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宇宙の妖怪たち - 早川SFシリーズ
宇宙の妖怪たち


論より証拠 Proof of the Pudding ロバート シェクリイ Robert Sheckley (1952)訳:都筑道夫 の あらすじ

ノミで石版に、文字を彫る。

我は人。
最後の者。
我ら、全てを作り、全てを壊した。

よし、なかなか良い文章だ。
しかし、誰が読むのか??


それから、工具を消すと、夕食を創り上げた。
テーブル、皿、フォーク、特に食べたい物はなかったので、
いつもの、スープにハンバーグ、マッシュポテトとデザートを出した。

俺が、この地球に最後に残った男なのは確実だ。

俺は元、西半球防衛軍、大尉。戦争が始まり二日目に、
これが最終戦争となる事が判った。

人類全体にとっての。

混乱の中、大型宇宙船で逃亡し、月の裏に隠れた、まずニ週間。
戦争は12日で終わった。

しかし、飛行物体に対する自動応戦機の稼動を考え、更に半年待った。

12日間の戦争は、徹底したものだったようだ。

中立国と言うものはなく、初日に、あらゆる爆弾が、あらゆる所に落とされた。
北極や南極すらも戦火にまみえた。

それから、毒ガスが空気まかれ、風に乗り世界を覆った。
最後には、もう生物の耐えた世界にバクテリア、ウィルスが自動散布された。

それでも、どこかに生き延びる者はいるのである。

彼は、半年後、慎重に地球に戻り、街を山を飛び回った。
しかし、どこにも、生きている動物を見かける事はなかった。

この間、彼は、危険なほどの放射能を浴び、ウィルスにも感染されたはずだ。
しかし、彼は無事だった。

それどころか、不思議な、そして有益な力を得たのである。

ある時、木草の絶えた山に降り、彼は思った。

木が欲しい
すると、突然、木が現れたのである。

彼は山を川を思った。
すると、山が、川が現れたのである。

彼が、そのものを良く知っている場合は、創造物はきちんと出来た。
しかし、彼がそのものを、あまり良く知らない場合、うまくは出来なかった。

ともかく、彼は世界を創り始めた。

木、草、鳥、けだもの。彼は次々と創って言った。
しかし、人間だけは、創ろうとは思わなかった。


文字を彫った石版すらも、本当は、思念で作れたのであるが、
これだけは彼はわざわざ、掘って作ったのだ。

改めて、石版を見て思う。
この石版を読まずとも、この焼けた大地を見れば、この星の住人が、何をしたのか明白だ。

この彫刻には6日もかかった。随分と無駄な事をしたものだ...


その時、彼は足音を聞いた。
彼が振り返ると。

「こんにちわ。石を削る音が響いたので来てみたわ」
彼が驚いていると、
「あなた、凄いのね。ものが創り出せる。魔法ができるの?」

「お、俺の力だ。お前、どこにいた。どうやって助かった?仲間は?」
「私は、あなたの宇宙船にいたのよ。あなたが宇宙船に大量の食料を
   積んでるのを見て、ピンときたの。それで、お邪魔させてもらってたの」

「しかし、同乗者がいた形跡はなかった。お前は、俺の創造物じゃないのか?」
「あたしは、創造物じゃないわ。あなたの宇宙船の倉庫に入って、氷付けに
   なったけど、生き返ったの。溶けるのに、あなたが倉庫を開けてから、4、5日かかったけど」

「まあ、いい。とにかく俺には仲間が、特に女性が必要だ。ちょっと後ろ向いてくれ」
彼は、気の利いたシャツとズボンを創ると、ボロボロの軍服と取り替えた。

「もう、振り返って良いよ」
「あら、素敵な格好ね。あたしのも創って」

3回創り直して、ようやく彼女の気に入る服ができた。

「俺にできるんだから、今の地球では、君もできるかもしれないよ」
「試したけど、私は才能ないみたい。どうも、この世界はまだ男性優位の様よ」

「やっぱり、君は、俺の想像物なんじゃないか?」
「だったら、もう一人創ってみれば良いじゃないの。あたしより、もっと美人を」

「なるほど、やってみよう」

出来上がった女性は、何とも言えないものだった。手足の長さはバラバラ。
目つきは、どうにも好きになれないもので、動きも、ぎくしゃく。
まるで、カラクリ人形だ。


では、ここ数日計画を練っていた都を創ろう。
平坦な土地を丘上から見下ろし、子供の頃読んだ千夜一夜物語の光景を思い浮かべ、再現した。

銀色の門。象牙色の欄干。大理石の階段。水路がめぐり、小鳥がさえずる。
街中には薔薇園があり、それ以外にも様々な花が咲き乱れている。

大きな池に、船を浮かべ、その中には、豪華なご馳走が。

「素晴らしいわ。この都!」
「ああ、しかし、僕が死んだ後でも、これは残るのだろうか?」
「そんな先の事は、気にしなくていいわ」

「君はどこか、別の星に行きたくないかい?」
「また宇宙船に乗るの?戦争を思い出すから嫌だわ」

「どう?わたしは想像の産物じゃないって気がして来た?」
「ああ、君を信じるよ。ところで、君の名前を聞いていなかった。何だい?」

「ジョウンよ」
「苗字は?」

「苗字なんて、関係ないわ。どうせ貴方と同じになるんだから」



..............

この話、なんつうか、
男が創造主になった後の、展開が、まどろっこしいですよね。

世界を創れるのに、女は創れないとか...なんか不思議です。

で、しかし、子供はどうやって創るの??


記:2011.08.20

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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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