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ビアス アウルクリーク橋の出来事/豹の眼
   - 光文社文庫(2011)
ビアス アウルクリーク橋の出来事


アウルクリーク橋の出来事 AnOccurrence At Creek Bridge/ビアス Ambrose Bierce 訳:小川高義 のあらすじ

男は鉄橋の端に立っていた。背中で手首は縛られ、首には縄が巻かれていた。

男の足の下は板の足場だった。枕木に渡された、その下は崖だ。
辺りには見物人がいた。衛兵が二人、男の左右にいた。

中尉が傍にいた。まだ、何の合図も出してはいなかった。

男は農場の主人の身なりだった。穏やかな紳士であったが、軍の規律とは、身なりによって、態度を変えるものではない。


準備が出来た。中尉が敬礼をいて近づいて来た。

男は足の下を見た。下は川。急流...いや、とてもそうには見えない。

カンカンと小さい音が耳に入って来た。何の音だろう?と男は思った。
このまま、逃げられないか?首の縄を抜け、川を泳ぎ、妻子のいる家へ...


ペイトンはアラバマの旧家の出で、南部人としての誇りを持っていた。
心は軍人であった、と言って良い。ある晩、馬に乗った兵士が水を求めた。兵士の軍服は南軍のものだった。

「北軍が線路を直そうとしています。今はアウルクリークの橋を直していますわ。
   汽車を使って、一気に物資を運ぶつもりなんでしょう」
「あれが出来たら、一たまりもない、だれか、あれを阻止できたら」
「でも、列車に妨害を働く者は、何人でも、絞首刑と書いてありますのよ」
「しかし、冬になれば流木が集まる。それに火を付ければ、木橋も燃える...」
兵士は去って行った。


ベイトンへの死刑が執行された。意識が戻ったのは、とんでもなく長い時間が経ったと思われてからだ。
縄から首が抜けたのだ。一瞬、息は詰まったが、戻った。
体は動かないが、揺れて落ちているのが判った。そして水面が見えた。

泳がなくては!銃に撃たれる!

ペイトンは夢中で泳いだ。首を水面に上げると、追っ手の声が聞こえた

手首の縄を!なんと、腕が抜けている、ラッキーだ!
しかし、心臓は口から出そうに、跳ねている。苦しさは極めつけない!
ともかく、泳がなくては...

水面に顔を出す。すこし、楽になった。
体の感覚が戻る。空気を頬に感じる。
トンボだ。トンボが見える。その彼方に、砦。そして、死刑の執行人!

銃弾が顔をかすめる。彼は、下流へ泳ぐ。流されていく。

「狙え!」銃の音がこだまする。

外れるが、今度は大砲だ。凄まじい水煙が上がり、爆流が彼を押し流す。
水流に巻き込まれ、彼の体は回る。空が、砦が、兵隊が、回って行く...


気が付くと、砂浜だった。
手ですくう。この時に感じた砂のきらめき程、美しい物を、彼はこれまで感じた事はなかった。

ここは、どこだ?
見知らぬ場所であった。

彼は空を見て太陽の位置と川の流れから、方角を推量する。
森を歩き、路を見つける。家の方向へと歩く。なかなか着かず、辺りは暗くなる。犬、いや狼の声もする。
夜空の星は、今日はひときわ明るい。

苦しい。喉に触れると、大きな傷が出来ていた。口からは舌が出て、ふくれあがっている。
苦しい。苦しいが、感触が消えかかっている。
まるで、幻覚の中にいる様だ。歩きながら、眠ってしまう様に...

朝日が、出てきた様だ。目の前に光が広がる。
いや、家だ。我が家だ。庭にいるのは妻ではないか。

戻って来たのだ。戻って来れた。
妻は、彼に気づき微笑む。腕を広げ、彼を呼ぶ。妻に近寄り、その体を抱き寄せ様とした瞬間...
何者かが、彼の背中を、グイっと引っ張った。


ベイトンの体は揺れていた。首の折れた死体が、アウルクリークの橋端で左右に揺れていた。

..............


おなじみの、話です。おそらく、連作ものの、ミステリ− ドラマ、アニメーションなどで世界中で模倣されたエピソードですね。

夢落ちの中で、分類すれば、一瞬夢、と言うジャンルなのだと思いますが、発表時に完成されています。
これとは大きく異なる「一瞬無」ネタはあるのでしょうか?たぶん、既に挑戦されている方もいるとは、思いますが...


記:2012.11.18


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三分 小説 備忘録

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