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宇宙の妖怪たち - 早川SFシリーズ
宇宙の妖怪たち


魚怪 Fish Story レスリイ チャータリス Leslie Charteris (1953) 訳:井上一夫のあらすじ

フロリダのマラソン海で、その老人の姿は良く見かけられた。
老人は、いつも、のんびりと海を眺めているのだった。

会う度に挨拶をしていると、向こうも会釈する様になった。
一度、「何を見ているのか?」と尋ねた事がある。
答えは、「いやあ、魚を見てるんでさあ」と言うものだった。

この老人の事を、人に聞いた事がある。

「昔はアンドリュー爺さんも、漁師をしてたんだ。女房と一緒にね。
   でも、ある時、その女房が海に落ちちまった。溺れて、死んでしまったんだ。
   女房は、泳ぎが得意じゃなかったんだな。

   それから、爺さんはあんなに好きだった漁師を辞めちまった。
   日長、一日、海を眺める生活が始まったのさ。
   俺も昔馴染みだから、時々、手間仕事を分けてやる。
   それで、どうにか食いつないでいるって訳だ」


ある日の釣帰りに、爺さんに、声をかけられた。
「どうですか、大漁だったんじゃないですか?」

「ええ、キングフィッシュが沢山釣れたけど、うちは女房と二人暮らし。
   沢山あっても仕方ないので。みんな逃がしたんです」
「そりゃ、良い心がけですな」

そばに、大きな海水溜りがある。ここは海とは離れているが、
釣れ過ぎた魚を、逃がす者がいて、中では魚が泳いでいる。

爺さんは、そこで泳ぐ魚を見て、言った。
「これが泳ぐって事だ。あそこの奴らは泳いでいる内に入らん」

爺さんは、シュノーケルを付けて泳ぐ者たちを指差して言った。

「そうは言っても爺さん。魚と人間は体つきが違う」
「いや、魚を見ていれば、コツが判りますよ。教えてあげましょうか?」
「いやあ、そりゃ。また今度にしよう」

「奴ら、また、モリで魚を突付き回している!」
シュノーケルの男達は、魚をモリで捕っているのだ。

「あんな事をされたら、逃げ切れたって、鱗をやられて、後はデカイ魚の
   餌になるだけだ。おまけに巣の小魚を追い散らしまう奴もいる」

「爺さん、魚の気持ちが判るんだね」
「いつも、見てりゃ、何でも判りますよ」

「泳ぐってのは、こうやるんだ」
爺さんは、海に潜った。1、2、3、4秒後、爺さんがぽっかり顔を出した所は、
50ヤードも先!
...って事は100ヤードを8秒。こりゃ、世界新記録だ。きっとイルカ並みのスピードだ!

爺さんは、また潜ってこっちに戻った。1、2、3,4、ぴったり4秒!

「爺さん、あんた水泳の選手になるべきだ。世界記録を塗り替えるよ!」
「私には興味はありません。あんた以外に、見せた事も無いし」

「だったら、指導者はどうだ。そうだ、僕に教えてくれ!」
「あんたは、さっき断りましたよ」

「私は、人魚と暮らすんです。そのために練習してるんだ。オリンピックのためじゃない」

俺は思った。
人魚と暮らす?爺さんは、ちょっと気が狂っている。
確かに、みんなもそう言うが...


そして、ある晩、爺さんは、村の飲み屋を『はしご』した。
あの店で一杯、この店で一杯。何もしゃべらず、ただ、次々と店を変えたそうだ。

それから海へ泳ぎに行った。しかし、戻って来なかった。
あんなに酒を飲んで泳ぎに出ては、戻れるものも、戻れはしない。


私は妻と、海で泳いでいた。
沖まで泳いだ妻が言う。
「ここまで、いらっしゃいノロマさん」
「ノロマじゃないぞ」

私は、潜ると、妻のはるか沖で顔を出した。妻は驚いた!
「あなた、私より全然泳ぎがうまいじゃないの!今まで隠していたのね?」
「いや、魚の気持ちになっただけさ。しかし、この泳ぎは止めた方が、良さそうだな」

私は、二度とその泳ぎ方を試す事はなかった。


..............

老人と海って訳ですか。
何か、いま一つな感じが...


記:2011.08.11

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三分 小説 備忘録

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