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21世紀少年少女古典文学館 第十五巻 - 講談社(2010)
21世紀少年少女古典文学館 第十五巻


安宅(あたか)- のあらすじ

源義経は壇ノ浦で平家を破り、天下は源氏のものとなったが、その人気を妬まれ、頼朝から追われる身となった。

弁慶ら家来十二人とともに山伏の姿に身をやつし、奥州の藤原秀衝の元へと逃れる事となった。

御触れは、全国にまかれ、加賀の国、安宅の関では、役人の富樫が、毎日、山伏姿者を調べていた。


安宅の関を通り抜ける事が難しいと知った、弁慶は、あるアイデアを出した。

「力づくで関所を破る事は簡単だ。しかし、それをしてしまうと、その次の関は倍の警備となる。どこかで捕まってしまう」
「では、どうしましょう?」
「恐れ多いが、主君、義経様には、強力のボロ服をやつして頂き、我らの後を付いて来て頂く。奴らの狙いは山伏だ」
「わしも賛成だ。まさか、この義経が、荷物を担がされているとは、役人どもも思わんだろう」
「では!」


関に近づくと、木に生首が飾ってある。五つ。読むと、昨日、身元改めに逆らった者たちとの事。
「いまさら、引き返せん!行くぞ!」


「止まれ!」
弁慶は、得意の、呪文を奏でるや
「そもそも、山伏とは、役の行者の法を受け...」と祈りを、あげ始めた。
これは、どう見ても本物だ。疑う所はない。

「なるほど大仏建立の寄付集めか。なら、勧進帳を読んで頂こう」
勧進帳は、資金集めの、理由を書きつのった物。たしかに、本物なら持っていないはずはない。

「よかろう」
弁慶は、背の荷物からさっと、適当な巻物を取り出すと、
「ここに聖武天皇が...」とアドリブで、理由をとうとうと、まくし立てた。

一同、それを聞き、これは本物に間違いないと、思った。
しかし、富樫だけは別だった。

確かに、勧進帳を持って行くのがルールだ。しかし、本物と思われる山伏達が皆、勧進帳を持っていなかった。
勧進帳など、こんな辺境を行く山伏には与えられていないのでは?
しかし、こいつらは、持っている?いや、本当に持っているのか?

富樫は、そっと弁慶の後ろから、覗こうとするが、弁慶は、体をかわし、巻物をしまってしまった。

「いや、これは失礼。本物に間違いござらん。では、お通りを...」
と言う所に、遅れて、義経が追いついた。


富樫は、これは天が我に味方したと、
「待て!待て!もう少し調べよう。後から着た強力は、お前らの連れとの事じゃが、強力だが、人相が義経に似ておる」

すわ、一大事!
引き立てられる義経。

弁慶は、とっさに、義経の前に出る。
「この、強力めが!貴様の様な者が、義経とか言う悪人に人相が似ているとかで、皆に迷惑をかける!
   貴様、こうしてくれる!足手まといめ!」
と言うなり、強力の杖をふんだっくて、打ち据える!何度も何度も。転げまわって苦しむ義経。

「まあ、まあ、そこまで、せんでも。この者も好きで、こんな顔に生まれたのではなし...」

それを、じっと見ていた富樫が声を出した。
「よく、判った。こちらの間違いの様だ。行ってくれ」

一行はやれやれと、関を出る。随分と離れ、振り向くと、あの富樫だけは、何時までも、じっとこちらを見ていた。


小屋を見つけ、傷付いた義経の介抱のため、一行は入った。
「申し訳ありませぬ、義経殿。あの時は、とっさの判断で」
「いや、礼を言うのはこちらの方だ。あの場で、あの機転が利くとは、神仏の御加護とは、素晴らしいものじゃ」


その時、外が騒がしくなる。
「弁慶殿!先ほどの関の者共が!」

「ごめん」
と踏み入って来たのは、先ほどの富樫と、その手下数名、いざとなれば、相討ちには出来る。


「さきほどは失礼した。主君を思う家臣の心に打たれました。ここは、酒を交わし、ご苦労をねぎらおうと、やって参りました」

と、酒を出す。


両者は、酒を間に向かい合った。

−この酒に何か入っているかもしれない。
−我々の方が口封じに殺されるかもしれない。

互いに疑心暗鬼のまま、黙っていると、


「では、ここで舞を...」と弁慶は立ち上がり、
「鳴るは、滝の水...」浪々と唄いながら、舞を始める。
一同、弁慶を見る。その隙に、義経は、後ろへ引き、そっと戸の隙間に身を滑らせる。

誰も気づかない。しかし、富樫だけが一度、下を見た。

義経は、(はっ!気づかれたか?)と思う。
しかし、富樫は、そのまま、何も気づかぬ、そぶりで、やり過ごす。

(ありがたい)
義経は、そのまま、山の中へ消えて行った。

それから、静かに短い宴席は始まり、富樫達は帰って行ったのだった。

..............

う〜ん。面白いな「安宅」。この話は、知っているのだが、こんなに、ドンデン返しの繰り返しだったとは!
まるで、「隠し砦の三悪人」の知力攻防戦の様ではないか!

で、「あたかも」と言う言葉がありますが、この弁慶の勧進帳読みが元かな?と調べたら、よくある誤り俗説だそうです。
なるほど、俗説は、こうやって出来るのか!

記:2012.12.16


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三分 小説 備忘録

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