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一角獣 多角獣 - 早川書房(1964の新版)
一角獣 多角獣


考え方 A way of thinking シオドア スタージョン / 訳:小笠原豊樹の あらすじ

私が船員時代に出会ったケリーは、変わった人間だった。
考え方が変わっているのだ。彼はまるで宇宙人のようだ。
思考はするのだが、人間とは別の考えをするのだ。

例えばこんな具合だ。

港に停泊中、ケリーは居酒屋の女と仲良くなった。しかし、
別の女と酒を飲んでいる所を、その女に見つかってしまった。

怒った女はケリーに向けて、そこにあった扇風機をぶつけた。

「目には目を!」
誰もが、ケリーが扇風機を女に向かって投げ返すと思った。

しかし、ケリーは扇風機には目もくれず、女の元に行った。
そして、女を抱きかかえると

「女を扇風機に向かって投げたのだ!」

まあ、同じことだが...いや、ケリーにとっては。


また、ある時、船の甲板で、軸から歯車を抜く作業に手間取っていた。
男達が、幾ら歯車を叩いても、びくともしない。

今度は、力自慢のケリーが挑戦する事になった。
ケリーはハンマーで
「歯車ではなく、心棒を、反対に叩いた」

心棒は飛び出し、歯車は抜けた。

みんな、ポカンとした。奴は、歯車装置をメチャメチャしやがった。

しかし、ともかく、歯車は抜けた。
これも、同じことだ...ケリーにとっては。


船員から足を洗った私は、作家になった。円盤の話なんか書く奴さ。
そして、ミルトンと言う気さくな医者と酒飲み友達になった。

ある日ミルトンが、変わった患者を見ていると言う話になった。
「抱え込まれた時には、助骨が折れて、内臓は破裂していた。ひどい暴力を
   受けた跡があった」
「どこかのヤクザもんが、ケンカでもしたのかい?」

「いや、不思議な事に、気分が悪くなって、ベッドに入ってから、
   みるみる内に、こうなったそうだ」
「そりゃ嘘だろ。馬鹿らしい」

「私もそう思った。しかし、病院のベッドで寝ている時に、彼の大腿骨が、
   折れたんだ。直接の外傷はない。機能障害だ」
「外からの力でなく、病気で骨折したのかい?細菌?ウィルス?」

「わからん。ともかく、彼の骨折や、内臓破裂は、病気なのだ。おそらく心因性の」

そして、私は、その奇妙な患者ハルの兄に会った。
その兄は、なんと、あのケリーだった!

ケリーは弟について、信じがたい話を始めた。

ケリーの弟ハルは、ある女と親しくなった。
ハルは、女には、たいして気がなかったが、一緒に暮らし始めた。
そして、彼女に、ハイチで買った人形をあげた。

しかし、これはヴードゥー教の魔力の篭った人形だったのだ。

その後、二人は別れる。女は、お腹の子はハルの子だと言い張った。
しかし、調べてみたら、女は妊娠すらしていなかった。

それで、二人の関係は終わったが、女はハルを憎んでいた。
そして、例の人形を使った。恨みをこめて、ハルの名を呼びながら、
針で人形を刺す...

「ハル..ハル..ハル..」
その結果が、今のハルだと、言うのだ。


この話を聞き、どう信じて良いものか、判らなかった。
ケリーはその女の名前と、アパートの場所を教えてくれた。
私は、その相手の女に会いに行った。

安っぽいナイトクラブでその女は働いていた。
私は、上質な客の振りをし、親しくなり、彼女のアパートに入ることが出来た。

女は意外にまともな人間だった。しかし、この部屋のどこかに
人形を持っているはずだ。

そして、洗面所に4つの人形を見つける。
わたしは、この人形は何だ?と女に聞いてみた。

「あんたにゃ関係ない事よ」
「いいから、何だか教えてくれ」

「つまんない事よ。じゃあ貴方の名前は?」
「ジョージだが」

「じゃあ、貴方の髪か爪を、この人形に入れて、ジョージ!ジョージ!って
   言いながら、針を刺すのよ。それだけよ。すると、相手が病気になるんですって」

「ハルって言う人形はいないかい」
「ハル?いたんだけど、ここにないわ?一体、どこに行ったのかしら?
   あんな酷い人形を誰かが盗むとも思えないし??」


翌日。私はミルトンからハルが死んだ事を聞かされた。
ケリーは私に、ハルの復讐をする、と言っていた。

「しかし、ケリー、あの女はそんなに悪い奴じゃないぞ」
「俺は、あの女はどうでも良い。ハルを殺した奴に復讐したいだけだ。
   君にお願いがあるんだが、聞いてくれ。この人形を預かっていて欲しい」

やはり、女の人形を盗んだのはハルだった。
「俺は、復讐をするんだ!」


私はハルから預かった人形を棚に置いていた。

ある日気が付くと、人形から、何とも言えない腐敗臭がしてきた。
組織が壊疽した様な臭い。

やがて、人形の足がブラブラになり、ポッキリと折れた。
何かが、この人形に起きている、おそらくはケリーの復讐だ!

数日立つと、もう人形は、全身がドロドロに溶けた様になった。

ケリーは言っていた。この人形がハルを殺したのだと。そして今、
この人形は、殺されている。


私は酒場でミルトンに会った。ミルトンは疲れ果てていた。
「どうした?」
「ハルと同じ症状の患者がまた来た。今度は女だ。もう、あんな患者は見たくない」

#####################
「どんな、患者だったんだ?」
「一体、どうすりゃあんな、姿になるんだ。おそらく、全身を強く縛って、
   血が流れなくさせて、放っぽっておくんだ。それで、体は腐り出す。それから、
   全身を棍棒で殴る。あげくに、皮膚をヤスリで擦り、傷口にゴミを刷り込み、
   腐らせる。そんな事を、あの女は、ずっとされていたんだ!」
#####################

「そ、そりゃ、大変だな」
「そして、女は言っていた。私に、こんな事をした男は、私に向かって言っていた。
   人形..人形..人形..そうつぶやきながら、私に酷い事をし続けた」

そして、女は死んでしまった。

私は思う。銃による殺人の場合、
どちらが殺人の罪を犯したのか?

引き金を引いた人間か?
それとも、弾を発射したピストルか?


ケリーは、扇風機を投げた女を扇風機へ投げた。
女が人形を使って、弟ハルを殺したので、女を使って人形を殺した。


その時、ケリーから電話がかかって来た。
「ケリー、人形は、すっかり溶けてしまったよ。それから、もう俺には近づかないでくれ!」
「ああ、わかったよ」


..............

この話は、ちょっとわかりづらいので、若干くどいですが、判り易い説明を入れて見ました。

同じ話が、早川SFシリーズ「宇宙の妖怪たち」では、中田耕治訳版で、題は「ある思考方法」となっています
「ある思考方法」では、文中の ################## ではさんだ部分が、カットされていて、判りづらくなっています。

こちらは、早川書房、異色作家短編集、一角獣 多角獣 訳小笠原豊樹版です。

記:2011.09.15

P.S.そう言えば、スペイン語では、好き=gustar:グスタールは、この話と、ちょっと似た感じで使われます。
   つまり、私はコーヒーが好きだ、とは言わず、コーヒーは私を引きつける(好きにさせる)、と言うのです。
   よく、スペイン語で、聞こえる『メ グスタ ムーチョ 〜 』って奴です
   で、禁煙が出来ない方、もちろん悪いのは、タバコの方ですよね

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三分 小説 備忘録

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