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海外版 怪奇ファンタジー傑作選 - 集英社文庫 (1979)
怪奇ファンタジー傑作選


猿の手 The Monkey's Paw William Wymark Jacobs ジェイコブズ 訳:田村龍一 の あらすじ

雨が降る、寒い晩だった。
ホワイト氏の家にモーリス曹長がやって来た。

モーリス曹長は、遠い異国を旅する、年老いた男だった。
「なあ、こんな田舎じゃ、たいした事も起きない。また、あなたの冒険談を聞かせてください」
「いや、どなたも、自分の今、住む所が一番ですよ」
「そんな事、言わずに。そうだ、この前、持っていると言っていた、『猿の手』の話を聞かせてくださいよ」

「はああ、まあ、これは魔術の話なんですが...ちょっと変わった話でして...」
モーリス曹長は、何やら干からびた物を取り出した。

「ここには、年老いた行者が魔力を込めたのです。行者が伝えたかったのは、この世には宿命と言うものがあり、
   それに逆らうと悲しみが待っている、というもの」
「この、ちっぽけな物に何か力があるんですか?さあ、外は寒かったでしょ。お酒で体をあっためて」

「はい、ありがとうございます。これは、どなたにも三つの願いを叶えてくれるのです」
「じゃあ、どうして、あなたは願いをかけないんです?」
「いえ、もう、願いました」
「で、叶えられたんですか?」
「はい...」
モーリス曹長の歯と酒のグラスが当り、カチカチと震えの音が響いた。

「...他に叶えた人はいないんですか?」
「わかりませんが、私の前の持ち主がいます」
「彼の願いは何だったんだんでしょう?」
「始めの二つはわかりません。しかし、三番目は『自分の死』でした。だから私の手に...」
「もう一度、願ってみようとは思わないんですか」
「いえ、もう願う事はないでしょう。こんなものは無い方が良いのです」
モーリス曹長は猿の手を暖炉に投げ込んだ。

「あ!だめだ」
ホワイト氏は、あわてて、猿の手を暖炉から取り戻した。
「いらないなら、私にくれ」
「それは、私が捨てたものです。あなたが勝手に取ってどんな不幸が起きても、私には関係ありませんよ。
   しかし、捨てなさい。持っていてはいけない!」

しかし、ホワイト氏は、願いのかけ方を教わり、猿の手を、自分のものにした。

「さて、何を願ってみようかな?200ポンドを願ってみようか?『我に200ポンドを与えたまえ』...うわ〜っ!」
「どうしたの、父さん?」
「いや、今、猿の手が動いたんだ。俺の手の中で」
「そう。でも200ポンド、出てこないね。やっぱり迷信だよ」
「でも、変な事は起きていないか?...そうか、よかった」
しかし、二人とも間違っていた。


翌日、息子の勤める工場から、人が来た。
「残念ですが、ご子息は、機械事故に会われまして、亡くなりました。これは、遺族保証金です」
夫婦の目の前に札束が置かれた。200ポンド。


新しい墓地を買い、埋葬を済ませた。
ホワイト氏は後悔で一杯だった。猿の手など入手しなければ、良かった。これが、モーリス曹長の言っていた事だったのか。

家に帰り沈鬱する夫婦。突然、妻が叫び出した。
「そうだ、猿の手よ!猿の手!あの子を生き返らせてもらうの!」

ホワイト氏が止めるのも聞かず、妻は
「私の息子を生き返らせて!」と2番目のお願いをした。

「偶然だ!200ポンド、息子の死。偶然だ!」
「何でも良いの。あの子が戻って来てくれれば、例え、どんな姿でも...?」

外は、風が吹きすさんでいた。燭台の灯が揺れる。時計の音は、今日は大きく響く。ねずみが天井をうろつく音も聞こえる。


ドアが、コツコツと弱く音を立てた。
「あの子が帰って来たのよ!あの子が」
「いや、風だ。そのドアを開けてはならん!」
「お願い!あの子を入れてあげて!」

妻は、ドアを開けようと、閂を外した。しかし、ドア天井にはもう一つ、妻には手の届かない所に閂もあった。
「止めろ!外のものを見てはいかん!」
ホワイト氏は、猿の手を捜した。妻は、椅子を持ち出し、ドア天井の閂を抜いた。
ホワイト氏は、猿の手を見つけた。妻は、ドアを開けた!

そこには、何もいなかった。
三番目の願いが叶ったのだ。


..............

おなじみの作品です。
名作に感想なし、驚嘆あるのみ

記:2012.10.25

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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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