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狂言集 日本古典文学全集60 小学館 2001
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狂言集 日本古典文学全集60 小学館 2001 校注 北川忠彦 安田章 靱猿(うつぼさる)のあらすじ
「おお、太郎冠者、今日は遊山と参るぞ」
「ははあ、お大名様、お供仕ります!」
「よい天気じゃのお」
「ははあ、お殿様の、素晴らしい弓の腕を拝見したいものであります」
「わっはっはあ。おっ!何じゃあれは?」
「あれは、猿回しでございます。芸をしておりますなあ。なかなかに楽しいものであります」
「おお、これは珍しい。もっと良く見たいのお」
「こらこら、そこな猿回し、お殿様に、芸をお見せしろ」
「いや、いや芸ではないぞよ。そこの猿を見たいのじゃ。ふむふむ、こりゃ能猿か」
「おい、お殿様が能猿か?と聞いておる。何?...はい、確かに能猿でございます。あ、お殿様、その様に近寄っては!」
「うわあっ。猿が引っかいた!」
「この無礼者めが!射殺してくれよぞ!」
「はああ、畜生のした事でございます。ご勘弁を...」
「勘弁ならん。しかし、この猿、能猿と申したな。ちょうど、わしが持っているもの矢の靱に穴が開いての。
この猿は大きさも丁度良い。皮を脱いで貸すなら、勘弁しよう」
「しかし、皮を剥がれたら、猿は死んでしまいます。」
「借りるだけじゃ、二年もすれば返す。ダメだと言うなら、無礼の角で、射殺すのみじゃ。さ、そこへ座らせろ」
「大事な猿で御座います。家族も同然に長年暮らして参りました。芸も出来ます。どうぞ芸で、ご勘弁を」
「芸はいらん。皮じゃ。ダメなら、射殺すから、そこに置け」
「...わかりました。お貸しします...どうせ殺されるなら、いっそ苦しまぬ様に、
私がこの杖で、一思いに...く、く、く、かんべんせえよ...く、く、く、」
男は杖を猿の頭に合わせる。さて振り被ろうとすると、猿は何を思ったか、男の杖を取り、
船を漕ぐ真似をして、辺りを歩き回る。
「なんじゃ、どうした?」
「...はあ、あれは、船漕ぎと言う芸で御座います。長年やっておりますので、あの杖を見ると、
この芸を行なうのです。あの杖が自分を殺すとも気が付かない畜生の浅ましさで、ございます」
一生懸命に、客から歓声が沸くまで、船漕ぎを続ける猿。
「はああ、何もわからぬ猿とは言え、一生懸命なものじゃなおう」
「...猿めが不憫で、ございます」
「なるほど、判った。皮を借りるのは、止めにするぞ」
「本当で、ございますか!おい!お前も礼を申し上げろ!」
「ははあ、猿が礼をするぞ!これは、これは!賢い奴じゃのお。なんぞ舞えるか?」
「はい、得意でございます。ほれ、舞うてみい」
「あはは、あはは、これは上手じゃあ」
「お殿様、今日は良い事をなされました。猿めも喜んでおります」
「そうか、そうか、おお、猿を見い。あはは、ああ、楽しいのお」
..............
さて、この殿様が良い事をしたのか、悪い事をしたのかが微妙な所です。いや、はっきりしてるか。
ただ、世の中には、この話の太郎冠者の様な、奴がいて、本当に問題なのは、こう言うヤカラの存在です。
記:2012.12.16
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