3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

終点:大宇宙! - 創元SF文庫(1973)
終点:大宇宙!


はるかなりケンタウルス A.E.ヴァン ヴォウト 訳:沼沢洽治(コウジ) 1973の あらすじ

目が覚めた。「レンフルーはどうしている!」

そして気づく。加速度!ここは宇宙船の中だ。気絶していたのだ。
天井のパネルの数字が2312、2313と変わる。もう行動開始するまでの安静時間は過ぎたのだ。
ゆっくりと、マッサージ機に手を伸ばす。全身を機械の手が揉み解す。

そして30分。よし、もう良いだろう。俺は吐き気を抑えて、"ベッド"を出た。

航法時計が目に入る。53年7ヶ月14日。
故郷の友人は、もう老衰で死に掛けているだろう。あるいは既に…

卒業パーティのあの娘…キスしてくれた。でも、もう墓の下かも。
涙を拭いて、強化液体食を飲む。少し落ち着いた。

しかし、53年?4年もオーバーしているではないか?しかし、この初の星間旅行では、誤差の範囲だ。
俺はケンタウルスα星を探した。見える距離にあった。仲間を起そう!


ベラムの部屋を開けた。しかし俺を待っていたのは腐臭だった。"永遠剤"の発明者ベラムは、去った。
ベラムは言っていた。
「投薬の副作用による死は10%。我らは4人だ。誰も死なない可能性のほうが強い」
だが、4年の遅れまでは、その計算に入っていなかったのだ。

そして、レンフルー、ブレイクの部屋を開けた。彼らは、腐臭を立ててはいなかった。

早速、報告書を吹き込み、地球へ送信する。トラブルを想定して、同じ物を、100回送信する様にセットした。
5ヶ月後、この報告書は受信され、新聞を賑わすだろう。

この船で50年が過ぎた。しかし地球での時間経過はそうではない。壁の時計が示していた。

201年、1ヶ月26日7時間8分。


以前の報告書の中に、レンフルーのものがあった。
中身は、機器の状態。速度の変化。彼らしい、真面目で面白味の無いものだ。

ブレイクのもの、もあった。そこには、こう書かれていた。
「ビルへ。この手紙は読んだら捨ててくれ。ベラムの事は残念だ。だが、我々には危険は覚悟の上だった。
   だが、心配なのはレンフルーだ。彼はこれまで苦労を知らなかった種類の人間だ。親友ベラムが亡くなったのを
   知ったら、現実を見失ってしまうかもしれない。彼にはケアが必要だと思う。じゃあ」


ケンタウルスの輝きが強くなる。
ここは、αA、αB、αC、プロクシマの4恒星から成っている。それが重なった輝きは壮観だ。

人類初めての、恒星間旅行!この片道200年の旅に、俺は参加しているのだ!
そして、眠りに付いた。


気がつくと、警報音が鳴っていた。ガンガンと鳴っているが、30分は動く事が出来ない。
俺は、直ぐにでも起きたい気持ちを抑え、じっと待った。

そして、30分。俺は活動を始めた。
操縦席に着いて、驚いた。10km!たった10kmだ!
2kmほどある巨大な宇宙船が、目の前にあった。しかし、それは、

残骸だった。

炎に焼かれた。異星人の巨大宇宙戦艦は、死に絶え、動いてはいなかった。
ただ、夜と星の間を漂っていたのだ。

俺は、その光景の記録を取った。
この、宇宙には、我々を凌ぐ知的生命がいる。その証拠を。

プロクシマまでは、あと1.6光年だ。


そして、150年。俺にはそれは、36時間だけの意識時間だった。
マッサージ機が止まった。俺が活動を始めた。

慣れたつもりで、急激に動いたので、思わず、めまいを起した。操縦室へ行くと、既にブレイクがいた。

「よう、ブレイク」
「黙ってろ。まだ話すんじゃない。俺がスプーンでスープを飲ませてやる。俺は2週間前から起きているんだ」
「レンフルーはどうした?起きているのか?」
「奴はもうダメだ。狂っちまった。今は、縛って、奴の部屋へ閉じ込めている」
「そんなにデリケートな奴じゃないだろう」
「君にも心構えをして欲しい。あんたなら大丈夫だ。俺とあんたは、同じ種類の、楽天家だからな。
   恐竜と出会っても、あの"娘"のケツは、なかなか、セクシーだったぜ、なんて言う種類の人間だ」
「いいから、早く、要点を言ってくれ!」

「ああ、2週間前、俺は起きた。α星は目の前だった。俺は受信機のスイッチを入れた。もしかすると、
   どこかで信号が、あるのでは…だが、俺は驚いたよ。何百局もあるんだ。7つの周波数帯全てに渡って!
   それから、彼らから連絡が来た。英語だよ。この船はエネルギー スクリーンだか、何だかで、とっくに
   発見されている。君が起きたんで、今、呼んだから、彼らを呼んだ。もう着く」
目の前に巨大戦艦が現われた。

「奴らは何者なんだ?」
「地球人さ。今じゃ、地球−プロクシマ間は3時間で着くんだそうだ。俺達は忘れていたんだよ。
   この200年間の進歩を…」

巨大戦艦の格納庫に収容された。降りて見ると、内部の素材は見た事もないものだった。
椅子や机は輝いている。いや、ただの色じゃない。

10メーター向こうに現われた奴は、近づいて、我々と握手をすると、また、10メーター向こうに飛び帰った。

何だ?こいつには、礼儀と言うものがないのか?それとも、礼儀が変わったのか?


「初めに、申しておきますが、古代英語の研究者として、研究の実践が出来る事は無常の喜びと感じます…
   私くしの名前は、カッセラハットと申します」
「古代英語って事は、俺達の話す英語は、もう無くなっているって事か?」
「いえ、そうでは、ありませぬが、今の我々は、質問に対して、『はい』などとは答えぬのが常。
   代わりに『いぇ〜い』などと、申すのであります」
「はああ…」


「過去からの貴重な客人をこれから、おもてなし致します。皆様には、数百万クレジットの銀行口座を
   作りましたので、一生お金に不自由する事はありません。ただ、人前に出るのはご勘弁を願います」

「そりゃ、どう言う意味だ?」

「ま、ともかく、今後、お会いする時はマスクを掛けさせて頂きますので、悪しからず…」
そう言うと、奴は消え、そこに、レンフルーが現われた。
「直ったのか!」

「ああ、しかし、奴ら、とんでもない知識の持ち主だ。俺が聞いたんだ。光の速度が一定の理由は?って。そしたら、
   速攻で、こうさ。速度=g×d。dは時空連続体の深度で、gは全許容力=つまり連続体内の全重力だそうだ」
「ちっともわからん」

「では、惑星はどうして形成されたか?これは、太陽が物質を放射するそうだ。それに、彼らは子供の頃から、
   原子ロケットを玩具で組み立てている。それから電子がものを考えるって知ってるか?」
「なんだ、電子心理学か?」
「アデレディクナンダ理論って奴さ。ともかく、驚く事ばかりだ」
「だが、なんで、俺達は出られない。なぜ奴はマスクをする?」


「俺達は、そんなに、臭いのかなあ?」
ブレイクが俺に、そう呟いた。このベラム惑星に着いて9日目。レンフルーは、逃げ出して音信普通。
俺達は、過去500年間の知識を覚えようとしたが、大変だ。ちっとも、この文明に付いていけない。

我々は英雄だ。それは、ここの惑星の名前が示している。
ベラム、ブレイク、レンフルー、そして、俺の名、エンディコット。

我々が途中で、出会った、破壊された船。あれは、我々の乗った宇宙船に出会った、この星の旅客船が急停止し、
エンジンの過負荷で破壊したそうだ。不運な事故だ。我々には責任はないし、例の、
電子心理学=アデレディクナンダ理論っても、この時の経験で、発展したそうだ。だが…


「どうだ、最近?」
「ああ、俺は英雄どころか、とんだお荷物だ。子供でも判る理屈がさっぱり、何も仕事は出来ん」
「俺もそうだ。それに比べてレンフルーは…」
「ああ、奴は大成功だ。あいつの、見てくれが、この時代に合っているんだ。コスチューム映画で大当たりじゃないか」

そのレンフルーが、二人の前に現われた。
「儲けた金で、宇宙船を買ったぞ!三人で、この宇宙の探検と行かないか?男同士じゃつまらんが…」


三ヶ月の間は、宇宙の神秘に興味が尽きなかった。

ある夜、レンフルーが俺の部屋にやって来た。手には、ナイフとロープを持っている!
「大人しく縛らせて貰おう」
「ブレイク!助けてくれ!」
「無駄だよ!あっちを先に済ませてきた」


「すまんが、これは治療なんだ。心理学さ。君達は二人とも、ケンタウルスに着いた途端、狂っちまった。
   そのため、あの時と同じくらい、強いショックが必要なんだ」

なんと、レンフルーは精神病の治療の際に、奴らに、狂っているのは、俺達の方だ、と、吹き込まれていたのだ!
しかし、こいつは、俺達にどんなショックを与えるのか?

「さあ。そろそろ、小型太陽の引力圏に入るよ」
レンフルーは消える。俺は慌てて、ロープを解こうと必死になった!

ロープは、やっと解けた。ブレイクを助けると操縦室へ向かった。


操縦席のレンフルーを引きずり出し、床に叩き付けた。しかしレンフルーは笑っていた。
「もう、手遅れさ、ははは」

俺は計器を見た。我々の進路の先にあるもの。それは、無限大の物体だった!

減速器のレバーを引いた。アデレディクナンダ動力の力に、減速器を動かない。このままでは、爆発する。
俺は減速器をニュートラルに戻す。止める手段がない!

「軌道に入れろ!」ブレイクが叫ぶ。
キーで第一軌道を試すが、出来ない。では、第ニ、第三…。

「何をやっても、無駄だよ。もうすぐ、第一非許容期にぶつかる。これは量子の様に、非連続に飛躍し、
   それぞれの時間は498年7ヶ月8日さ」
「何を言ってるのか。さっぱり、判らん」
だが、レンフルーの頭が少し、元に戻っているのは確かだった。

ガタンと大きな音がした。宇宙船は破壊しそうに揺れ、レンフルーは俺に手を差し伸べてくれた。


気がつくと落下は止まっていた。

「後8時間で地球に着く。500年前のね」
レンフルーが言った。

「ちっとも、訳はわからんが、レンフルーの計算通りになったらしい。だが、この船!この船はどうする。
   未来の、500年先の技術が、地球にもたらされたら、歴史が変わってしまう!」
「無理だよ。俺達には全く理解できんさ。君は、出発前にキスしてた、あの娘と、これから楽しく暮らすのさ。
   五十年後、君は、彼女と一緒に受信機から聞くのさ、宇宙船の中で、君が目覚めた日の通信音をね」

そして、僕達は、幸運に、それを聞く事が出来た。


..............


記:2013.03.29


このテンポ。急激な展開!凄い!ここでは省略してる訳ですが、原文のテンポも、ほぼ同じです。やっぱり、ヴォウトなんか、
読んでるから、こう言う省略文が好きなんでしょうか?しかし、ジェットコースター展開ですよね。それも、よくあるジェットコースターもの、
みたいに、個別的にはなんて事の無いストーリーを詰め込む
(敵が登場→ピンチ→味方が現われる→形勢逆転→ところが、別の味方が裏切り→その裏切りは予測済み→敵ボス登場、みたいな感じ?)
のではなく、その場では、行為の意味が判らないが、後で意味を持って来る事を立て続けに、繰り出す感じの
ジェットコースターですから、うまくはまった時の感じは素晴らしいです。この作品なんかが成功例です。

 ただ、この作品は、「年寄りは臭い」と言う話だ、と記憶されがちですが、(いや、私の場合だけか?以前、マスコミで、若い娘が、
『私の下着を、お父さんの下着と、一緒に洗濯しないで!』と言う風潮がある、と聞いた時に、俺も、
『ついに来たかあ、ヴァン ボウトの時代が!こいつら、スランかあ!』と思ったものですが…長いな、本文に戻ります…)、
本質は違いますね。つまり、冒頭の、『俺は誰だ?』のサスペンス感とか、『10%の死亡率なら、4人のメンバーは誰も死なないだろう』、
『同じものを100回送信した』、なんかの統計学的な部分です。
 つまり、ここがSFなんすよ。50%以下の可能性は、起こらない方向として考える。しかし、0.01%でも発生するものに対しては、
支障ない範囲で対策を講じておく。これが、SF(と言うか、科学)と言うものです…とすると、昨今の風潮は、なんと、エセ科学者の多い事よ
(あ、もちろん、"反"の立場の方に、顕著な傾向ですけど…)。
 あと『速度=g×d』のエセ科学の部分も、ヴァンらしいと言えます。ただし、この部分の、式の間に×を入れる所が、文系の方の
センスっぽくて、なんだかなあ、と思います。あ、でも、これは訳者の方が、判り易くする為に入れた可能性もありますが…。

P.S.それで、そんなヴァンに対する、ファンの正しい対応は、例えば『…何百局もあるんだ。7つの周波数帯全てに渡って!』なんかの、
7つの周波数帯の数の検証をする事です。数えてみましょう。
長波LF、中波MF、短波HF、超短波VHF、極超短波UHFこれで5つ。すると、この後のSHFとEHFのミリ波まで入れて7つ。正しいです!
 あと、中に出てくる速度=g×dが、訳文ではg:全許容量が"重力"に比例するものとなっています。ここは、少しでも理系の人なら、
重力は変だ、質量のはず、となる訳ですが、この辺りは、ヴァンの勘違いか、これもまた訳者の方の勘違いか?原著を当って、調べたい所でもあります。

  3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




・ホーム
・海外SF1トップ
・インフォメーション
・掲示板
・お問い合わせ