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宇宙の妖怪たち - 早川SFシリーズ
宇宙の妖怪たち


逃亡者 Desertion クリフォード シマック Clifford D Simak(1952) 訳:福島正美 の あらすじ

すでに、木星のガスの海に消えた調査員は4名。
我々は、資源調査にやって来た調査隊。

5人目のアレンを送るのだ。既に4人が行方不明になっている木星の中へ。

ガスが激しく渦巻く、この極めて厳しい環境。
我々は、ここから有用な物質を探すために、調査員を降ろす。

ここでの調査は、特別な方法で行われる。
木星の環境は、高気圧、高アルカリ、暴風雨で余りに厳しい。
そのため調査船を出す事ができない。地球の素材で作られた物では、やがて粉々になってしまうのだ。

できる事と言えば、特別なロボットを作り、遠隔操作する事くらい。
モニター越しに、レバーで制御し操作するのだ。ぞれは随分と、不自由な活動である。

そこで、我々は、調査員を「転移」させる。
転移先は、木星に住むものの中で、比較的高度な発達をした生物、ローパー。

彼らはこの地に適合し、自由に、この悪環境下で活動できる。
彼らの体を借りるのだ。

転移機は、遠くから木星に生きる生命を捕捉する。そしてその行動・形態を、完全に捉えた後で
その精神に、調査員の意識を移してしまう技術である。転移された意識は対象へ移動してしまう。

遠隔転移は危険な技術でもある。不具合があれば、例えば捕捉が不完全であれば、
転移者の意識がどうなるかは、判らない。
もしかすると、転移中に、何か不具合が発生しているのか?

既に4人も行方不明に、なっているのだから...

転移オペレータのミス スタンリイがやって来た。
「ファウラー、私はアレンの転移に反対だわ。これ以上、死刑宣告される人を、増やす必要はないわ」
「ミス スタンリイ、これまでの転移に、不具合が生じていた、と言う事は考えられんか?
   例えば、座標にズレが合ったとか」
「ないわ。転移は完璧だった。木星自体に何か原因があるのよ。彼らを飲み込む何かが」

俺は思う。
...ミス スタンリイは信頼できるのか?
そこにファウラーの愛犬、タウザーがやって来た。ファウラーの顔をペロペロ舐める。
まったく、可愛い奴だ。

そして、5人目のアレンを送る。しかし、彼も直ぐに、行方不明になる。


「ファウラー、どうするの?まだ死刑を続ける気?次は誰?アンドリューズ?彼は大学に
  戻りたがってるわ。それともオルソン?彼はもうすぐ除隊よ。年金生活が待ってるのにね。
  この調査は、もう誰の目にも自殺行為よ」

「いや、今度は二人だ。これでおしまいにする。一人はタウザー」
「タウザーって、犬の?あなた、気は確か?」

「ああ、確かさ。俺が居なくなったら、あいつは寂しがるからね。相棒は俺だ」


ファウラーは転移した。成功のようだ。

ファウラーは、息を吸った。まるで春の、そよ風。
ローパーの体内で感じる、木星の過酷な大気は、心地よいものだった。
激しい大渦巻きも、猛毒の死のガスも、時速200マイルの暴風も。

向こうから、相棒のタウザーが、やって来た。
「この体は最高だ。まるで、子犬に戻った時のように自由だ」
「タウザー!お前、話せるのか?」
「いつだって、あんたに話していたよ。あんたが判らなかっただけさ。しかし、
   この嵐の震動は、まるで快適な音楽のようだ。アンモニアの香りも素晴らしい!」

アンモニア?音楽?タウザーは、そんな事を感じていたのだろうか?犬のくせに?
そして、ファウラーは気がつきます。

自分の意識が、極めて鮮明になっている事を、
この大気の成分。何がこの現象を起こしているのか。それらの答えが自分の
頭にスラスラと浮かぶのです。

(俺って、こんなに、頭が良かったかなあ。それにタウザーの奴も...)

そうか、俺はローパーの中で、初めて脳を100%使う事ができたんだ!
タウザーが明晰になったのも、同じ事が起きているに違いない。

人類は、いや地球の生物は、あの環境の中で、ぼんやりとした意識しか持たされていないのかも知れない..

そして、彼らを迎える、木星という星の素晴らしい自然に、引き付けられます。
この素晴らしい世界の、素晴らしい環境。

これを、高圧力の悪天候としか見られないなんて、地球人とは、何と愚かな!
ここから、もう出たくない!

それは、タウザーも同じ気持ちでした。

「戻ったら、俺は、また犬にされてしまうよ]
「俺だって、人間にされてしまう」

そして、彼らは木星の渦の中へ、消えて行ったのです。


..............

ちょっと、説明が下手でしたが、
こんな感じの、自分が作ったミステリアスな設定で、強引に読者をネジふせて話を進めて行くスタイルは、
シマックの得意のスタイルで、他にも、ヴァン ヴォウトなんかが、こんな感じです。どっちも、私は好きです。

意識を、別の生物に移しても、そのまま意識が継続するという、チャネリングみたいな事は、昨今のSFでは
お笑い草になりますが、
(現在では、人間の脳=ハードウェアは1台1台違ったプログラムでしか動かないコンピュータなので、
他人の知性=プログラムを入れても、全く動かない...という方が、定説になっているとおもいます)

しかし、同じ環境が、生物によって全く異なるという感覚は、なかなか面白いと思います。


記:2011.08.12

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三分 小説 備忘録

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