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ヘミングウェイ短編集(一)
   - 新潮文庫(1970)
ヘミングウェイ短編集(一)


殺し屋 The Killers/ヘミングウェイ Ernest Hemingway 訳:大久保康雄のあらすじ

ヘンリー食堂のドアが開いた。二人の男が入って来た。二人はカウンターに座った。

「何にしますか?」
「そうだな。この、フィレ肉のロースト ポークにしてくれ、アップル ソースをかけて、マッシュ ポテト添えだ」

「それは、出来ません」
「何故だ?メニューに書いてある」

「それはディナーのメニューです。6時からなんです」
「だが、もう5時20分だろう。時計を見ろ」

「いえ、5時です。あの時計は進んでいるんです」
「そんな時計は捨てちまえ!なら、何なら出来るんだ」

「サンドイッチ類です。ハム エッグとベーコン エッグ。それから...」
「おい、俺の注文も聞け。俺はチキン コロッケだ」
「ですから、それはディナーのメニューでして...」

「俺はハム エッグだ。お前はベーコン エッグでいいな」
「ああ」


「おい、何か飲み物はあるか?」
「ジャンジャー エールにソーダ、あとはルート ビールです」
「大人の飲み物の事を言ってるんだ」
「アルコール類はありません」
「なんだと?とんだ、しけた町だ...なあ、にいちゃん、この町はなんて言う名前だっけ?」
「サミットです」
「じゃあ、サミットじゃあ、夜は、何をするんだい?」
「ディナーを食べるんです」
「あはは、ちげえねえ。頭の良いお兄ちゃんだ。お前はの名前は?」
「ジョージです」
「そうか、それで、この料理を作ったのは誰だ?顔を見せてくれ」

「コックですよ。黒人です」
「そいつの顔が見たいんだ。出してくれ」
「悪さをする様な男じゃないですよ」
「判ってるよ。顔がみたいだけだ。早く呼べ!俺は黒人が大好きなんだよ」

奥から男が出てきた。
「あたしが、コックのサムですが?」
「他にコックはいねえのか?」
「ああ、この店は俺達だけですよ」

「なら、話は早い」
男達は、サムを縛り上げた。


「聞きたい事がある。スウェーデン人を知ってるか?オール アンドルソンって奴だ。奴は毎晩、
   この店に飯を食いにくるんだろ?6時きっかりだ。ジョージには手伝って貰いたい。
   奴が来たら、この席に座らせろ。他の奴が来たら、コックは出かけてる、と言え」
「...はい...」
「で、騒ぎが起きるかも知れないんで、静かにしてて貰いたいんだ。わかったか?」
「どうして、オール アンドルソンをヤルんですか?」

「理由は知らねえよ。頼まれただけだ」

6時15分になった。運転手のマックスが来た。
「やあ、ジョージ。いつもの...」
「あいにく、サムが出ていて、30分すれば戻るが」
「じゃあ、またな」

「兄ちゃん、うまいぜ。本番もその調子で頼むよ」

サンドイッチの客は、ジョージが作って追い返した。

時計は7時を指した。

「どうする?」
「もう一人待とう。次の客で来なけりゃ、この仕事はお終いだ」
「なんだ?すっきりしねえ話だ」

もう一人の客が来た。サムがいないと聞くと、怒って帰って行った。

「兄ちゃん達は運が良いな。明日、競馬でもやってみな」
男達は出て行った。


「サム、大丈夫か?」
「ああ、何でもねえよ。こんな事」
「あいつら、オール アンドルソンを殺しに来たんだ。教えてやらないと!」
「おい、ジョ−ジ。よけいな事には首を突っ込まん方が良いぞ。若いもんは、すぐに、そうなる」
「ああ、でも、教えなきゃ!」
ジョ−ジは走って行った。ハーシュの下宿屋へ。

「オール アンドルソンはいますか?」
「ええ、上の部屋にいるわよ」


「アンドルソンさん、ニックです。ヘンリー食堂の」
「入ってくれ」

「店にいたら、二人組の男が入って来ました。あんたを探していたんです。
   あんたを、縛り上げて、殺すって...」
オール アンドルソンは、何も言わなかった。
「いや、嘘じゃないんです。信じられない話でしょうが。いや、僕だって、
   今の事が、まるで冗談みたいに感じられるけど、本当なんです!」

「ありがとよ」
「そいつらの人相は...」
「どんな奴かなんて、知りたくないよ」
「でも、警察に知らせないと」
「そりゃ、止めてくれ。どうにもならんのだから」
「でも、ただの脅しじゃなさそうですよ」
「ああ、ただの脅しじゃないんだ。でも、もう、どうにもならんし、俺も疲れた。
   兄ちゃん、わざわざ来てくれて、ありがとう。じゃあな」

ジョ−ジは下に降りた。
「アンドルソンさんは、ずっと部屋に篭りきりなんですよ。元々はシカゴでボクサーだったらしんだけど。
   大人しい人なんですが、ずっと部屋に入ったきりでは...」


「どうだった」
「だめだ、逃げ様としない。きっと、シカゴで、トラブルに巻き込まれたんだろうに」
「誰かを裏切ったんだろう。裏切り者は殺されるんだ」
「僕は、この街を出るよ。殺されそうになりながら、部屋でじっと、
   待っている人間がいるなんて、恐ろしすぎる。我慢できないよ」
「でも、そんな事、考えない方が良いぜ」

..............


これは、名作ですね。キリマンジャロより、すっきりとして、本質をえぐっている。
あっちは、まるで、"キリマンジャロ ブレンド"ですが、こっちは、ストレートの香りがします

記:2012.11.13


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三分 小説 備忘録

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