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宇宙の妖怪たち - 早川SFシリーズ
宇宙の妖怪たち


男が悲鳴をあげる夜 The NIght He Cried フリッツ ライバー Fritz Leiber (1953)訳:都筑道夫 の あらすじ

あたしは首を上げて、自慢の胸を突き出した。
ブラジャーのお世話にならずに、ブラウスを前に張り出させている、この胸。

あたしの前に止まった車は、コンバーティブル。
地球の習慣、言葉、流行。私は何でもマスターした。完璧な”人間”よ。

「よう!ベイビー!」
降りてきたのは、顔の細い、イイ男。狙いはこんな感じの男なのよね。

あたしは、車に飛び乗った。
男は車を出す。

「ねえ、あなたの名前は?」
男は笑って答えない。

「スリッキイってとこかしら?」
「お前、俺の名前を知らんのか?女を扱わせたら、この街一番の男さ」

「そりゃ、良かったわ。ところで、あたし、銀河調査社の者なの」
「そりゃ、雑誌社かい。記者さんなのか?」
「貴方のやってる、女の扱い方を知りたいのよ。もしかして、それって不純な事をしてない?
   セックスって言うのは、子孫を作り、お互いの愛情を高めあうための、ものなの。
   貴方は、それを実行している?」

奴は、ピストルを取り出し、あたしの脇腹に押し付けた。
「これでも、偉そうな事を言えるのかい?」
「そうそう、これよ。これが私の言ってる事の一つ」

せっかく、見事に造った胸の膨らみを滅茶苦茶にされて、あたしは、
車から、弾き飛ばされた。

スカートもめくり上がって、ちょっとセクシーだったかしら。
あたしは触手を伸ばし、バンパーに絡め、車の後ろに張り付いた。

脇腹の構成物が足りなくなったので、車の塗装材と空気を混ぜて、そこを埋めた。
それから、車のボディ材を拝借し、指環やネックレスを、造った。

スリッキイは、一軒のバーに車を止めて、中に入った。
私は、地球での”恋の仕方”を、おさらいしてから、シートに座って、
奴が帰って来るのを。待った。


「ハーイ、スリッキイ!」
彼は、目ん玉を向いて、すごく嬉しそうな顔をした。

「お、お前ら、双子か??」
何それ?気の利いた冗談とは言えないわね。

「かもしれないわ」
「お前の狙いは何だ?」

「狙い?あたし、アンタに惚れちゃったのよ。格好いいわあ」
「まあいい。こりゃ小説のネタになるな。こう言う奴だ。銀河調査社から女が来る。
   すごい美人だ。青年が彼女を好きになる。ところが、彼女の住む星は全てのものが
   放射能を帯びている。彼女自身もだ。彼女に触れたら、青年は死んじまう。大好きだが
   触れることができない。どうだい?」

「それ、面白いの?」
「いやボツだ」

車は、高級マンションの前で止まった。
車から降りたスリッキイは、車後部のバンパー辺りの塗装が、はげているのに、嫌な顔をした。
部屋に入ると、ベッドの上には『ブロンド女が寝ていた』!!

「なに、この女!こんな女はすぐに、叩き出して!」
あたしが言うと、寝ていた女は、銃を取り出し、あたしに向けた。

あたしは、腕を触手に変えると、スーッと伸ばして、女の銃を取り上げて、ベッドに置いて、
また、元の腕に戻した。

(え????)
女は、驚いて、マヌケな顔をした。

「早く追い出して!」
「まあ、まあ、あせるな。ベイビイ」

「じゃあ、あたしがやるわ」
あたしが、スカートの下から、銃を取り出す振りをした。
そしたらスリッキイは、ピストルをいきなり、ぶっ放して来た!

あたしの方によ?どう言う訳?

あたしも、身をかわしたけど、至近距離だったんで、弾丸は右目に命中。
顔の右半分が、吹っ飛んだ。

あら、困ったわ。私は左目でウィンクして、浴室に倒れこんだ。

しばらくすると、寝室の二人は、ベッドで、何やら始め出した。
これこれ!男と女が二人っきりになったんで、始まったらしい。
さあ、調査開始だわ。

「ねえ、スリッキイ。その女にしてる事を、あたしにもして」
スリッキイは泡を吹きながら、あたしの体めがけて、ありったけの
弾丸を撃ち込んで来た。随分な対応ね。

ドレスは直しづらいけど、ともかく体の方は直して、逃げていったブロンドが
残したドレスをかぶって、スリッキイの前に出て行った。

「ねえ、スリッキイ。恋って言うものは...」

スリッキイは飛び上がって、逃げ出した。

私はブラジャーの中から触手を伸ばすと、彼の体を絡めて、引き寄せた。
ベッドに寝かせた彼の横に添い寝すると、やっと私も落ち着いた。

私は本来の姿に戻って、震えている、可愛い彼の体を、7本の触手で優しく撫でた。
声帯だけは、人間のままで。

私は通称ヘプタパス。
あたしがスリッキイの事を、どれだけ愛しているかを、一生懸命伝えているのに、
彼ったら、泣いてばかりなのよ。どうしたら、良いのかしら?


..............

スラップ スティックのスプラッタ コメディって言う事でしょうか。

ちょっとだけ、現代っぽくしましたが、基本的に、現在でも充分アリの設置だと思います。

設定としては、ハーラン エリソンが書きそうな感じなのですが、
ちょっと、雰囲気が違います。クリープショーなんかに感じですかね。

記:2011.08.16

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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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