3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

海外版 怪奇ファンタジー傑作選 - 集英社文庫 (1979)
怪奇ファンタジー傑作選


妖女 ВИЙ(ビーュ)ゴーゴリ Nikolai Vasilievich Gogol訳:各務三郎 の あらすじ


ロシアの都キエフに修道院があった。そこには学生が集まってくるのだが、真面目な奴ばかりではない。学生相手の店先から、揚げパンを盗むのなんかは日常茶飯事だ。

寄宿である神学校では、夏休みに、学生は家に帰るのだが、それはまるで、避難民の大移動の様で、
みな、野宿や農家に頼んで、小屋に寝かせてもらったり、するのだ。

その中に、三人組の者達がいた。始めは四年生で酒癖の悪いハリャーワ。次が、のんきで酒とダンス好きなホマー、
最後が二年生で、酒はやらないが喧嘩好きのゴローベツィ。

彼らが道を失い彷徨っていると、犬の声が聞こえた。その方向に向かって行くと、家を見つけた。

「キエフ神学校の生徒です。迷子になり、食料もありません。ひと晩、泊めて頂けませんか?」
「うちには、泊める所はないよ。他に行ってくれ」
その家に一人で暮らして居たのは老婆だった。

「いえ。僕達は悪い事はけっしてしません。神様に誓います。どうか、ひと晩!」
「しょうが、ないねえ。悪さをしない様に別々の部屋になら良いけど...」

ハリャーワは納屋、ホマーはヒツジ小屋、ゴロベーツィだけが普通の部屋になった。

ホマーがヒツジ小屋で寝ていると、いきなりホマーを蹴飛ばした。驚いたホマーは、怖くてじっとしていた。
老婆はホマーを両腕を背中に組ませて、背中に飛び乗った。
とたんに、ホマーは飛び起き、老婆を乗せたまま跳ね回った。

ホマーが止めようと思っても膝が言う事を聞かなかった。
ホマーは荒野を走り回った。老婆はホマーの背中で、笑った。鳥の様だった。
そのうち、ホマーは景色が変わっているのに気が付いた。目の前には三日月、
下には谷、野原...俺は空を飛んでいる!

見下ろす泉には水の精が現われ、唄を唄い出した。
その美しさに、見惚れているホマー。

...いかん!あれは、このババアの仲間だ!
ホマーは魔除けの呪文を唱えた。何度も何度も。
やがて、足取りは重くなり、泉は消え、ホマーは地面に戻った。

「しめた!」
ホマーは地面に足が付くと、体を翻し、今度は自分が、老婆の背中に乗った!
今度は老婆が走り出した。速い!速い!

楽しくなったホマーは棒切れを拾って、それで老婆を、ガンガン殴った。
老婆は泣き出す。ざまあみろ!さらに殴り続けていると、老婆は泣き出した。
いや、泣いているには老婆ではなかった。若い娘だった。

え?ホマーの足元に倒れているのは、美しい娘だった。
「あああ、どうしよう??」

ホマーは逃げ出した。そして、キエフの町まで逃げ帰った。
しかし、キエフの町は、しんと、していた。神学校は荒れていた。
何が起きたんだ?まるで、廃校だ
ホマーは、酒場に入り、ウォッカをあおった。


そして噂を聞いた。
キエフから50km、ある大富農の娘が散歩に出ると、全身を殴られ、死にそうになって帰って来た。
さらに娘が言うには、「キエフの神学校のホマーと言う男に、私が死んだら、三日間祈らせて下さい」

やがて、迎えの者が来た。ホマーは、逃げようとしたが、六人の男に囲まれ、馬車に乗せられた。
富農の家に着くと、「娘は今、死んだ」の報告があった。ホマーは父親と会う事になった。

「君は、娘とは、どう言う知り合いなのだ?」
「いえ、全く知りません」
「じゃあ、相当、優秀なのだろう。皆が尊敬する」
「いえ、とんでもない。ダメ生徒で、尊敬する者などいません」
「まあ良い。ともかく祈ってくれ」


ホマーは棺の部屋に連れて行かれた。
娘の死体に見ながら、父親は言った。
「お前が、病気で死んだのなら諦める。しかしお前は殺されたのだ。わしはお前を殺した奴を許さない!」

ホマーは娘の死体を見た。しかし、死んでいるとは思えないほど活き活きしている。それにもまして、
ホマーを驚かせたのは、娘は、あの老婆が変身した娘だったのだ。


娘の死体は教会へ運ばれた。ホマーはご馳走を、三日分、たらふく食べてから、教会へ行く事になった。
その台所でホマーはそこで、使用人達の会話を立ち聞きする。

「ねえ、お嬢様が魔女だったって言う噂は本当かね?」
「うるさい。黙ってろ」
「何だ。何も知らないんだね?」
「知ってるさ!俺は、お嬢様に背中に乗られて、野原を走り回されたんだ。凄いスピードでだ。もっと可哀想なのは、猟犬係りミキータだ。背中にお嬢様を乗せて走り回り過ぎたから。骨と皮ばかりになって、カサカサになっちまった。その後、小屋が火事なった時に、燃え尽きちまったよ」

ホマーが顔を出した。
「もっと聞かせて下さい!」
「じゃあ、赤ん坊の事を話してやんなよ」
「家に赤ん坊がいたんだ。揺りかごで寝ていた。そしたら、そこに犬が近づいた。獰猛なそいつは、母親をすり抜けて、揺りかごに飛び掛った。そして、赤ん坊の喉笛に喰らい付いて生血をすすりだした」
「恐ろしい事があるもんだ」
「いや、もっと恐ろしいのは、よく見ると、そいつは犬じゃなかった。お嬢様だったのさ。四つん這いで子供の生血をすすり終えると、今度は母親に襲い掛かった」
「....」
「だが、もう魔女は死んだ。だが、あの魔女の事だ。油断しちゃなんねえ」
ホマーは教会へ向かった。今晩は祈祷をするのだ。


お嬢様の棺の前で、ホマーは祈り始めた。ふと気が付くと、娘の目から涙が。しかしそれは生血だった。
ホマーは震えを押さえ、祈祷を続ける。

しかし、頭の中に声がし出した。
(祈祷を上げて大丈夫さ。でも本当にそうか?ほら、今にも棺から立ち上がるぞ!)

ホマーは気が気でない。祈祷に集中しなければ!
必死に祈祷を続けていて、ホマーがふと死体を見ると、今にも起き上がって来そうだ。
いつ、起きあがって来るんだ!この魔女め!...あれ?、もう、起き上がっている!

娘の死体は魔女の姿に戻り、ゆっくり歩き出した。彼の方へ向かって来る!

ホマーは慌てて、自分の周りにチョークで円を書くと、一心不乱に魔除けの呪文を唱えた。
円の所まで魔女はやって来るが、それ以上は踏み込めない様だ。腕を上げて、ホマー引っかこうとするが、
それも出来ない。カッと目を見開いて、ホマーを睨む。その目は、死んでいて不気味だ。ホマーは震えながら、
呪文を繰り返す。

やがて、魔女は諦め、棺へ戻って行った。
そこに、ニワトリの声がした。

(管理者注:あれ、ハリャーワとゴローベツィは、何時、出てくるの?その答えはこれです。「ロシア人の脳みそはウォッカ漬けになっている」しかし、主人公がホマーで良かった。『ハリャーワ』とか『ゴローベツィ』はローマ字打ちが面倒!)


さて、人がやって来た。
「学生さん、夕べはどうだったね?」
「何も起きませんよ」
「じゃあ、今晩もまたお願いします」
(ああ、でも、怖いのは初めだけだ。もう後は、どんな妖怪だって平気だ!)


その晩、また祈祷を始めると、魔女は起き出した。
魔女はまた近づいて来てホマーを脅すが、ホマーに触れる事が出来ない。

今度は魔女が呪文を上げ出した。風が吹くと、鳥の羽が舞い上がった。窓を見ると、鳥の体をした化け物達が、
窓から入ろうと、ツメで叩く。ホマーは必死で祈りを続ける。またニワトリの声が聞こえた。


朝になり、気絶している所を助けられたホマーは、皆に言われて驚いた。
「あんたの、髪の毛は、一晩で真っ白になっているよ!」

「だめだ、もう...すいません。夜中に魔女が現われて、私の手では何ともなりません」
「かわいそうに、私の娘は悪魔に取り付かれてしまったのだ。しかし、娘はあなたを選んだ。あなたなら何とかしてくれると思ったのだ。お願いだ祈祷を続けてくれ!」
「そう言われても、殺されてしまいます」
「祈らんと、殺されるより恐ろしい、コサック農場の鞭で打ちのめすぞ!」
「はい、わかりました...」

とは言うものの、ホマーは逃げ出す事にした。しかし、すぐに捕まり、教会に投げ込まれた。

「こうなったら、妖怪と戦ってやる!」
ホマーが祈祷を始めると、様々な妖怪が円を取り囲み、ホマーを脅し始めた。ホマーは胸に十字を切りながら、
祈りを続ける。

その時、棺の中の死体が、こう叫んだ。
「土の中のおじいさん!私を助けておくれ」
とたんに、辺りは静かになった。そして、入口から胴がずんぐりして、ワニの様に足が短い老人が、
よたよたと、入って来た。目は見えない様だ。まぶたは、垂れ下がり、足元まで伸びているのだ。
蜘蛛の様な形にも見えた。そして、その老人は言った。

「わしのまぶたを上げろ。奴の顔を見せろ!」

妖怪の一匹が老人のまぶたを上げた。
「そうら!そこにいたなああ!」

老人がホマーの方を指差すと、円は叩き破られた。妖怪達は、一斉にホマーに、飛び掛った。

ホマーの体は倒れた。息が絶えた。彼の霊魂は、恐ろしさの余り、体を見捨てたのだ。

妖怪達は大喜び、ニワトリが鳴いたのにも気が付かなかった。
朝が来た事にあとから気づき、あわてて、窓や入口から出ようと殺到したが、
時すでに遅し、みにくい顔を晒したまま、バタバタと倒れて行った。


さて、娘の死体がどうなったか、あの老人がどうなったかは判らない。
第一、肝心のホマーさえ行方不明なのだから。




..............

凄いですね。マジック リアリズムならぬ、ウォッカ リアリズムでしょうか。
この作品の子供向けの短縮版は読んだ事があったのですが、このサイズの方が数段上でした。

今回、気が付きましたが、ゴーゴリは Gogolなんですね。まるでグーグル!

ちなみに、私はロシア語をちょっと齧った事があるのですが、ロシア語の場合、
o の文字は、通常 [オ]と発音しますが、アクセントのない場所では、[ア]と
発音します。ですから以前、大統領だった、ゴルバチョフの発音は、正確には
ガルバチョフです(バがアクセントね。こう言う発音って、アメリカ人が勝手に決めちゃうんですよね。
頑張れ、第三国人!ちがうかあ〜。じゃ、サード ワールド マン。さらに、ちなみにイシハラは嫌いです。
ハシシタも。お前は、サノか!ま、基本的にプライドが高くて、他人に頭を下げられない人間とは、今ひとつ …)。

ま、ともかく、正確には、ゴーガリなのかなあ??

記:2012.11.05

  3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




・ホーム
・海外SF1トップ
・インフォメーション
・掲示板
・お問い合わせ