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終点:大宇宙! - 創元SF文庫(1973)
終点:大宇宙!


怪物 The Monster A.E.ヴァン ヴォウト 訳:沼沢洽治(コウジ) 1973の あらすじ

巨船は空中に停止した。エネルギー球に包まれながら、ゆっくりと降下する。

エナッシュは船を降りた。そして呟く。
「戦争が行なわれた跡はない…しかし…」
その星のビルは朽ち果て、生命の痕跡はなかった。

隣にエネルギー球が近づく。バリアが消えると、中にいたのは歴史学者ヨールだった。
「この星を調べたが、何か、おかしな事がある。生き残りの生物が全くないのだ。
   昆虫一匹でさえ。植物だけは無事なのだが…」
「文明を持った生物なら、博物館を造るものだ。そこに行ってみよう」

「知能ある者を蘇させるのか?」
「ああ、そいつに聞いてみよう。
   我々には『万生物蘇生機』と『万能翻訳機』がある。それで判らない事はない」
「しかし、同時に危険も無いとは言えない。
   この星に子供の骨はない。奴らは不死だった可能性すらあるのだ」

「蘇生は、生存時代の古い者から、順に行なう。それで、こちらも準備が出来る。
   不意打ちなど、させんのだ。それに火器も準備の上だ」
「なるほど…」
ヨールは感心した様に吸盤の付いた腕を振った。


ガナ族仲間の評議員から蘇生実験のOKが出た。
エナッシュは、この星の博物館から、幾つかのサンプルを集めた。

頭蓋骨。
朽ち果てた、それを摘んだ。

* * *
生命は微少の中に発生する。物質と生命を分ける境界。電子には、生命と非生命の違いはない。
しかし、それが分子として構成される時、そこに、ささやかな違いが出来る。それが、命の元だ。
* * *


「これは、ミイラ保存されていました。死亡当時の科学知識は、極めて拙知…
   おお、復元が出来た様です」

その生物は立ち上がった。ゆっくりと、周りを見る。

* * *
蟹は足を、もがれると、新たな足を生やす。回虫は、二つに分裂し、また、それが次の親となる。
貪欲な消化器官を使い、次々と分裂する。それが、生命。細胞。そして、何より『記憶』だ。
それが生命の証だ。物質に刻印された情報。それが、復元の基礎となる。
* * *


再生生物は口を開いた。
「本当だったのか…死とは、新たな生の扉であると。ならば、お主達は、
   エジプトの神々であるのか?見た所、お主達は、悪魔である可能性もある。
   もし、そうなら、わしが、お前等に恭順を示す事など、ありえんぞ!」

ゴーシッド船長は、隣の男に合図する。
「もう良い。充分だ。殺せ」

周囲からの劫火が、再生生物を焼く。それは、非生物へ戻った。


「次を再生しろ!」


二人目が立ち上がった。
「あああ!何だ!お前達は!ば、ばけもの!!
   お、俺は、もう飲まねえ…勘弁してくれ!こんな夢が、あああ」

「何だ。こいつは?おい、飲むとは、何の事だ?」
「酒ですよ。俺は、しっかりしてたんだ。少し飲んだだけ。車の運転だって問題なかったんだ。
   それを急に、あの車が飛び出すから…あの車の運転手は飲んでたに、ちげえねえ!」

「車、と言っていますが、その様な古代の乗り物は、この博物館には、見当たりません」
「大した発明ではなかった、と言う事だ。こいつも古代人の一種だろう。お前、
   しっかりしている事を、我々に証明しろ!お前の車は、どう言う原理で動くのだ?」
「ああ、俺はしっかり、してるぞ。車の原理か?そりゃ、まずガソリンをタンクに入れてだなあ…」
「なるほど、内燃機関か。もう充分だ。こいつの時代は判った。殺せ!」

再び、劫火が、再生生物を焼く。
「次を再生しろ!」


三人目が立ち上がった。
そいつは考えながら、ゆっくりと立ち上がった。そして、はっきりした声で問いを上げた。
「君達は、異星人か?しかし、どうやって、ここを見つけた?
   何かの一定の方式に沿って探しているのか?それとも、ただの、幸運なのかな?」

ガナ族の評議員から、静かな、ざわめきが起きた。
歴史学者ヨールは目にショックを浮かべ、呆然としている。
「こ、この者の、状況に対応する理解と適応の速やかさは、並み外れています。
   我等、ガナ族と言えど、ここまでの迅速な反応は…」
「迅速かつ、正確!我々が、突然、死から呼び戻された時に、果たして、この様な…」

しかし、言葉は途切れた。再生生物は、再生箱を抜け出し、既に窓から外を眺めていたのである。
「酷いな。どこも、この有様なのかね?」
「…あ、ああ…荒廃と死だけだ。お前には、この理由は判るのか?」

その生物は、ガナ族に近づいた。
「この博物館と思われる場所を、一回りさせて貰えないかな?私は自分自身が、
   どの時代の者だったかも見当が付かないのだ。私が死んだ頃にも、破滅の兆候はあった。
   しかし、それが、これかどうかは判らない。この中の見させて貰えば、それも判る」

彼等は躊躇した。しかし、ゴーシッド船長は言った。
「良いだろう。しかし、おかしな真似はするなよ。
   お前の周りは光線銃を持った衛兵で囲まれている事を忘れるな!」


男は先を歩いて行く。その後ろに警備隊。そして移動エネルギー スクリーン。
最後に評議員がゾロゾロと歩いて行った。


「おい!触るな!全てのものに、指一本触れてはならぬ!」
「随分と慎重なのだな?」その生物は展示物に伸ばした指を引っ込めた。

「では、良い事を教えてあげよう。あそこに見える装置の説明文には、こうある。
   『これは、原子の爆発が発生した場合に、その原子の数を数え、連鎖爆発を防ぐ装置である』
   これは幼稚なものだが、こんな簡単なものでも、初めの原子爆弾の作成から
   2000年後に出来たのだよ」
「『原子の数を数える』?我々は原子爆弾の作成から9000年を経ているが、
   いまだに、そんな装置は…こいつらは、一体、どんな技術を持っていると言うのだ?」

「し、しかし、こいつらは所詮、死滅してしまった。怖れるには足らん奴等だ」
「いや、こいつは危険だ。殺せ!」

その生物に、劫火が浴びせられた。

しかし、炎に包まれた倒れたのは警備隊の方だった。
その凄まじい炎は、あのエネルギー スクリーンを押し戻す程だった。その凄まじさ!評議員は見た!
エネルギー スクリーンの向こうで、あの生物が悠々と外に出て行くのを。

「全員に告ぐ!危険な生物が外へ出た!全員、光線銃で武装、
   船は重火器を準備しろ。すぐに撤退するぞ!」
「あいつの武器は何だ?たぶん精神波によるコントロールだ!」
「逃げろ!俺達は大変な奴に出くわした!」

ふと、ガナッシュが例の装置を見ると、あの『原子の数を数える』装置が、数字を数えていた。
奴は、あれを使ったのか?


彼等は一目散に船へと逃げた。巨大な母船は上昇する。
「爆弾投下!」

原子爆弾が、次々と落とされる。地上に、光と爆風に、巻き起こる。
「徹底的にやれ!」


爆弾投下は三日に渡り行なわれた。それから五日後。

「この惑星がガナ族の植民地として、有効なのは明白だ」
「だからこそ、あの危険な生物を排除したのです」
「おそるべき生物だった。しかし、エナッシュ君、少しばかり感情的だったのでは?」
「いや、船長。あの三人目の者の目を見ましたか?
   冷静に我々を見て、出て行った、あの目を!私の決断は当然の事です」

「そして、その後、奴がくたばったのも、"当然"の事だな。わっはっは」
「…慎重に越した事はないのです」
「しかし、何故、彼等が死滅したかと言う重大な問題が永遠に判らなくなってしまった」
「これから、我々の仲間が集団移住します。ほんの少しでも危険の眼は摘まなくてはなりません」
「ガナ族が、それほど、臆病、いや失礼、慎重だとは、知らなかった」
「…」


彼等は地上に降りた、再生は再開された。

<*管理者注:あれ、博物館は破壊されてないの?じゃあ、あの原爆は? … 黙れ!ここはヴォウト ワールドじゃあ!>


四人目の再生生物が立ち上がった。

彼等は唖然とした。四人目は、そのまま消えてしまったのだ。

「怖れていた事が、起きた!」
「見て下さい。奴が消えた時のエナルギー場!
   計器は十度まで振れました。これは核粒子レベルの変動です!」

船長は船に緊急連絡を入れた。
「天体発見装置と生物再生装置は、全て破壊するのだ!速やかに行なえ!
あれを渡したら、我々の母星が、知られてしまう」


破壊は行なわれた。船長は、ほっとした。
この生物は恐ろしい奴だ。しかし、我等、ガナ族の方が優秀だ。
天体発見装置と生物再生装置。これを奴等は持っていない。生物再生装置がないから、
奴らは死滅した。そして、広大な宇宙の中から生物の棲む天体を発見する天体発見装置。

<*管理者注:天体発見装置の重要性には、ピント来ない、あなた。ぜひ『宇宙嵐のかなた』
を読んで下さい。あれを読めば納得できます。一応、最後に解説します>


「よし、これで安心だ」
「しかし、あいつは、どこかにいるのです。我等の周りに…」
振り向いたエナッシュは驚いた。そこに、奴がいた。
「エ、エネルギー スクリーンを張れ!」

その、頭の大きく、それを華奢な肉が支えている、弱そうな生物は、スクリーンに近づいた。
そして、そっとスクリーンに触れる。馬鹿な生物め!大火傷をするぞ!

その生物は、そっとスクリーンに触れる。反応したスクリーンの色が変わる。
明るくなり、様々な色に変わり…奴は、それを、すり抜けた!


「目が覚めた時、状況が良く判らなかったので、君達に教えて貰おうかと思ったんだが…
   それを、聞くよりも、お前等を、どう扱うかの方が重要そうなんでね」
「奴を殺せ!」

破壊光線銃が、打ちまくられた。辺りは弾け飛ぶエネルギーの爆風に包まれる。
銃が打ち終わると、煙の中から、生物の声が聞こえてきた。

「…方針は二つある。一つは、私を再生してくれた事に感謝する事。もう一つは君達の様な連中に
   当然の対応をする事だ。私も君達の様な生物が、どんな連中かは理解しているつもりだ。
   だから、なかなか、前者の態度は取れないんだ。そこで、まず生物存在天体発見装置の秘密を
   渡して貰おうか。それがあれば、寝込みを襲われる事もないだろう」

「君達は、何故、滅んだんだ?」
「核粒子風だよ。直径が90光年を越える核粒子風が、この星を襲った。我々は、テレポートが出来るので、
   とっくに超高速船は捨てていた。しかし、90光年は、我々の限界を超えていた。我々の見つけた唯一の
   居住可能惑星ふたご座αも、残念ながら、この90光年の中にあった」

ガナ人達は、内心ほっとした。この、宇宙船を持たない種族は、単独では優秀かも知れないが、
所詮、我々の敵ではない。我等が母星を脅かす事など出来ないのだ。

それに、再生装置も、こいつらは発明出来なかった。だから滅亡したのだ。
我等、ガナ人には、到底、敵わなぬ種族なのだ。

「どうして、君達は、次々と惑星を侵略するのだ。自分達では、人口調整が出来ないのかな?
   ならば、私がやって、あげても良いのだが?」
「何だと、この野郎!」
「もう充分だ。今更、奴がテレポートで、忍び込んで、我等が船を調べようとも、もう何もない。
   我等は船に戻ろう」
「しかし君達は、一点、重要な点を見落としているのでは、ないかな?」」
「いや、相手にするな。戻るぞ」
ガナ人はエネルギー球を開き、船へ戻ろうとした。

しかし、気が付くと、彼等は全員船の中に居た。

不思議な状況に、誰も何も言わない。何時の間に?記憶は、時間の経過は…
全てに不審な所はない。しかし、最後の言葉。『…重要な一点を見落としている…』


「さて、この星はどうしよう」
「多少のパルチザンが残った植民地は沢山ある。ここもそれと同じで良いのでは、
   徹底的な放射能殺菌は、害も大きい事だし」
「しかし、奴は、何故、母星へ戻ろうとする我々を邪魔しない?おかしいぞ」
「自分のふがいなさに、がっかりしたのさ。さあ、もう天体発見装置も再生装置ない。
   後は、母星へ帰るだけだ」
「しかし…」

彼等は、母星へと戻る帰路に着いた。


数日後、エナッシュは驚くべき報告を聞いた。奴が、船内をウロウロしては、消えているらしいのだ。
90光年のテレポート能力は本当だったのだ。

「つまり、奴は我々が母星に戻ると、再生装置を手に入れる。それからテレポートで、自分の星へ戻る。
   そして仲間を再生する。そして我々を攻撃するつもりだ」
「では、どうすれば良い」
「母星へは帰ってはならぬ!勇敢なガナ人なら、判る事だ。我々は、全艦、このまま、近くの青白恒星へと
進路を向ける。奴を母星へ渡らせないためには、これしかない。すぐ行なえ!」

勇敢なガナ人は、自らを犠牲とし、母星を守るのだ。
全艦は、すぐに進路を変え、方向蛇を全て破壊した。もう進路変更は決して、出来ない。

「よし、これで全てOKだ」
「はい、今度は直ぐに出来ました」
「今度とは、どう言う意味だ?」
「前回、天体発見装置と、再生装置を破壊しろとの命令が出た時は、我々は、その命令の実行に手間取った
   のです。何故なら、保管室に、何故か、内側から鍵がかかっていたのです。それで、破壊までに、数分の時間が」

エナッシュは崩れ落ちた。『見落としている重要な一点』とは、これだったのだ!

きっと、奴は、初めに消えた後、すぐに、この船に忍び込み、全てを漁ったのだ。
おそらく、天体発見装置も、再生装置も!そして、全てを知った後で、あの芝居を打った。

我等が母星へ戻らなければ、あの怪物の事を知る者は、誰もいない!奴は、仲間を生き返らせ、ゆっくりと、
天体再生装置で、我等が母星を見つけるのだろう!そして、仲間達と共に攻撃を…

ガナッシュは船内電話を取った。
「船長、これは罠です。我々の行動には、何の意味もない!」

しかし、電話は虚しく、呼音をあげるだけ、誰も出る事はない。
泣き崩れるエナッシュを乗せた母船は、今、恒星の心臓部へと落ちていくのだった。


..............

私が考える最良のSFがこれです。うまく、まとめられているか、自信はありませんので、
ぜひ、原文を読んで下さい。ただし、昔の訳なので、ちょっと不明瞭な部分も多いのですが…

それでは、天体発見装置の解説です。
宇宙には、天文学的に大きな数の星があり、その中に、天文学的に少ない割合で、知的生命体がいます。
そこで、その中から、知的生命の存在する星を探すのは、至難の技です。

電磁波で探すと言うのがありますが、文明で利用されている電磁波の到達範囲は宇宙規模では極狭い。
光学的に、ダイソン殻を探すと言うのもありますが、ダイソン殻が、それほど一般的かは不明(現に、今の太陽系にはない)。

そのため、異星人による侵略に、不可欠なものとして、知的生命存在発見器が、必要になる訳です。
前出の『宇宙嵐のかなた』では、この知的生命存在発見器がないために、徒労を重ねる艦隊の様子が描かれています。


で、生命再生装置ですが、途中の説明が、まるで、ドグラマグラでしたね。たぶん、あっちの方が先でしょうが。

記:2013.05.21

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三分 小説 備忘録

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