好例です。

チョコレート工場のロアルドダールは、好短編の名手であり、その中のOH!ヘンリー的な部分が、この短編には現われています。
(別な作品では、もっとシニカルな面も…)

しかし、この作品は、そのまま映像になりそうな短編ですね。
『ヒッチコック劇場』辺りののワン エピソードになりそうです。いや、なってるかも…

記:2013.01.15


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三分 小説 備忘録

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