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海外版 怪奇ファンタジー傑作選 - 集英社文庫 (1979)
怪奇ファンタジー傑作選


人狼 The WerewolvesマリヤットFrederick Marryat 訳:宇野利泰 の あらすじ

フィリップとクランツは小帆船で出発した。
会話も尽き、フィリップはクランツに、以前少しだけ聞いた子供の頃の話を聞いてみた。

クランツは長い話になる、と言って話し出した。ハルツ山の伝説を。

クランツの父はハンガリア貴族で執事頭である農夫だった。食うに困る事はなかった。
母は美しい人だった。一家は幸せだった。あの事件が起こるまでは。

領主は母を見初めて、父に遠い異国に使いの用を出して、母のベッドに潜り込んだ。
しかし、父は用を思い出し、家へと帰った。そこで、二人の姿を見てしまう、激昂した父は、二人を殺した。
不義であるとは言え、領主を殺しては、暮らせない。父は、兄、私、妹を連れ、逃げた。

もっとも、この事は、後から知った事で、その頃の私達は小さ過ぎ、事態のあらましは知らなかった。
私達は山の小屋で暮らし始めた。外に出る事も出来ず、父が猟から戻るのを待つ毎日だった。父は、人と離れて暮らした。
特に、女へは耐え難い不信感を持っていた様だった。それは妹に対する態度さえ違った。

ある日、猟は不調だった。父は不愉快だった。立ち上がった妹を、突き飛ばした。
妹マーセラはじっと泣き声を堪え我慢していた。そんな扱いには慣れていたのだ。妹の口から血が出ていた。

しかし、僕達は仲良しだった。みんな父が大好きだったし、兄と僕がけんかした時も、
マーセラは間に入って、けんかしちゃダメ!と、二人に交互にキスをしてくれた。


ある日、狼の遠吠えが聞こえた。父は銃に弾をこめると、急いで出て行った。
そして父は見た。ハルツ山の伝説の主、白狼を。白狼は父の銃の射程距離には近づかなかった。
父が近づくと白狼も離れた。父は山の奥へ進んだ。猟師達の言う、山の魔物が住む領域へと。

その時、父は角笛を聞いた。角笛は猟師同士の合図に使われる笛である。三度の角笛は、道に迷った事を表していた。
父が笛の方向に向かうと、そこに馬に乗った騎士と娘がいた。

彼らは、一夜の住まいを求めた。父は彼らを小屋に泊めた。二人の話す身の上話に共感したのだ。
二人は、トランシルヴァニアから逃げてきた。しかし主人が娘の操を差し出せと言う、無理な要求を蹴って主人を傷つけ、
逃げ出して来たのだ。しかし、この山で道を失い、さまよっていた所を父と会ったのだ。

翌朝、目が覚めると、娘は家事を始めた。かいがいしく、僕達の世話もしてくれた。
父も、あれほど女を嫌っていた父も、この娘には嫌悪を見せなかった


やがて、騎士は、小屋を出る事になった。危険な旅なので、娘は残して置く事にした。娘は父の妻となったのだった。
騎士は結婚の儀を行った。そこで、こう言った。
「『ハルツの山の霊にかけて、結婚を誓います』。さあ、どうぞ...」
「『神の名にかけて...』ではないのですか?」
「ただの形式ですよ」
「わかりました。では『ハルツの山の霊にかけて...』」


騎士は去り、再び元の生活が戻った。しかし、変わってしまったのは、新しい母だった。
急に子供達に厳しく当たり出したのだ。特に妹にはとりわけ厳しく当った。

おかしな事があった。新しい母は、我々の前では食事を取らなかった。
調理中にこっそりと、生肉を口に放り込んでいるのを見た事はあったが。

ある晩、母は、外に出て行った。
「兄さん、外には狼がいるよ。母さんが、食い殺されるかもしれない」
兄は銃を持って、母の後を追った。

しかし、帰って来たのは、母だけだった。翌日、僕達は兄の死体を発見した。
狼にやられたのだった。狼に食われないように、兄の死体は、深い穴に埋められた。
しかし、翌日、狼達は兄の埋め場所を知っていたかの様に、掘り返し、兄の体を食っていた。

父の落胆は酷かった。それに追い討ちをかける事が起きた。
妹が狼に襲われたのだ。悲鳴を聞き小屋に駆けつけると。白狼が飛び出した。妹は死んだ。
妹も兄と共に埋められた。

その晩、外に気配を感じた僕は、父と銃を持ち、外へ出た。
そこで見たものは、地面を掘る四足の獣の姿だった。妹の死体を掘り出して、喰らいついていた。

よく見ると、それは、母だった。
父は、「神よ!」と叫び、銃を撃った。

翌日、あの騎士が戻って来た。
「わしの娘はどうした?」
「貴様!あいつは、今、地獄にいる」
「馬鹿な!人間ごときに、ハルツの精霊が傷つけられるか。貴様はハルツの山の誓いを破った。それにお前は、
   既に二人の人間を殺しておる。この罪からは逃れられんぞ!貴様の子供達も、死んで行くのだ!」

僕達は逃げ出した。そして、オランダへ着いた。そこで、父は熱病に罹った。うなされて死んで行った。

そして、僕は孤児院に入り、水兵になったのさ。

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南スマトラの山が見えてきた。クランツは言った。
「いやな予感がする。ここに金貨がある。預かってくれ。形見として」
「馬鹿な事を言うな。おい、もう上陸するぞ。まあ、君がそれで安心するなら、預かっておいてあげるが...」

一足先にフィリップは砂浜に足を付いた。クランツも後を追った。そして、彼の足が砂浜に付いた途端。

恐ろしい咆哮が聞こえた。そして悲鳴。争い...訳がわからぬフィリップがようやく正気を取り戻すと、
大きな虎がジャングルに向かって走り去って行く所だった。クランツは消えていた。

砂浜には、金貨が残っているだけだった。


..............

名作の、要約し損ない、の見本でした。しかし、この手のスタンダードは難しい...

記:2012.11.03

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三分 小説 備忘録

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