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終点:大宇宙! - 創元SF文庫(1973)
終点:大宇宙!


休眠中 Dormant A.E.ヴァン ヴォウト 訳:沼沢洽治(コウジ) 1973の あらすじ

古い島であった。幅は3マイル。弓の形をしている。その端に物体があった。
名前はイーラ。これも、また昔からのものだった。

1941年、日本軍の艦隊が、その脇を通った。彼等は、この島に補給タンクを設置した。
しかし、それは使われる事はなかった。戦いは止んだのだ。

やがて、爆熱が辺りを襲った。ここはビキニ環礁の傍でもある。しかし、辺りはまた平穏に戻った。

ある日本人が、戦後、軍の補給基地の記録を公表した。1950年の事である。付近を航海中の、
米海軍の駆逐艦クールソンが、とりあえずの調査に出た。それが、悪夢の始まりだったのである。

キース少佐は島影を見ていた。変哲もない島だったが、奇妙な筋があった。
海岸から一本筋が山の中腹まで延びている。そこには、木が一本も生えておらず、草や小潅木だけである。
まるで、中腹にある岩が、海から、よじ登ったかの様である。

「あの岩は200万トンは、ありそうだ。日本軍とは、何をしでかすか、判らん奴等だ」
「しかし、何の意味が?それに、どうやって、あんな大きな物を、移動出来たんだ?」
「では入り江に進む。全員、くれぐれも、海に火の付いたものを投げない様に!
   補給タンクが壊れ、油が流出している様だ。全て調査の完了後、火を付け、処理をする」

ボートを降ろし、上陸した。地下タンクの場所は、すぐに判明した。
4つのタンクの内、3つが漏洩していた。残りの一つは、やがて、別の補給船が回収するだろう。

日本軍の青写真のお蔭で、短時間で作業は完了した。ふと見上げると、そこに、例の岩が見えた。
好奇心を出したキース少佐は部下と、そこに向かった。


その岩は花崗岩の様に見えた。近づくと、その巨岩の半分が地下に埋まっているのが判った。
すでに、夜になっていた。


懐中電灯を当てると、岩にはピンク色の模様があった。
「面白い岩だ。何箇所か削って、標本にしろ」

暗闇に悲鳴が響いた。慌ててキースが向かうと、それは標本を採ろうとした部下のヒックスだった。
ヒックスの手から、煙が立っていた。手首から先は無くなっていた。

ヒックスはイーラに触ってしまったのだ。
キースは苦しむヒックスにモルヒネを打ち、司令部へ打電した。回答は、『ソノ熱イ岩ヲ、更ニ調査セヨ』

船の温度計で調べると、岩の表面温度は、華氏800度!であった。何だ、この異常な数字は!
キースは放射能の影響を疑い調査した。ガイガーカウンターは音を立てる。しかし、致命的とは、ほど遠い状態だった。

5分後、キースは艦内からの、悲鳴を聞く事になる事を、まだ気づいていなかった。


イーラの自意識が目覚めた。久し振りだった。あまりに、久し振りで、自分が誰かも判らなかった。
自分の周りの環境を感じた。ここにはエネルギーを感じ取れなかった。
原子の炎も、溶岩の泡立ちも、地殻の大爆発もないのである。彼の知覚は、超高周波である。
自分は、今、死んだ惑星にいるのだな、と思った。ここには、エネルギーに満ちた生物などいないのだから。

イーラはエネルギーを求めて、山を登った。しかし、この死んだ惑星の山にはエネルギーは無かった。
中性子と重粒子の運動!それが、彼の体内のエネルギー炉を動かす。
しかし、ここには、エネルギーの元は無かった。

そして、イーラは思う。自分には、するべき事があった。しかし、この低エネルギーの状態では、
記憶もおぼつかない。体内の20個の大型電池に流れる電子が必要なのだ。

イーラは意識を空へと向ける。レーダーは、月、火星、すべての惑星の動きを探る … ダメだ。
どの惑星も死んでいる。自分は、この死んだ惑星系に閉じ込められてしまったのだ。

しかし、自分は、どうして、ここに居るのだろう?何か凶暴なモノに襲われ、埋められて…記憶は定かではない。

しかし、昨日、何かが触れたのを感じた。超高周波では、殆ど感じ取れない程の、希薄な存在だった。
しかし空気よりは重かった。あれは、生物だろう。あれなら、原子エネルギーが、どこにあるか
知っているのでは?そうか、語りかけてみよう。あれは自由に動ける様だ。

イーラは、その生物が乗って来たと思われる物に向けて、思考波を送った。
あの生物のエネルギーの満ちた場所へ。


機関室で働いていた34人の兵士の死体は、島へ埋葬された。
全員の赤血球が致死量まで減少していた。原因は全く、不明だった。


イーラは思った。あの生物の乗り物は、この何ヶ月も、周囲を行ったり来たりしている。イーラは、
それを二つに分類した。ひとつは、必ず、惑星のほぼ等高度を移動する大きなもの。
もう一つは、高度が変えて移動する小さなものだ。大きなものの移動法には、何か制約がありそうだ。

そして、更に小さなものも登場した。これは島の上だけを走り回る。
イーラは、これにも、ちょっと興味を持って話しかけた。


トラック運転手7名とブルドーザ運転手2名が死亡した。
「あの、奇妙な岩は、放射能汚染されています。また被害者が出ました」
「では破壊しよう」


キースは響く破裂音を聞きながら、島を眺めていた。駆逐艦の砲台が火を噴き、辺りは揺れた。
(管理者注:あれ?海面の燃料油って処理したっけ??

イーラは衝撃に気づいた。自動安定装置の電子管が、バランス電流を流した。体の大部分を占める
反液体物質が暖められ、流動性を増す。強圧が、分子を結合させ、イーラの意識は、はっきりとする。

「これは、何かの通信なのだろうか?」
飛来、命中、爆発。飛来、命中、爆発。このリズムに何かのメッセージはあるのか?

十数回の爆発の後で、イーラは思った。これは、通信かも知れないが、私には理解不能なものだ。
まさか、攻撃なのか?繰り返される攻撃に防御壁もダメージを受け出す。
しかし、こんな分子の構造に影響を与える事が、攻撃だとは … 幼稚な …
熟考の後、イーラはこれが攻撃だと結論付けた。では報復が必要となる …

体がきしむ。攻撃は、猛獣の肉体に与えられた敵の牙と同じだ。ただイーラには再生能力がある。
しかし、再生よりも早く攻撃されては、やがて破壊する。


イーラは海へと入った。

(… 中略 … 管理者注:この先の、イーラと艦船の戦いが、沼沢氏の訳文を読んでも、私には、良く理解できません。
   この原文は読んでいませんが、『黒い破壊者』の原文を読んだ経験から行くと、元文自体が不明瞭の可能性が強いです。
   ですから、なんだ、かんだで …)

艦船の一艘を沈没させると、残りは逃げ去った。

イーラは島へ戻る。その途中に、あの水上生物に寄生する生物、317人を踏み潰した事など知る由も無かった。


キースは懐中電灯で、辺りを調べていた。生き残りを救出するのだ。48時間の撤退期限は近づいている。
その後、爆撃機が来るのだ。
運良く、瀕死の男を助けた。その男は世界的に有名な学者であった。この男が行方不明でなくなったのは貴重だった。
これで、原爆投下が進む。

学者は言う。
「キースくん。早まってはいけない。あの"生物"には、おかしな所がある…」

しかし、学者は、意識を失う。キースは彼の意見を聞きたかったが、仕方なくモルヒネを打ち、船へ送る。

空から飛ぶものがやって来るのにイーラは気づいた。
思考波を送る。これで、前のものは、墜落した。しかし、それは無人機で、そのまま進んでくる。

無人機の動作は完璧だった。
目標の100フィート上空ぴったりで、それは、爆破した。


新しいエネルギーを吸収したイーラの意識は覚醒した。
全てが、元に戻った。自分が何だったか、目的は何だったかを思い出した。

戦いは、まだ続いているのだ。
恒星間戦争の真っ只中、自分はここに落とされた。しかし、敵の防衛装置に絡め取られ、機能は停止された。
しかし、今、彼は本来の目的を思い出した。

機能が点火された。体内の圧力が高まる。レーダは、太陽系の全ての惑星を照準に入れた。
重要元素が、完璧な計算の元、互いに激突する。そのプロセスが始まる。

ひとつの惑星が、それで吹き飛ぶ。この惑星上の地震計は全てが反応するだろう。
そして、地球が太陽へと落ち込む。太陽はノヴァへと変わる。太陽系は燃え上がる。それは美しい光景だ。
だが、それを目撃できるこの星の生物はいないだろう。

100億世紀の昔、天地を揺るがした、あの戦争は終わっているとイーラが気付いたにせよ。もう止まらない。
ステップは始まってしまった。ロボット原子爆弾には、心変わりする事する機能など、無いのだから。


..............

ヴォウト得意の怪物視点作ですが、いや、これは兵器視点か。ま、☆2つと言う事としました。
いやあ、そりゃヴォウトの最高傑作短編集ですからね、そりゃあ、評価も厳しくなりますよお。ま、他の人の作品集に入ってたら、
☆3つは確定ですが…

で、この原題は、Dormant(=休眠 1948/11)ですが、何か、一つ前の作品『怪物』と、似た設定を感じませんか?
つまり、どちらも、『休眠中』の『怪物』が目覚める話ですよね。

実は、前作、『怪物』、原題 The Monsterは初出時タイトルはRessurection(=休眠 1948/8)だったのです。
たぶん、この作品との混同を避けるために、あちらを The Monsterにしたのでしょうね。
以上、ヴォウト豆知識でしたあ。

あと、この作品でイイ所は、イーラが船と飛行機を、
『必ず惑星のほぼ等高度を移動する大きなもの』と『高度が変えて移動する小さなもの』と表現している所です
(いや、本当は、こんなに判りやすくは書いていないので、見落としている方も多いかと思いますが…)。

ここからイーラの星には、水=海=川はないのだな、と判ります。こう言う所の想像力の刺激の仕方が、キング オブSFな所です。
そして、それを見つける Wonder に、ヴォウトの濃厚な作品は、満ちているのです!

記:2013.05.26

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三分 小説 備忘録

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