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終点:大宇宙! - 創元SF文庫(1973)
終点:大宇宙!


魔法の村 Enchanted Village A.E.ヴァン ヴォウト 訳:沼沢洽治(コウジ) 1973の あらすじ

「新しいフロンティアの探検者達」
そう呼ばれて飛び立った船は、火星の砂漠に激突し、ジェナー 一人が生き残った。

吹きすさぶ嵐の中、ジェナーは歩いている。
口では、ぶつぶつと呪詛を吐く。
「新しいフロンティアの探検者達」
自分の馬鹿さ加減に腹が立つ。

目の前の砂漠に大きな、かかしの影が出来る。
(管理者注:これは、ジェナーが昼と夜の中間領域を歩いている
   と言う事を表していると思うのですが、判りにくいぞ、ヴォウト!)

その山に辿り着いた時には、食料は尽きていた。しかし彼は登る。
そこで、彼が見つけたのは、谷底にある、小さな村だった!


木々に中央広場の大理石。建物は低いが、四本の塔がある。

村に近づくジェナーの耳に、口笛の様な音が聞こえた。
音は高いかと思うと、低くなり、消え、また現われる。不自然だ。

ジェナーは足を滑らせ、谷底へ転がって行った。

ようやく村まで降りると、あの音は、まだ聞こえていた。
村には、木があり、実がなっている。空腹にジェナーは思わず、実をもぎ取る。
しかし、火星のものは、化学検査を受けなければ、何一つ口にしてはならない!
と言うのが、訓練中の鉄則であった。

幸い、彼は、化学検査道具を持っていた。彼自身の"胃"である。
ジェナーは、おそるおそる、その果実の隅をかじった。

苦い!

あわてて、吐き出す。しかし苦いだけではない。
残った果汁が、歯茎を焼く。激しい吐き気が、おしよせる。

彼は、大理石の上に崩れた。震えが体を襲う、熱が湧いてくる。彼は意識を失った。


彼は気が付いた。苦痛は収まっていた。あの音もしない。では、あれは俺の接近を知らせる警報だったのか?
腰の銃に手を伸ばした。しかし、ない!いや、とっくの昔に無くしていたのだ。

ジェナーは村の調査を始めた。建物に入ろうと接近すると、入口がかなり低い事に気付く。
人間用のものではないらしい。屈み込んで、中へ入った。


4つの家畜小屋の様な仕切り。地下にも4室。生物はいなかった。
生物がいない、と言う事は、食料もない、と言う事だ。

そこで気が付いた。また、音が始まった。それに、霧、いや、天井から彼に降り注いでいるのだ!
彼は外へ飛び出し、ハンカチで拭った。


改めて思う。ここは砂漠のオアシスだ。ただし、人間のためのものではない。
そして、ゆっくりと考えた。あの霧。あれはシャワーだ。火星のシャワーだ。自動装置なのだ。
それなら、もっと調べてみよう。

彼は家に戻り、部屋を調べる。
ある部屋に行くと、べっと、としたものが出てくる。彼は、そっと指に取り、舐める。
そして、強烈な吐き気を感じ、一目散に、外へ駆け出したが、… 間に合わなかった。


また、あの音がする。気が狂いそうだ。きっと、これも、この村の元住人には、心地良い調べなのだろう。

彼は、元の砂漠へ戻る。登ってから、眺める村は、まるで、天国の様だった。
しかし、実際は、何も与えてはくれない。火星人は滅び、彼等の文明だけが生き延びているのだ。

村へ戻る。ここは砂漠の土地だ。どうして、木が生えるのか。
そして、彼は、木は、あの大理石から生えているのだ。彼は大理石を調べる。
しかし、それに触れると、強烈な痛みに指を引っ込めた。指先には血豆が出来ている。
大理石は、警戒しているのだ!


ジェナーは思う。これは、昔の御主人に奉仕するための召使だ。俺は他人なのだ。
しかし、有能な召使なら、御主人が変われば、適合出来るのでは?ジェナーは思った。

この大理石は、周りのものから、物質を作り出す。大気から酸素は、水の元だ。
音楽は不愉快。シャワーは毒ガス。食料は毒。しかし、それさえ、判らせれば!

彼は熱に浮かされながら、彼は思う。そして、また、あの吐き気をもよおす食料の部屋へ行く。
今度のものは、前より黄色っぽかった。

彼は、口に入れる。まるで、粘土とガソリンを混ぜた様な。彼は吐き出す。


喉が乾いた。水を飲もうと、残り少ない水筒の中身を、あわてた彼は、大理石の上に零す。
必死で、這いつくばって舐めるジェナー。何故か、水はなかなか、なくならなかった。
水がなくなり、彼が口を離すと、大理石はボロボロになっていた。
大理石は、手持ちの水を全て吐き出し、ボロボロになったのだ。

この大理石は、水と言うものが判るのか?彼がこぼした水を元に、模倣した。
彼は、ポケットを探り、パン屑を見つけた。それを大理石に置く。


やがて、現われた、クリーム状の物質は、酷い臭いのものだったが、とりあえず食えた。
まるで、腐っている様だった。もしか、するとサンプルが腐っていたのかも、知れない。
ただ、村が、彼を養って行こうとしているのは、確かだった。

彼は、それから、周囲の探索を始めた。しかし、何日経っても、何も見つからなかった。
大理石が、用意してくれる食料も、日ごとに減って来た。


つい眠ってしまった彼が、起きたのは、バイオリンの音に気付いたからだ。
彼は、これは幻覚かと思った。しかし、幻覚は、おそろしく精巧だった。
熱かった部屋の温度も、快適になっている。おいしい、スープの香りもする。
彼はシャワーを浴びる。涼しく、心地よい。

村が適応してくれたのだと、彼は喜びをかみ締める。

そして、彼は、喜びに"しっぽ"を振る。その長さは1.2m。長いくちばしからは、おいしいスープが滴っていた。

..............

あああ、結局、気が狂っちゃった。…か、どうかは判りませんが。
ま、そう言う事です。

原題は Enchanted Village ようするに、『魅惑のチキルーム』と同じ、Enchantedですので、
あの、極彩色の南のトリが、キーキー鳴いてるんでしょうね。

そうかあ。チキルームかあ。やっぱり、狂っちゃたのかな?

記:2013.05.29

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三分 小説 備忘録

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